3つめの解き方は,一般の n 変数の場合で説明します。以下の1階線形連立微分方程式を考えます:
⎩⎨⎧dtdx1=a11x1+a12x2+⋯+a1nxndtdx2=a21x1+a22x2+⋯+a2nxn⋮dtdxn=an1x1+an2x2+⋯+annxn
この式を次のように書き換えます。
dtd⎝⎛x1x2⋮xn⎠⎞=⎝⎛a11a21⋮an1a12a22⋮an2⋯⋯⋱⋯a1na2n⋮ann⎠⎞⎝⎛x1x2⋮xn⎠⎞
ここで x=⎝⎛x1x2⋮xn⎠⎞,A=⎝⎛a11a21⋮an1a12a22⋮an2⋯⋯⋱⋯a1na2n⋮ann⎠⎞ とおくと,
dtdx=Ax
と書けます。実は,上の解は x=etAc になることが知られています。ただし,etA は行列の指数関数です。詳細は,以下を参照してください。
また,c は要素数 n の行のベクトルです。初期値が x0 で与えられている場合,x=etAx0 となります。
行列 A が対角化できる場合は etA の計算は簡単です。対角行列 D を用いて A=PDP−1 と書けるので,etA=PetDP−1 となります。
冒頭の例題の別解
与式は
dtd(x1x2)=(11−24)(x1x2)
と変形できる。上の式の 2×2 行列を A とおく。A は行列 P=(2−1−11) により対角化される。実際 D=(2003)=P−1AP が成立する。よって
etA=PetDP−1=(2−1−11)(e2t00e3t)(1112)=(2e2t−e3t−e2t+e3t2e2t−2e3t−e2t+2e3t)
となる。初期値 x0=(1−2) より
(x1x2)=etAx0=(2e2t−e3t−e2t+e3t2e2t−2e3t−e2t+2e3t)(1−2)=(−2e2t+3e3te2t−3e3t)
である。よって,x1=−2e2t+3e3t,x2=e2t−3e3t
なお,対角化できない場合はジョルダン標準形を用います。ジョルダン標準形の場合は,各ジョルダン細胞について考えれば良いです。ジョルダン細胞は,λiI+N と分解できたのでした。そのため etλiIetN を計算することになります。etλiI は対角成分が teλi の対角行列ですので問題はありません。しかし,etN は少々大変です。計算してみると,
etN=I+tN+21t2N2+⋯=⎝⎛101⋱101⎠⎞+⎝⎛00t0t⋱⋱00t0⎠⎞+21⎝⎛000t2⋱⋱00t20⎠⎞+⋯+(m−1)!1⎝⎛000⋱0tm−10⎠⎞=⎝⎛10t121t2t⋱⋯⋱⋱1(m−1)!1tm−1⋮21t2t1⎠⎞
となります。こうして微分方程式の解が計算できます。
「漸化式の解き方と微分方程式の解き方が似ている」のは意識しておくとよいです。