微分方程式の階数,線形性などの意味と具体例

微分方程式の基本的な分類(常,偏,階数,線形性,同次,非同次)について解説します。後半では,物理で登場する様々な具体例で理解を深めます。

yynn 次導関数を y(n)y^{(n)} と表記します。

常微分方程式と偏微分方程式

常微分方程式:未知の一変数関数 y(x)y(x) とその導関数 y,y(2),y',y^{(2)},\cdots を含む方程式

偏微分方程式:未知の多変数関数 f(x,y,)f(x,y,\cdots) とその偏導関数 fx,fy,fxx,f_x,f_y,f_{xx},\cdots を含む方程式

以下,主に常微分方程式で説明しますが,階数や線形性などの定義は偏微分方程式の場合も同様です。

微分方程式の階数

最大 nn 階の導関数が登場するような微分方程式をnn 階の微分方程式と言います。

  • y=1y'=1 は一階の微分方程式
  • my(2)=kymy^{(2)}=-ky は二階の微分方程式
  • y(3)x=yx4y^{(3)}x=y'x^4 は三階の微分方程式

微分方程式の線形性

y2y^2yyyy' などの項を含まない以下のような微分方程式を 線形微分方程式と言います:

Pn(x)y(n)+Pn1(x)y(n1)++P1(x)y+P0(x)y=Q(x)P_n(x)y^{(n)}+P_{n-1}(x)y^{(n-1)}+\cdots +P_1(x)y'+P_0(x)y=Q(x)

Pi(x)P_i(x) たちがどんなに複雑な関数でも,線形微分方程式と言います。

また,Pi(x)P_i(x) たちが全て定数(Q(x)Q(x) は定数でなくてもよい)である微分方程式を定数係数線形微分方程式と言います。

yx+y=x3y'x+y=x^3 は線形微分方程式

y+yy=0y'+yy'=0 は非線形微分方程式

y(3)+3y+y=sinxy^{(3)}+3y'+y=\sin x は定数係数線形微分方程式

同次,非同次

線形微分方程式において,

同次微分方程式:ゼロでない項は必ず y,y,y(2),y,y',y^{(2)},\cdots のいずれかを含むもの,つまり Q(x)=0Q(x)=0 のもの

非同次微分方程式:同次でないもの,つまり Q(x)0Q(x)\neq 0 のもの

なお,線形同次微分方程式には以下のような嬉しい性質 (重ね合わせの原理)が成立します。

線形同次微分方程式について,y1y_1 が解ならその定数倍 cy1cy_1 も解。 y1,y2y_1,y_2 が解ならその和 y1+y2y_1+y_2 も解。

物理で登場する多くの方程式は線形同次微分方程式です!

いろいろな微分方程式の例

・バネの運動方程式

mx(2)=kxmx^{(2)}=-kx

二階の定数係数線形常微分方程式(同次)

・強制振動

mx(2)+kx=Fcosωtmx^{(2)}+kx=F\cos\omega t

二階の定数係数線形常微分方程式(非同次)

・LR回路

V=RI+LdIdtV=RI+L\dfrac{dI}{dt}

一階の定数係数線形常微分方程式(非同次)

・一次元の波動方程式

2ft2=c22fx2\dfrac{\partial^2 f}{\partial t^2}=c^2\dfrac{\partial^2 f}{\partial x^2}

二階の定数係数線形偏微分方程式(同次)

・三次元のポアソン方程式

2ϕx2+2ϕy2+2ϕz2=f(x,y,z)\dfrac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}+\dfrac{\partial^2 \phi}{\partial y^2}+\dfrac{\partial^2 \phi}{\partial z^2}=f(x,y,z)

二階の定数係数線形偏微分方程式(非同次)

f0f\equiv 0 としたものがラプラス方程式です。

ちなみに,私の好きな微分方程式は波動方程式です。