楕円体・回転楕円体の意味と体積・表面積

高校数学で習う楕円:x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 の三次元バージョンを考えます。

楕円体・回転楕円体
  • x2a2+y2b2+z2c2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{c^2}=1
    で表される曲面を楕円面と言う。

  • 楕円面を表面とする立体
    x2a2+y2b2+z2c21\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{c^2}\leq 1
    楕円体と言う。 楕円体

  • 特に,a,b,ca,b,c のうち2つ以上が等しい場合,楕円面のことを回転楕円面と言い,楕円体のことを回転楕円体と言う。

  • a=b=ca=b=c の場合は球面・球になる。

この記事では a,b,c>0a,b,c>0 とします。

回転楕円体の特徴

回転楕円体は,その名の通り,楕円を回転させてできる立体です。

定理1

2次元平面上の楕円を,その長軸または短軸に関して回転させてできる立体は回転楕円体。

証明

x2a2+y2b2=1 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1

xx 軸のまわりに回転させた立体 VV を考える(yy 軸まわりの回転も同様)。 楕円の回転

(x,y,z)(x,y,z)VV に含まれる
    \iff (x,0,0)(x,0,0)(x,y,z)(x,y,z) の距離が y0=b1x2a2y_0=b\sqrt{1-\dfrac{x^2}{a^2}} 以下
    \iff y2+z2b2(1x2a2)y^2+z^2\leq b^2\left(1-\dfrac{x^2}{a^2}\right)
    \iff x2a2+y2b2+z2b21\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{b^2}\leq 1

これは,回転楕円体の式。

回転楕円体では「仲間外れの係数の変数が回転軸」になります。例えば,上記の場合,a,b,ba,b,b で仲間外れは aa であり,回転軸は xx 軸です。

楕円体の体積

次は体積です。体積は簡単です。

定理2

楕円体:x2a2+y2b2+z2c21\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{c^2}\leq 1 の体積は,V=43πabcV=\dfrac{4}{3}\pi abc

  • 回転楕円体の体積も,この定理から計算できます。
  • a=b=ca=b=c の場合は,球の体積公式 43πa3\dfrac{4}{3}\pi a^3 になります。
  • 楕円の面積公式 S=πabS=\pi ab と似ています。

証明は「楕円体を拡大・縮小して球にする」ことで簡単にできます。拡大・縮小については 関数のグラフの拡大・縮小の証明と例 を参照ください。

証明

楕円体 x2a2+y2b2+z2c21\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{c^2}\leq 1yy 軸方向に ab\dfrac{a}{b} 倍に拡大し,zz 軸方向に ac\dfrac{a}{c} 倍に拡大すると,

x2a2+y2a2+z2a21 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{a^2}+\dfrac{z^2}{a^2}\leq 1

になる。 これは半径 aa の球であるので,体積は 43πa3\dfrac{4}{3}\pi a^3

よって,拡大前の楕円体の体積は

43πa3×ba×ca=43πabc \dfrac{4}{3}\pi a^3\times\dfrac{b}{a}\times\dfrac{c}{a}=\dfrac{4}{3}\pi abc

長楕円体と扁平楕円体

回転楕円体には2種類あります。

  • 長楕円体(長球):回転軸が別の軸よりも長い。つまり,回転楕円体の式 x2a2+y2b2+z2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{b^2}=1 において,a>ba>b の場合。ボールの北極と南極をつかんで引き伸ばすイメージ。ラグビーボール。

  • 扁平楕円体(扁球):回転軸が別の軸よりも短い。つまり,回転楕円体の式 x2a2+y2b2+z2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{b^2}=1 において,b>ab>a の場合。ボールの北極と南極から押しつぶすイメージ。地球は球に近い扁平楕円体とみなすことが多い。1ab1-\dfrac{a}{b} のことを扁平率と呼ぶことがある。

回転楕円体の表面積

表面積の公式は,長球と扁球で異なります!

定理3

回転楕円体: x2a2+y2b2+z2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{b^2}=1

の表面積 SS は,

  • a>ba > b のとき S=2π(b2+abArcsin(ε1)ε1)S=2\pi\left(b^2+\dfrac{ab\mathrm{Arcsin}(\varepsilon_1)}{\varepsilon_1}\right)
  • a<ba < b のとき S=2π(b2+a2tanh1(ε2)ε2)S=2\pi\left(b^2+\dfrac{a^2\tanh^{-1}(\varepsilon_2)}{\varepsilon_2}\right)

ただし,ε1=a2b2a2\varepsilon_1=\sqrt{\dfrac{a^2-b^2}{a^2}}ε2=b2a2b2\varepsilon_2=\sqrt{\dfrac{b^2-a^2}{b^2}}は離心率です。→離心率の意味と関連する計算

長球のときはサインの逆関数,扁球のときは tanh\tanh の逆関数が出てくるのがおもしろいです!→ 双曲線関数(sinhx, coshx, tanhx)の逆関数

証明

回転楕円体の表面積 x=x0x=x_0 から x0+Δxx_0+\Delta x の間にある部分の表面積を考える。この部分は Δx\Delta x が十分小さいとき「長さが 2πy02\pi y_0太さが (Δx)2+(Δy)2\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2} の帯」とみなせるので,表面積は

2πy01+(ΔyΔx)2Δx 2\pi y_0\sqrt{1+\left(\dfrac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2}\Delta x

よって,積分すると

S=aa2πy1+y2dx S=\int_{-a}^a 2\pi y\sqrt{1+y'^2}dx

まず,被積分関数を xx で表す。

  • x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 より y2=b2(1x2a2)y^2=b^2\left(1-\dfrac{x^2}{a^2}\right)
  • また,これを xx で微分すると 2yy=2b2xa22yy'=\dfrac{-2b^2x}{a^2}

以上より,

S=4π0ab2b2x2a2+b4a4x2dx S = 4\pi \int_0^a \sqrt{b^2-\dfrac{b^2x^2}{a^2}+\dfrac{b^4}{a^4}x^2}dx

ここで,a>ba> b の場合,上式は

4πb0a1ε12a2x2dx 4\pi b \int_0^a\sqrt{1-\dfrac{\varepsilon_1^2}{a^2}x^2}dx

x=asinθε1x=\dfrac{a\sin\theta}{\varepsilon_1} と置換すると,

S=4πabε10θ0cos2θdθ=2πabε1(θ0+sin2θ02)=2πabε1(θ0+sinθ0cosθ0)\begin{aligned} S &= \dfrac{4\pi ab}{\varepsilon_1}\displaystyle\int_0^{\theta_0}\cos^2\theta d\theta\\ &= \dfrac{2\pi ab}{\varepsilon_1}\left(\theta_0+\dfrac{\sin 2\theta_0}{2}\right)\\ &= \dfrac{2\pi ab}{\varepsilon_1}\left(\theta_0+\sin\theta_0\cos\theta_0\right) \end{aligned}

ただし,ε1=sinθ0\varepsilon_1=\sin\theta_0 と, cosθ0=1sin2θ0=1ε12=b2a2\begin{aligned} \cos\theta_0 &= \sqrt{1-\sin^2\theta_0}\\ &= \sqrt{1-\varepsilon_1^2}\\ &= \sqrt{\dfrac{b^2}{a^2}} \end{aligned}

より

S=2πabε1(θ0+ε1ba)=2π(b2+abArcsin(ε1)ε1)\begin{aligned} S&=\dfrac{2\pi ab}{\varepsilon_1} \left( \theta_0+\varepsilon_1\cdot\dfrac{b}{a} \right)\\ &= 2\pi\left(b^2+\dfrac{ab\mathrm{Arcsin} (\varepsilon_1)}{\varepsilon_1}\right) \end{aligned}

a<ba<b の場合も同様に計算できる。

楕円面の媒介変数表示

楕円面 x2a2+y2b2+z2c2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}+\dfrac{z^2}{c^2}=1 は,媒介変数 θ,ϕ\theta,\phi (ただし,0θπ,0ϕ<2π0\leq \theta \leq \pi,\:0\leq\phi <2\pi)を用いて以下のように表せます: {x=acosθcosϕy=bcosθsinϕz=csinθ\begin{cases} x=a\cos\theta\cos\phi\\ y=b\cos\theta\sin\phi\\ z=c\sin\theta \end{cases} これは,球面の媒介変数表示(→ここの公式5)を知っていればすぐに導出できます。

一般の楕円体の表面積は計算が大変です。楕円積分が登場します。