ドーナツ(トーラス体・円環体)の体積・表面積を2通りの方法で計算

ドーナツの体積と表面積を計算してみましょう。

考える図形

pic01 半径 rr の円を軸のまわりに回転させてできる図形を考える。軸から円の中心までの距離を R(r)R\:(\geq r) とする。

このような,円を回転させてできるドーナツのような立体をトーラス体(円環体)と言います。トーラス体の表面をトーラスと言います。

体積

定理1

ドーナツの体積は,2π2r2R2\pi^2r^2R

2通りの計算方法を紹介します。

まずは1つめの方法です。パップスギュルダンの定理を知っていれば,非常に簡単に計算できます。

証明1

pic01

  • 回転させる前の円の面積は πr2\pi r^2
  • 回転させるときに円の重心(中心)が動く距離は 2πR2\pi R

よって,体積は,パップスギュルダンの定理より

πr2×2πR=2π2r2R\pi r^2\times 2\pi R=2\pi^2 r^2R

次は,パップスギュルダンの定理を使わずにきちんと計算してみます。

証明2

回転軸を xx 軸とし,回転する前の円の中心を (0,R)(0,R) とするような座標で考える。 pic02 円の式は y=R±r2x2y=R\pm\sqrt{r^2-x^2}

よって,回転体の体積を求める公式より,体積は

rrπ(R+r2x2)2dxrrπ(Rr2x2)2dx=rr4πRr2x2dx=8πR0rr2x2dx\displaystyle\int_{-r}^{r}\pi(R+\sqrt{r^2-x^2})^2dx\\ -\displaystyle\int_{-r}^{r}\pi(R-\sqrt{r^2-x^2})^2dx\\ =\displaystyle\int_{-r}^r 4\pi R\sqrt{r^2-x^2}dx\\ =8\pi R\displaystyle\int_0^r\sqrt{r^2-x^2}dx

ここで,x=rsinθx=r\sin\theta と置換すると,上式は

8πR0π2rcosθrcosθdθ=8πr2R0π21+cos2θ2dθ=4πr2R[θ+sin2θ2]0π2=2π2r2R8\pi R\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}r\cos\theta\cdot r\cos\theta d\theta\\ =8\pi r^2R\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1+\cos 2\theta}{2}d\theta\\ =4\pi r^2R\left[\theta+\dfrac{\sin 2\theta}{2}\right]_0^{\frac{\pi}{2}}\\ =2\pi^2 r^2R

表面積

定理2

ドーナツの表面積は,4π2rR4\pi^2 rR

表面積も2通りの計算方法を紹介します。まずは,体積の結果(定理1)を使った方法です。

証明1(大雑把だがおもしろい)

RR を固定して,体積と表面積を rr の関数とみなす。それぞれ V(r),S(r)V(r),S(r) とおく。

すると,Δr\Delta r が十分小さいとき,

V(r)+S(r)ΔrV(r+Δr)V(r)+S(r)\Delta r\fallingdotseq V(r+\Delta r)

となる(→補足)。変形すると,

V(r+Δr)V(r)ΔrS(r)\dfrac{V(r+\Delta r)-V(r)}{\Delta r}\fallingdotseq S(r)

Δr0\Delta r\to 0 の極限を考えると,dV(r)dr=S(r)\dfrac{dV(r)}{dr}=S(r)

よって,定理1の結果 V(r)=2π2r2RV(r)=2\pi^2 r^2Rrr で微分すると S(r)=4π2rRS(r)=4\pi^2 rR

補足:「小さいドーナツ」に「ドーナツの表面積×追加した厚み」を加えると「大きいドーナツ」になります。

なお,「体積の微分が表面積」という関係は,球についても成立します。→球の体積と表面積の公式の覚え方・積分での求め方内の「球の表面積の求め方2」参照。

次は,表面積を計算する公式 S=x0x12πy1+y2dxS=\displaystyle\int_{x_0}^{x_1} 2\pi y\sqrt{1+y'^2}dx を使った計算方法です。この公式を知らない方は楕円体・回転楕円体の意味と体積・表面積の定理3の証明を読んでみてください。

証明2

体積の場合と同じく,円の式を

y1=R+r2x2y_1=R+\sqrt{r^2-x^2}y2=Rr2x2y_2=R-\sqrt{r^2-x^2} とおく。

pic02 表面積は,

rr2πy11+y12dx+rr2πy21+y22dx\displaystyle\int_{-r}^r 2\pi y_1\sqrt{1+y_1'^2}dx +\displaystyle\int_{-r}^r 2\pi y_2\sqrt{1+y_2'^2}dx

となる。ここで,

y1=(x)1r2x2y_1'=(-x)\dfrac{1}{\sqrt{r^2-x^2}}
1+y12=1+x2r2x2=r2r2x21+y_1'^2=1+\dfrac{x^2}{r^2-x^2}=\dfrac{r^2}{r^2-x^2}

となり,1+y221+y_2'^2 も同じ式になる。よって,表面積は

rr2π×2R×rr2x2dx\displaystyle\int_{-r}^r 2\pi\times 2R\times\dfrac{r}{\sqrt{r^2-x^2}}dx

ここで,x=rcosθx=r\cos\theta と置換すると,上式は

4πRπ0rsinθsinθdθ=4π2rR4\pi R\displaystyle\int_{\pi}^0\dfrac{-r\sin\theta}{\sin\theta}d\theta=4\pi^2 rR

パップスギュルダンの定理が活躍する代表的な例です!