一致の定理

更新日時 2022/10/21
一致の定理(特殊形)

f,gf,g を領域 DD 上の正則関数とする。

  1. f,gf,gDD 内のある線分・なめらかな曲線上(DRD \cap \mathbb{R} など)で一致するとき,DD 全体でも一致する。
  2. f,gf,gDD 内の開集合 OO 上で一致するとき,DD 全体でも一致する。

※記事の後半でより一般的な主張を紹介します。

一致の定理は2つの正則関数が「一部」で一致していれば,「全体」でも一致することを示す強力な定理です。

一致の定理を用いて複素関数の等式を証明をしていくので,強力な定理の使い方を覚えてみてください。

目次
  • 一致の定理のポイント

  • 一致の定理のイメージ

  • 一致の定理による式の証明

  • 一致の定理の証明

一致の定理のポイント

実関数から複素関数への拡張を保証する

正則関数 eze^z は実軸上で exe^x と一致します。

ここで「実軸上で exe^x となる正則関数は eze^z だけなのだろうか」という問いが立ちます。

一致の定理を用いると,答えはYes,exe^x の拡張は eze^z だけであることがわかりますね。

このように一致の定理は,実関数を複素関数に拡張するとき,一意に拡張できることを意味します。

複素関数の等式をほんの一部の議論で証明できる

f=gf=g という複素関数の等式を調べるとき,一致の定理を用いれば,ほんの一部での一致を確認すればOKとなります。

実際に後述しますが,実数上で等しいことを示し,一致の定理を当てはめることで,ガンマ関数などの複素関数の等式が簡単に証明できます。

一致の定理のイメージ

DD 内の線分上で f=gf=g であるとしましょう。直線(なめらかな曲線でもOK)のパラメタ表示を z(t)z(t) として tt について微分をしましょう。

f(z(t))z(t)=g(z(t))z(t) f' (z(t)) z'(t) = g' (z(t)) z'(t)

z(t)z(t) は直線のパラメタ表示であったので z(t)0z'(t) \neq 0 であることがわかります。

辺々を z(t)z'(t) で割ると,微分係数が一致することがわかります。

これを繰り返すことで,線分上で f(n)(z)=g(n)(z) f^{(n)} (z) = g^{(n)} (z) であることが分かります。

ここで線分上の点 z0z_0 をとって,z0z_0 周りのテイラー展開を考えると,ffgg のテイラー展開が一致することがわかります。

このようにある1点での微分係数を含めた一致を調べてテイラー展開を見ることで,その点の近傍での一致を示すことができます。

一致の定理による式の証明

ガンマ関数の等式

ガンマ関数 は複素数 zz に対して Γ(z)=0ettz1dt \Gamma (z) = \int_0^{\infty} e^{-t} t^{z-1} dt と拡張されます。

関数等式 Γ(z)Γ(1z)=πsinπz \Gamma (z) \Gamma (1-z) = \dfrac{\pi}{\sin \pi z} を証明してみましょう。

証明

等式が C\Z\mathbb{C} \backslash \mathbb{Z} 上で成り立つことを示す。(定理中の DDC\Z\mathbb{C} \backslash \mathbb{Z} とする。)

Z\mathbb{Z} 上では関数が極を持ち正則にならないため取り除いた。

一致の定理により x(0,1)x \in (0,1) 上で示せば十分である。

Γ(1x)=0euuxdu \Gamma (1-x) = \int_0^{\infty} e^{-u} u^{-x} du ここで u=ts  (t>0)u = ts \; (t > 0) とおくと, Γ(1x)=t1x0etssxds \Gamma (1-x) = t^{1-x} \int_0^{\infty} e^{-ts} s^{-x} ds となる。

よって Γ(x)Γ(1x)=0ettx1Γ(1x)dt=0et0etssxdsdt=0sx0et(1+s)dtds=0sx1+sds=πsinπx\begin{aligned} \Gamma (x) \Gamma (1-x) &= \int_0^{\infty} e^{-t} t^{x-1} \Gamma (1-x) dt\\ &= \int_0^{\infty} e^{-t} \int_0^{\infty} e^{-ts} s^{-x} ds dt\\ &= \int_0^{\infty} s^{-x} \int_0^{\infty} e^{-t(1+s)} dtds\\ &= \int_0^{\infty} \dfrac{s^{-x}}{1+s} ds\\ &= \dfrac{\pi}{\sin \pi x} \end{aligned} と計算される。

なお最後の積分は留数計算によって求められる。

詳しくは 留数定理による対数・無理関数の積分 の問題2を参照。

余談ですが,この等式に z=12z=\dfrac{1}{2} を代入することで {Γ(12)}2=π \left\{ \Gamma \left(\dfrac{1}{2}\right)\right\}^2 = \pi となり Γ(12)=π \Gamma \left(\dfrac{1}{2}\right) = \sqrt{\pi} が得られます。

極を取り除いたことについて

より厳密に定理の仮定を満たしているか確認したい人向けの注釈です。

D=C\ZD = \mathbb{C} \backslash \mathbb{Z} としましたが,C\Z\mathbb{C} \backslash \mathbb{Z} は領域の定義を満たすのか確認します。

一般に EE を離散集合としたとき C\E\mathbb{C} \backslash E は領域になります。

実際 EE は閉集合になるため C\E=Ec\mathbb{C} \backslash E = E^c は開集合です。→ 距離空間~位相空間論に向けた開集合・閉集合の一般化

連結性も満たされます。C\mathbb{C} の部分集合であるため,弧状連結性(任意の2点が線でつながること)を示せばよいです。離散性から即座に従います。

一致の定理の証明

一般的な形の一定の定理を紹介します。

一致の定理

領域 DD 上の正則関数 f,gf,g に対し,DD の部分集合 E={zDf(z)=g(z)}E = \{ z \in D \mid f(z) = g(z) \} を取る。

EE 内の数列 {zn}\{z_n\}DD 内の点に収束する(EE の集積点が DD に入る)とき,ffgg は一致する。

証明には,

  • ローラン展開(テイラー展開)
  • 基礎的な位相空間論(集積点)

の知識が必要です。

  1. ローラン展開については
    ローラン展開の意味・計算方法・特異点の分類
    を参照してください。

  2. 集積点は「点列の収束先」だと思ってもらって構いません。より詳しくは
    距離空間~位相空間論に向けた開集合・閉集合の一般化
    を参照してください。

証明の準備

h=fgh = f-g という関数を用意して,これが恒等的に 00 となることを証明します。

hh の級数展開を考え,各係数が 00 になれば hh が近傍上で恒等的に 00 であることがわかりますね。

実はこのとき近傍上のみならず DD 全体で hh00 になります。

補題

領域 DD 上の正則関数 hh が1点 aDa \in D において h(n)(a)=0(n=1,2,) h^{(n)} (a) = 0 \quad (n=1,2,\cdots) を満たすとき,hh は定数関数である。

aa 近傍のテイラー展開の係数は,nn 回微分の微分係数です。よって ffaa 近傍のテイラー展開が 00 であるとき,補題の仮定を満たします。

定数関数となることと h(a)=0h(a) = 0 であることを合わせると,hh が恒等的に 00 であることが従います。

このことは定理の証明においてうまく効いてきます。

証明

DD の部分集合 U1U_1U1={zDh(n)(z)=0,n=1,2,} U_1 = \{ z \in D \mid h^{(n)} (z) = 0 , n = 1,2,\cdots \} と定める。

U2=D\D1U_2 = D \backslash D_1 とおく。

hh が定数関数ではないと仮定する。

D1D_1D2D_2 が共に開集合であることを示せば,DD の連結性と矛盾するため hh が定数関数であることが従う。(→ 領域の定義は連結開集合

  1. D1D_1 が開集合であること

aD1a \in D_1D1D_1 の内点となることを示す。すなわち,D1D_1 に含まれるような開円盤 Δ(a,R)\Delta (a,R) をとることができることを示せばよい。

D1D_1 上で hh は正則であるためテイラー展開ができる。このときの収束半径を RR とする。

zΔ(a,R)z \in \Delta (a,R) 上で h(z)=a0+a1(za)+12!a2(za)2+ h(z) = a_0 + a_1 (z-a) + \dfrac{1}{2!} a_2 (z-a)^2 + \cdots と展開できるが,z=az=a を代入することで n1n \geqq 1an=0a_n = 0 を得る。よって Δ(a,R)\Delta (a,R) 上で h=a0h = a_0,すなわち zΔ(a,R)z \in \Delta (a,R) において h(n)(z)=0h^{(n)} (z) = 0 である。

こうして Δ(a,R)D1\Delta (a,R) \subset D_1 が従い,aaD1D_1 の内点であることがわかった。aa は任意にとっていたため D1D_1 は開集合である。

  1. D2D_2 が開集合であること

aD2a \in D_2 を任意にとる。定義より,ある n0n_0 があって h(n0)(a)0h^{(n_0)} (a) \neq 0 である。

このとき 0Δ(h(n0)(a),ε)0 \notin \Delta (h^{(n_0)} (a) , \varepsilon) となるように ε\varepsilon をとると hh の連続性から h1(Δ(h(n0)(a),ε))h^{-1} (\Delta (h^{(n_0)} (a) , \varepsilon))aa の開近傍である。

こうして aaD2D_2 の内点であり,D2D_2 は開集合である。

一致の定理の証明

それでは hh のテイラー展開が 00 になることを実際に示しましょう。

証明

仮定から f(an)=g(an)f(a_n) = g(a_n) となる数列 {an}\{a_n\} は集積点 aaDD 内に持つ。

関数 h=fgh = f-g をとる。DD 上で h=0h=0 であれば,f=gf=g が従う。

h0h \neq 0 と仮定する。

hhDD 上で正則であるため aa の近傍 Δ(a,R)\Delta (a,R) でテイラー展開をすることができる。

h(a)=0h(a) = 0 であるため,

hh のテイラー展開を h(z)=k=0ck(za)k(cm0) h(z) = \sum_{k=0}^{\infty} c_k (z-a)^k \quad (c_m \neq 0) とおく。

  1. 全ての kk において ck=0c_k = 0 のとき

補題より hh は定数関数である。h(a)=0h(a) = 0 と合わせると,h=0h = 0 が従う。

  1. 少なくとも1つの kk において ck0c_k \neq 0 のとき

hh のテイラー展開を h(z)=k=mck(za)k(cm0) h(z) = \sum_{k=m}^{\infty} c_k (z-a)^k \quad (c_m \neq 0) となる。

ここで h~(z)=k=0ck+m(za)k \tilde{h} (z) = \sum_{k=0}^{\infty} c_{k+m} (z-a)^k とおくと,h~\tilde{h}Δ(a,R)\Delta (a,R) 上で正則で,h(z)=(za)mh~(z)h (z) = (z-a)^m \tilde{h} (z) である。

仮定より (ana)h~(an)=h(an)=0 (a_n - a) \tilde{h} (a_n) = h(a_n) = 0 であるため h~(an)=0\tilde{h} (a_n) = 0 を得る。

こうして 0=limnh~(an)=h~(a)=cm 0 = \lim_{n \to \infty} \tilde{h} (a_n) = \tilde{h} (a) = c_m となる。これは cm0c_m \neq 0矛盾する。よって仮定は棄却され h=0h = 0 すなわち f=gf = g である。

一致の定理は複素関数論の様々な場所で顔を出します。その1つの「山」が解析接続です。