コーシーの積分公式とその応用~グルサの定理・モレラの定理

更新日時 2022/07/15
コーシーの積分公式(コーシーの積分表示)
  • DD を単純閉曲線(自分と交わらない閉じた曲線)で囲まれた領域とする。
  • ff を領域 D=DD\overline{D} = D \cup \partial D で正則な関数とする。

このとき DD の内部の任意の点 zz f(z)=12πiDf(ζ)ζzdζ f(z) = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} d\zeta となる(線積分の向きは反時計回り,より厳密には領域の内側から見て左周りに定める)。

ex

コーシーの積分公式は正則関数を積分によって表現する公式です。この記事ではコーシーの積分公式と,積分公式から得られる重要な定理を,具体例・証明とともに紹介していきます。

単純閉曲線に囲まれた領域について

単純閉曲線に囲まれた領域をいくつか例示します。

ポイントは,穴が開いた領域も考慮にいれるところです。「内側」の曲線の向きは「外側」の曲線の向きと逆についていることに注意してください。

境界の曲線の向きは領域の内側から見て左回りに付けることを覚えておきましょう。

pic011

目次
  • 表記について

  • 具体例

  • 証明

  • さまざまな応用

  • 次回予告

表記について

この記事では,以下の表記を使います。

  • Δ(z0,R)\Delta (z_0 , R) は,中心が z0z_0,半径 RR の円盤:{zCzz0<R}\{ z \in \mathbb{C} \mid |z-z_0| < R \} を表します。ただし,z0C,RR>0z_0 \in \mathbb{C} , R \in \mathbb{R}_{>0} とします。

  • 特に Δ=Δ(0,1)={zCz<1}\Delta = \Delta (0,1) = \{ z \in \mathbb{C} \mid |z| < 1 \} とします。

  • 領域 DD に対して D\overline{D} を周まで含めた部分,すなわち DDD \cup \partial D を表します。

  • 例えば,Δ(z0,R)={zCzz0R}\overline{\Delta (z_0 , R)} = \{ z \in \mathbb{C} \mid |z-z_0| \leqq R \} です。

バーの記法について

位相空間論の文脈では,D\overline{D} によって DD閉包(内部+周)を表します。一方 z\overline{z}zz の複素共役を表すことから,D\overline{D}DD の複素共役を表すこともあります。注意しましょう。

具体例

定数関数

コーシーの積分定理の記事の最後では,1z1\dfrac{1}{z-1} をいくつかの閉曲線に沿って積分しました。そして,曲線に寄らずに結果が 2πi2\pi i になることを見ました。実は,これはコーシーの積分公式で f(z)=1f(z) = 1 とした場合に対応します。

というわけで f(z)=1f(z) = 1 のときを考えてみます。

定数関数はいたるところで正則です。もちろん単位円盤とその周 Δ={zCz1}\overline{\Delta} = \{ z \in \mathbb{C} \mid |z| \leqq 1 \} 上でも正則です。

zz を単位円盤の内部の任意の点として,実際に積分を計算しましょう。

12πiΔ1ζzdζ=12πiζz=11ζzdζ=12πi02π1eiθieiθ  dθ=12πi2πi=1\begin{aligned} \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta} \dfrac{1}{\zeta - z} d\zeta &= \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{|\zeta - z| = 1} \dfrac{1}{\zeta - z} d\zeta\\ &= \dfrac{1}{2\pi i} \int_0^{2\pi} \dfrac{1}{e^{i \theta}} ie^{i\theta} \; d\theta\\ &= \dfrac{1}{2\pi i} \cdot 2 \pi i = 1 \end{aligned}

公式通りの結果になりました。なお,途中積分経路を ζ=1|\zeta|=1 から ζz=1|\zeta - z| = 1 に変形しました。また ζ=eiθ+z\zeta = e^{i\theta} + z と置換をしています。

三角関数

次はコーシーの積分公式を用いておもしろい積分をしてみましょう。

問題

次の積分を計算せよ。

ζ=1cosζζ  dζ \oint_{|\zeta| = 1} \dfrac{\cos \zeta}{\zeta} \; d\zeta

単純な計算ではうまくできない積分ですが,コーシーの積分公式を用いて計算できます。

f(z)=coszf(z) = \cos z としましょう。cosz\cos z は単位円盤 Δ={zCz1}\overline{\Delta} = \{z \in \mathbb{C} \mid |z| \leqq 1 \} 上で正則です。したがって z<1|z| < 1 となる任意の複素数で cosz=12πiΔcosζζz  dζ \cos z = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta} \dfrac{\cos \zeta}{\zeta - z} \; d\zeta となります。

ここで z=0z=0 とすると 1=12πiΔcosζζ  dζ 1 = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta} \dfrac{\cos \zeta}{\zeta} \; d\zeta となります。こうして ζ=1cosζζ  dζ=2πi \oint_{|\zeta| = 1} \dfrac{\cos \zeta}{\zeta} \; d\zeta = 2\pi i が得られました。おもしろいですね。

証明

次に示す議論は,領域 DD が穴を持つことに寄らないことに注意してください。

証明

f(z)=12πiDf(ζ)ζzdζ f(z) = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} d\zeta

を証明する。

右辺の被積分関数は,D\overline{D} 内で ζz\zeta\neq z なら正則なので,積分経路が変形できる。そこで,経路を zz を中心とする半径 ε\varepsilon の小さい円周とする。

12πiDf(ζ)ζzdζ=12πiζz=εf(ζ)ζzdζ \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} d\zeta=\dfrac{1}{2\pi i} \oint_{|\zeta-z|=\varepsilon} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} d\zeta

proof

右辺を,ζ=z+εeit\zeta = z + \varepsilon e^{it} というパラメタ表示で書き直すと,

02πf(z+εeit)εeitiεeit2πidt=02πf(z+εeit)  dt2π \int_0^{2\pi} \dfrac{f(z + \varepsilon e^{it})}{\varepsilon e^{it}} \dfrac{i\varepsilon e^{it}}{2\pi i} dt = \int_0^{2\pi} f(z + \varepsilon e^{it}) \; \dfrac{dt}{2\pi}

ε\varepsilon が十分 00 に近いなら,ff の連続性より右辺は f(z)f(z) にいくらでも近づく。

実際,ε0\varepsilon \to 0 で上の式の右辺が f(z)f(z) に収束することを示そう。

02πf(z+εeit)  dt2πf(z)=02πf(z+εeit)  dt2π02πf(z)dt2π=02π{f(z+εeit)f(z)}  dt2πsupζz=εf(ζ)f(z)\begin{aligned} &\left| \int_0^{2\pi} f(z + \varepsilon e^{it}) \; \dfrac{dt}{2\pi} - f(z) \right|\\ &= \left| \int_0^{2\pi} f(z + \varepsilon e^{it}) \; \dfrac{dt}{2\pi} - \int_0^{2\pi} f(z) \dfrac{dt}{2\pi} \right|\\ &= \left| \int_0^{2\pi} \{ f(z + \varepsilon e^{it})-f(z) \} \; \dfrac{dt}{2\pi}\right|\\ &\leqq \sup_{|\zeta - z| = \varepsilon} |f(\zeta) - f(z)| \end{aligned} となるが,f(ζ)f(\zeta)ζ=z\zeta = z で連続であるため,ε0\varepsilon \to 0supζz=εf(ζ)f(z)\displaystyle \sup_{|\zeta - z| = \varepsilon} |f(\zeta) - f(z)|00 に収束する。

したがって limε002πf(z+εeit)  dt2π=f(z) \lim_{\varepsilon \to 0} \int_0^{2\pi} f(z + \varepsilon e^{it}) \; \dfrac{dt}{2\pi} = f(z) である。

平均値の性質

証明の途中で得られた式:

f(z)=12π02πf(z+εeit)  dtf(z)= \dfrac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi} f(z + \varepsilon e^{it}) \; dt

を見てましょう。これは,正則関数のある点での値は,その点を中心とする円周上での値の平均値であることを意味します。これを平均値の性質といいます。

さまざまな応用

グルサの定理

コーシーの積分公式は,正則関数 f(z)f(z) を積分で表現する公式でした。さらに,f(z)f(z)nn 階導関数も積分で表現することができます!

グルサの定理(グルサの公式)
  • 領域 DD を単純閉曲線で囲まれた領域とする。
  • ff を領域 D=DD\overline{D} = D \cup \partial D で正則な関数とする。

このとき DD の内部の任意の点 zz f(n)(z)=n!2πiDf(ζ)(ζz)n+1  dζ f^{(n)} (z) = \dfrac{n!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{n+1}} \; d\zeta となる。

n=0n=0 のとき,コーシーの積分公式そのものです。

正則(1階微分可能)なら,何回でも微分可能というのはすさまじい結果ですね。

正則関数 ff に対し,その導関数 ff' も正則である。

この系によって,「関数 ff が正則であることを証明したいときに,正則な原始関数 FF を用意する」という手法がとれます。この手法は,例えば,後述するモレラの定理の証明で登場します。

グルサの定理の証明

帰納法によって証明します。簡単な極限計算だけで証明できます。

  • n=1n=1 のとき
    コーシーの積分公式を用いると limh0f(z+h)f(z)h=limh01h(12πiDf(ζ)ζzh  dζ12πiDf(ζ)ζz  dζ)=limh01h12πiD(f(ζ)ζzhf(ζ)ζz)dz=limh01h12πiDhf(ζ)(ζzh)(ζz)  dz=limh012πiDf(ζ)(ζzh)(ζz)  dz\begin{aligned} &\lim_{h \to 0} \dfrac{f(z+h)-f(z)}{h}\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \left( \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z - h} \; d\zeta - \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} \; d\zeta \right)\\ &=\lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \left( \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z - h} - \dfrac{f(\zeta)}{\zeta - z} \right) dz\\ &=\lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{h \cdot f(\zeta)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)} \; dz\\ &=\lim_{h \to 0} \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)} \; dz \end{aligned} と変形できる。最後の極限は 12πiDf(ζ)(ζz)2  dz \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^2} \; dz となる。実際, Df(ζ)(ζzh)(ζz)  dzDf(ζ)(ζz)2  dz=D(f(ζ)(ζzh)(ζz)f(ζ)(ζz)2)  dz=Dhf(z)(ζzh)(ζz)2  dz=Df(z)(ζzh)(ζz)2  dzh\begin{aligned} &\left| \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)} \; dz - \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^2} \; dz \right|\\ &= \left| \oint_{\partial D} \left( \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)} -\dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^2} \right) \; dz \right|\\ &= \left| \oint_{\partial D} \dfrac{h \cdot f(z)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)^2} \; dz \right|\\ &= \left| \oint_{\partial D} \dfrac{f(z)}{(\zeta - z - h)(\zeta - z)^2} \; dz \right| \cdot |h| \end{aligned} であるため,h0h \to 0 で左辺は 00 に収束する。
    よって,極限 limh0f(z+h)f(z)h\displaystyle \lim_{h \to 0} \dfrac{f(z+h) - f(z)}{h} が存在するため,f(z)f(z) には導関数 f(z)f'(z) が存在し f(z)=12πiDf(ζ)(ζz)2  dz f' (z) = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^2} \; dz である。

  • 一般の nn の場合
    n1n-1 のときに成立すると仮定する。n=1n=1 のときと同様に計算すると, limh0f(n1)(z+h)f(n1)(z)h=limh01h((n1)!2πiDf(ζ)(ζzh)n  dζ(n1)!2πiDf(ζ)(ζz)n  dζ)=limh01h(n1)!2πiD{(ζz)n(ζzh)n}f(ζ)(ζzh)n(ζz)n  dz=limh01h(n1)!2πiD{nh+O(h2)}f(ζ)(ζzh)n(ζz)n  dz=limh0n!2πiDf(ζ)(ζzh)n(ζz)n  dz\begin{aligned} &\lim_{h \to 0} \dfrac{f^{(n-1)} (z+h) - f^{(n-1)} (z)}{h}\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \left( \dfrac{(n-1)!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z - h)^{n}} \; d\zeta - \dfrac{(n-1)!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{n}} \; d\zeta \right)\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \dfrac{(n-1)!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{\{ (\zeta - z)^{n} - (\zeta - z - h)^{n} \} \cdot f(\zeta)}{(\zeta - z - h)^{n} (\zeta - z)^{n}} \; dz\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{1}{h} \dfrac{(n-1)!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{\{ nh + O(h^2) \} \cdot f(\zeta)}{(\zeta - z - h)^{n} (\zeta - z)^{n}} \; dz\\ &= \lim_{h \to 0} \dfrac{n!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z - h)^{n} (\zeta - z)^{n}} \; dz \end{aligned} となる。なお O(h2)O(h^2)ランダウの記号 とする。最後の極限も n=1n=1 のときと同様に計算すると 12πiDf(ζ)(ζz)n1  dz \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{n-1}} \; dz になる。ゆえに,極限 limh0f(n1)(z+h)f(n1)(z)h\displaystyle \lim_{h \to 0} \dfrac{f^{(n-1)} (z+h) - f^{(n-1)} (z)}{h} が存在するため,f(z)f(z) には nn 次導関数 f(n)(z)f^{(n)} (z) が存在し f(n)(z)=n!2πiDf(ζ)(ζz)n+1  dζ f^{(n)} (z) = \dfrac{n!}{2\pi i} \oint_{\partial D} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{n+1}} \; d\zeta である。

例題

例題

領域 DD で正則な関数の列 {fn}\{ f_n \} が正則関数 ff に広義一様収束するならば,{fn}\{ f'_n \}ff' に広義一様収束することを示せ。

ただし広義一様収束とは,任意のコンパクト集合上で一様収束することを意味します(今回の場合は任意の閉円盤上で一様収束することが必要十分です)。

z0C,RR>0z_0 \in \mathbb{C} , R \in \mathbb{R}_{>0}Δ(z0,R)D\Delta (z_0,R) \subset D を満たすように任意にとる。

Δ(z0,R)\Delta (z_0 , R) に対して ε>0\varepsilon > 0 を任意にとったとき,nn を十分大きくとると,supzΔ(z0,R)fn(z)f(z)<ε\sup_{z \in \Delta (z_0,R)} |f_n' (z) - f'(z)| < \varepsilon となることを示せばよい。

Δ(z0,R)\Delta (z_0 , R) の点 zz を任意に取る。DD は開集合(領域の定義)であるため,r>0r > 0 を十分小さくとることで Δ(z0,R+r)D\Delta (z_0 , R + r) \subset D とできる。 fnf_nDD 広義一様収束することから,Δ(z0,R+r)\Delta (z_0 , R + r) で一様収束する。すなわち,nn を十分大きくとると supzΔ(z0,R+r)fn(z)f(z)<ε\sup_{z \in \Delta (z_0 , R+r)} |f_n (z) - f (z)| < \varepsilon とできる。

グルサの定理より fn(z)=12πiΔ(z,r)fn(ζ)(ζz)2  dζf(z)=12πiΔ(z,r)f(ζ)(ζz)2  dζ f'_n (z) = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \dfrac{f_n(\zeta)}{(\zeta - z)^{2}} \; d\zeta\\ f' (z) = \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{2}} \; d\zeta である。

nn を十分大きくとり,グルサの定理を用いると fn(z)f(z)=12πiΔ(z,r)fn(ζ)(ζz)2  dζ12πiΔ(z,r)f(ζ)(ζz)2  dζ=12πiΔ(z,r)fn(ζ)f(ζ)(ζz)2  dζ=12πr2Δ(z,r)fn(ζ)f(ζ)  dζ12πr2Δ(z,r)supζΔ(z0,R+r)fn(ζ)f(ζ)  dζ=12πr22πr2ε=ε\begin{aligned} &|f_n' (z) - f'(z)|\\ &= \left| \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \dfrac{f_n(\zeta)}{(\zeta - z)^{2}} \; d\zeta - \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \dfrac{f(\zeta)}{(\zeta - z)^{2}} \; d\zeta \right|\\ &= \left| \dfrac{1}{2\pi i} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \dfrac{f_n(\zeta) - f(\zeta)}{(\zeta - z)^{2}} \; d\zeta \right|\\ &= \dfrac{1}{2\pi r^2} \oint_{\partial \Delta (z,r)} |f_n (\zeta) - f(\zeta)| \; d\zeta\\ &\leqq \dfrac{1}{2\pi r^2} \oint_{\partial \Delta (z,r)} \sup_{\zeta \in \Delta (z_0 , R+r)} |f_n (\zeta) - f(\zeta)| \; d\zeta\\ &= \dfrac{1}{2\pi r^2} \cdot 2\pi r^2 \cdot \varepsilon = \varepsilon \end{aligned} すなわち supzΔ(z0,R)fn(z)f(z)<ε \sup_{z \in \Delta (z_0,R)} |f_n' (z) - f'(z)| < \varepsilon とできる。こうして fnf_n'ff' に広義一様収束する。

このようにグルサの定理を用いることで,微分の不等式を積分により評価することができます。

こうした評価は

  • 正則関数の積分は積分経路を自由に変形できる
  • 元の関数の評価を活用できる

ことから非常に重要かつ有用なテクニックです。

モレラの定理

コーシーの積分定理を思い出しましょう。領域 DD 内で正則な複素関数 f(z)f(z)DD 内の単純閉曲線 CC で複素線積分すると 00 になるという定理でした。

逆はどうでしょうか?つまり,単純閉曲線 CC に沿った積分値がいつも 00 なら,その関数は正則であるといえるのでしょうか?モレラの定理はこの問いの答えとなります。

モレラの定理

領域 DD 上の連続関数 ff が,DD 内の任意の区分的になめらかな閉曲線 CC に対して Cf(z)  dz=0 \oint_{C} f(z) \; dz = 0 となるとき,ffDD 上正則である。

具体例1:ガンマ関数

モレラの定理を用いていくつかの関数が正則であることを証明しましょう。

ガンマ関数は, Γ(z)=0tz1etdt \Gamma(z)= \int_0^{\infty} t^{z-1} e^{-t}dt と定義されていました。

ガンマ関数が D={zCRe(z)>0}D = \{ z \in \mathbb{C} \mid \mathrm{Re} (z) > 0 \} で正則であることを示します。

DD 内のなめらかな曲線 CC を任意にとる。 CΓ(z)  dz=C0tz1etdtdz \oint_{C} \Gamma (z) \; dz = \oint_{C} \int_0^{\infty} t^{z-1} e^{-t}dt dz はフビニの定理より積分の順序を入れ替えることができ, CΓ(z)  dz=C0tz1etdtdz=0et(Ctz1dz)dt=0\begin{aligned} \oint_{C} \Gamma (z) \; dz &= \oint_{C} \int_0^{\infty} t^{z-1} e^{-t}dt dz\\ &= \int_0^{\infty} e^{-t} \left( \oint_{C} t^{z-1} dz \right) dt\\ &= 0 \end{aligned} と計算されます。なお,最後の等式では tx1t^{x-1}DD で正則であることと,コーシーの積分定理を用いました。

こうしてモレラの定理から正則になります。

具体例2:ゼータ関数

ゼータ関数は, ζ(s)=n=11ns \zeta (s) = \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^s} と定義されていました。

ゼータ関数が D={zCRe(z)>1}D = \{ z \in \mathbb{C} \mid \mathrm{Re} (z) > 1 \} で正則であることを示します。

DD 内のなめらかな曲線 CC を任意にとり,

Cζ(s)  ds=Cn=11ns  ds \oint_{C} \zeta (s) \; ds = \oint_{C} \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^s} \; ds を計算します。ワイエルシュトラスのM判定法より,積分と極限を入れ替えることができて, Cζ(s)  ds=n=1C1ns  ds \oint_{C} \zeta (s) \; ds = \sum_{n=1}^{\infty} \oint_{C} \dfrac{1}{n^s} \; ds となる。1ns\dfrac{1}{n^s}DD 上で正則なので各項の積分は 00 であり, Cζ(s)  ds=0 \oint_{C} \zeta (s) \; ds = 0 となる。よって,モレラの定理から ζ(s)\zeta (s)DD 上で正則となります。

モレラの定理の証明

証明

以下では,単に曲線と書いた場合,DD 内の区分的になめらかな曲線とする。

1点 aa を任意に固定する。Γz\Gamma_zaazz を結ぶ曲線とする。 F(z)=Γzf(ζ)  dζ F(z) = \int_{\Gamma_z} f(\zeta) \; d\zeta F(z)F(z) を定める。Γz\Gamma_z'aazz を結ぶ他の曲線とする。(aa から zz に向けて向きを付ける。)このとき ΓzΓz\Gamma_z - \Gamma_z' は区分的になめらかな閉曲線であるため,仮定から ΓzΓzf(ζ)  dζ=0 \oint_{\Gamma_z - \Gamma_z'} f(\zeta) \; d\zeta = 0 である。よって Γzf(ζ)  dζ=Γzf(ζ)  dζ+ΓzΓzf(ζ)  dζ=Γzf(ζ)  dζ \oint_{\Gamma_z} f(\zeta) \; d\zeta = \oint_{\Gamma_z'} f(\zeta) \; d\zeta + \oint_{\Gamma_z - \Gamma_z'} f(\zeta) \; d\zeta =\oint_{\Gamma_z'} f(\zeta) \; d\zeta となる。すなわち Γz\Gamma_z の選び方に寄らず,F(z)F(z) の値が決まる。以下 Γz\Gamma_zaazz を結ぶ直線としてよい。

F(z)=f(z)F'(z) = f(z) を示す。ε>0\varepsilon > 0 を任意にとる。ff の連続性から,δ\delta を十分小さくとることで ζz<δ|\zeta - z| < \delta なる任意の ζ\zetaf(ζ)f(z)<ε|f(\zeta) - f(z)| < \varepsilon となる。

hh を十分 00 に近いもの(h<δ|h| < \delta)とする。

Lz,z+hL_{z,z+h}zzz+hz+h を結ぶ直線とする。(zz から z+hz+h に向けて向きを付ける。)このとき,Γz+Lz,z+hΓz+h\Gamma_z + L_{z,z+h} - \Gamma_{z+h}a,z,z+ha,z,z+h を頂点とする三角形である。すなわち区分的になめらかな閉曲線となる。

pic01

よって仮定から Γz+Lz,z+hΓz+hf(z)  dz=0 \oint_{\Gamma_z + L_{z,z+h} - \Gamma_{z+h}} f(z) \; dz = 0 である。式を変形することで Lz,z+hf(z)  dz=Γz+hΓzf(z)  dz=F(z+h)F(z)\begin{aligned} \oint_{L_{z,z+h}} f(z) \; dz &= \oint_{\Gamma_{z+h} - \Gamma_z} f(z) \; dz\\ &= F(z+h) - F(z) \end{aligned} を得る。

F(z+h)F(z)hf(z)=1hLz,z+hf(ζ)  dζf(z)=1hLz,z+h(f(ζ)f(z))  dζ1hLz,z+hf(ζ)f(z)  dζ1hLz,z+hsupζzhf(ζ)f(z)  dζ=supζzhf(ζ)f(z)\begin{aligned} &\left| \dfrac{F(z+h) - F(z)}{h} - f(z) \right|\\ &= \left| \dfrac{1}{h} \oint_{L_{z,z+h}} f(\zeta) \; d\zeta - f(z) \right|\\ &= \left| \dfrac{1}{h} \oint_{L_{z,z+h}} (f(\zeta) - f(z)) \; d\zeta \right|\\ &\leqq \dfrac{1}{h} \oint_{L_{z,z+h}} |f(\zeta) - f(z)| \; d\zeta\\ &\leqq \dfrac{1}{h} \oint_{L_{z,z+h}} \sup_{|\zeta - z| \leqq |h|} |f(\zeta) - f(z)| \; d\zeta\\ &= \sup_{|\zeta - z| \leqq |h|} |f(\zeta) - f(z)| \end{aligned}

hh の取り方より supζzhf(ζ)f(z)<ε\displaystyle \sup_{|\zeta - z| \leqq |h|} |f(\zeta) - f(z)| < \varepsilon である。よって limh0F(z+h)F(z)h=f(z) \lim_{h \to 0} \dfrac{F(z+h) - F(z)}{h} = f(z) である。こうして FF は複素微分可能,すなわち正則である。グルサの定理の系より FF の導関数である ff も正則である。

前述したように正則な原始関数を用意することで,ff の正則性を証明しました。

次回予告

コーシーの積分公式により,正則関数の導関数を積分で計算できることが分かりました。nn 次の導関数がシンプルな積分で表されることは大変興味深いことです。

nn 次の導関数」でテイラーの定理を思い出す人もいるかもしれませんね。こうして「コーシーの積分公式を用いると複素関数版テイラー展開ができるのではないか?」という疑問が出てきます。

その解答が次回紹介するローラン展開です。

モレラの定理によってガンマ関数が正則であることが証明できます。是非挑戦してみてください。