絶対収束と条件収束の意味と具体例

無限級数の絶対収束と条件収束について整理しました。絶対収束なら収束することの証明,絶対収束するとなぜ嬉しいのかを解説します。

注:絶対収束・条件収束は「数列」に対する議論です。一方,各点収束・一様収束は「関数列」に対する議論です。→各点収束と一様収束の違いと具体例

絶対収束,条件収束の定義

この記事では数列の各項 ana_n は実数とします。

  • 無限級数の収束とは(高校数学)
    数列 Sn=∑i=1naiS_n=\displaystyle\sum_{i=1}^na_i が収束するとき,無限級数 ∑i=1∞ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i は収束すると言います。

  • 絶対収束とは
    各項の絶対値を取った和: ∑i=1∞∣ai∣\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}|a_i| が収束するとき,∑i=1∞ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i は絶対収束すると言います。

  • 条件収束とは
    収束するが,絶対収束しないような無限級数を条件収束すると言います。

具体例

条件収束の例として非常に有名な交代級数です!

例1

1−12+13−14+⋯1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\cdots は条件収束する

絶対収束すれば収束

定理

∑i=1∞ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i が絶対収束すれば,もとの級数自身も収束する。

各項の絶対値を取って符号を揃えてるので,絶対収束の方が厳しい条件であるというのは感覚的には当たり前ですね。

一応ちゃんと証明しておきます(コーシー列について知らない人は飛ばしてください)。

証明

任意の m,n (m<n)m,n\:(m < n) に対して,三角不等式より

∣am+am+1+⋯+an∣≤∣am∣+∣am+1∣+⋯+∣an∣|a_m+a_{m+1}+\cdots +a_n|\leq |a_m|+|a_{m+1}|+\cdots +|a_n|

(以下の二つ目の ⇒\Rightarrow で使う)

よって,

∑i=1n∣ai∣\displaystyle\sum_{i=1}^n|a_i| が収束
⇒∑i=1n∣ai∣\displaystyle \Rightarrow \sum_{i=1}^n|a_i| がコーシー列
⇒∑i=1nai\displaystyle \Rightarrow \sum_{i=1}^na_i がコーシー列
⇒∑i=1nai\displaystyle \Rightarrow \sum_{i=1}^na_i が収束

つまり,絶対収束なら ∑i=1nai\displaystyle\sum_{i=1}^na_i は収束する。

絶対収束だとなぜ嬉しいのか

無限級数が絶対収束すると,有限和のときに可能な様々な操作が自由に行える。

和の順序交換

数列 ana_n の各項を並べ替えた数列を bnb_n とする(厳密には正の整数全体から正の整数全体への全単射を用いて定義される)。 ∑i=1∞ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i が絶対収束するなら,∑i=1∞ai=∑i=1∞bi\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i=\sum_{i=1}^{\infty}b_i
つまり,順番を好きに並び替えることができる。

条件収束だとダメな例

条件収束だと(無限個の)順序交換は許されません。

log2に収束する交代級数の証明 にある通り 1−12+13−14+⋯=∑k=1∞(−1)k−1k=log⁡2 1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\cdots=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{k-1}}{k}=\log 2 が成立します。

突然ですが,整数全体を4つのグループに分けてみます。

  • 1,2,41,2,4
  • 33 以上の奇数全体
  • 22 で一回だけ割り切れる 66 以上の整数(6,146,14 など)
  • 44 の倍数で 88 以上のもの

この4グループに分けて無限和を計算してみましょう。

∑n=1∞(−1)n−1n=1−12−14+∑k=2∞12k−1−∑k=2∞12(2k−1)−∑k=2∞14k=1−12−14+∑k=2∞(12k−1−12(2k−1)−14k)=1−12−14+∑k=2∞(12(2k−1)−14k)=12−14+12∑k=2∞(12k−1−12k)=12∑n=1∞(−1)n−1n=12log⁡2\begin{aligned} &\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n}\\ &= 1-\frac{1}{2}-\frac{1}{4}+\sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{2k-1}-\sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{2(2k-1)}-\sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{4k}\\ &= 1-\frac{1}{2}-\frac{1}{4}+\sum_{k=2}^{\infty} \left( \frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2(2k-1)}-\frac{1}{4k} \right)\\ &= 1-\frac{1}{2}-\frac{1}{4}+\sum_{k=2}^{\infty} \left( \frac{1}{2(2k-1)}-\frac{1}{4k} \right)\\ & = \dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{2}\sum_{k=2}^{\infty}\left(\dfrac{1}{2k-1}-\dfrac{1}{2k}\right) &= \frac{1}{2} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n}\\ &= \frac{1}{2} \log 2 \end{aligned}

なんと収束値が変わってしましました!

実は 12log⁡2\dfrac{1}{2} \log 2 のみならず,任意の実数に収束させることができます。

リーマンの再配列定理

条件収束する級数 ana_n をうまく並び替えることで,級数和を任意の実数に収束させることができる。

証明などより詳しく興味がある方は,是非調べてみてください。

畳み込み

絶対収束する二つの無限級数 ∑i=1∞ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i ,∑i=1∞bi\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}b_i について考える。 ci=∑k=1iakbi+1−kc_i=\displaystyle\sum_{k=1}^ia_kb_{i+1-k} とおくと,
∑i=1∞ci\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}c_i は絶対収束し,その値は ∑i=1∞ci=∑i=1∞ai∑i=1∞bi \sum_{i=1}^{\infty}c_i=\sum_{i=1}^{\infty}a_i\sum_{i=1}^{\infty}b_i となります。

畳み込みについては合成積(畳み込み)の意味と応用3つをどうぞ。

絶対収束と聞くと「絶対に収束」っぽいですが「絶対値を取っても収束」という意味です。