フビニの定理とトネリの定理を合わせて使うと,以下のフビニ・トネリの定理が得られます。これは
なにかしらの順序での(絶対値の)積分値が有限であったら,順序を入れ替えても良い という定理です。
フビニ・トネリの定理
f(x,y) は
[a,b]×[c,d] 上可測な関数とする。
∫ab(∫cd∣f(x,y)∣dy)dx,∫[a,b]×[c,d]∣f(x,y)∣dxdy,∫cd(∫ab∣f(x,y)∣dx)dy
のいずれかが有限値ならば,逐次積分と重積分は一致する。つまり
∫ab(∫cdf(x,y)dy)dx=∫[a,b]×[c,d]f(x,y)dxdy=∫cd(∫abf(x,y)dx)dy
となる。
例題2
∫−∞∞(∫−∞∞1+x2y4xe−x2−y2dy)dx の値を求めよ。
え,こんな複雑な関数の積分できるの……? と思うかもしれませんが,フビニ・トネリの定理を使えば簡単に値が求まります。
解
1+x2y4x は R2 で有界である。∣∣1+x2y4x∣∣ の最大値を M とおく。
このとき
∫−∞∞(∫−∞∞∣∣1+x2y4xe−x2−y2∣∣dy)dx≦∫−∞∞(∫−∞∞Me−x2−y2dy)dx=M∫0∞e−x2(∫0∞e−y2dy)dx=Mπ∫0∞e−x2dx=Mπ<∞
と計算される。つまり,∫−∞∞(∫−∞∞∣∣1+x2y4xe−x2−y2∣∣dy)dx は有限値である
よって,フビニ・トネリの定理から,積分の順序を入れ替えてよい。
∫−∞∞(∫−∞∞1+x2y4xe−x2−y2dx)dy を計算する。
被積分関数は x について奇関数であるため,
∫−∞∞1+x2y4xe−x2−y2dx=0
である。
よって
∫−∞∞(∫−∞∞1+x2y4xe−x2−y2dx)dy=0
である。
なお,重積分の他の例題は 重積分の計算方法と例題3問 をチェックしてみてください。
証明
フビニの定理では f(x,y) の可積分性が分かれば積分順序を入れ替えてよいことが主張されています。しかし,実際の計算で ∣∣∫[a,b]×[c,d]f(x,y)dxdy∣∣<∞ を確かめるのは難しいことが多いです。
ここでトネリの定理を見てみましょう。トネリの定理は正の値を取る関数であれば,積分順序を入れ替えてよいことを主張しています。つまり
∫[a,b]×[c,d]∣f(x,y)∣dxdy=∫cd∫ab∣f(x,y)∣dxdy=∫ab∫cd∣f(x,y)∣dydx
を主張しています。
これらを組み合わせると,最初に「確かめるのは難しい」と思っていた可積分性が実は簡単にチェックできることに気付けますね。
フビニ・トネリの定理の証明
∣f∣ は [a,b]×[c,d] 上可測な非負関数であるため,トネリの定理より
∫ab(∫cd∣f(x,y)∣dy)dx=∫[a,b]×[c,d]∣f(x,y)∣dxdy=∫cd(∫ab∣f(x,y)∣dx)dy
である。
よって,∫ab(∫cd∣f(x,y)∣dy)dx,∫[a,b]×[c,d]∣f(x,y)∣dxdy,∫cd(∫ab∣f(x,y)∣dx)dy のいずれかが有限値であれば,他もまた有限値である。
よって ∫[a,b]×[c,d]∣f(x,y)∣dxdy<∞ であるため,f(x,y) は
[a,b]×[c,d] 上可積分な関数となる。
こうしてフビニの定理の仮定を満たし,定理が示された。
補足:このようなことも言えます
f(x,y) が
[a,b]×[c,d] 上可積分な関数のとき,以下の1~4も成立します(f(x,y) を x の関数と見たものを fy(x),f(x,y) を y の関数と見たものを fx(y) とおきます)。
- (ほとんどいたる y で)fy(x) は [a,b] で可積分である。
- (ほとんどいたる x で)fx(y) は [c,d] で可積分である。
- F(x)=∫cdfx(y)dy は [a,b] で可積分である。
- G(x)=∫abfy(x)dx は [c,d] で可積分である。