複素数の対数関数とiのi乗の主値が実数であること
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複素数の対数関数と指数関数について解説します。
後半では虚数単位 の 乗の計算もしてみます。
複素数の指数関数・対数関数
複素数の指数関数・対数関数
この記事では は実数, は整数とします。
任意の複素数 に対して,ネイピア数 を底とする指数関数は以下を満たす:
- これは複素数の指数関数の定義とみなすこともできますし,マクローリン展開による定義 から証明できる性質とみなすこともできます。
- 詳細は,オイラーの公式と複素指数関数 および e^xのマクローリン展開,三角関数との関係 を参照してください(以下で用いる指数法則 も証明しています)。
上記の「複素数の指数関数」の逆関数として, を底とする複素対数関数を定義したくなります。
が与えられたときに となるような を の対数とみなし, と書く。
しかし, を与えたときに複素数 は一意には決まりません!
について考える。
を満たす を探す。まず,上記の複素指数関数の定義より が一つの解であることが分かる。しかし, の整数倍を加えても の値は変わらない。 なぜなら,
よって, は全て解となる。
よって, は一つに決まらず, ( は任意の整数)となる。
複素数の対数を実数の対数で表す
複素数の対数を実数の対数で表す
さきほど について考えたことを一般の複素数で考えると,以下のことが分かります。
一般に, でない複素数 に対してその対数は,
ただし は複素数 の絶対値, は偏角です。→複素数平面における極形式と回転
- は正の実数なので, は高校数学から使っている対数関数として問題なく定義できます。
- 偏角 としては の整数倍の任意性があるために には無限個の複素数が対応してしまいます。
多価関数,主値
多価関数,主値
繰り返しになりますが, には無限個の複素数が対応します。
このように,一つの値を入れたときに複数の値を返す関数を多価関数と言います。複素対数関数は多価関数です。
しかし,値がいくつも(複素対数関数の場合無限個)返ってくると困るので一つに制限したいことがあります。
そこで,例えば偏角を に制限することで の中から一つ代表のものを取り出すことができます。
この の中での代表のものを主値と言い, と書きます。
であったが,主値は虚部が より大きくて 以下のものである。よって,
一般の複素数のベキ
一般の複素数のベキ
複素対数関数を用いて,一般の複素数の複素数乗を定義できます:
でない複素数 と任意の複素数 に対して,
と定義する。
- の複素数乗と,複素対数関数は定義されているので右辺は計算できます。その値を と定義するのです。
- 実数の場合には であることからも(覚えておきたい対数(log)の応用公式4点セットの一つ目参照)自然な定義です。
- 複素数の対数関数が多価関数であったので も多価関数です。
- 複素対数関数の主値を用いることで の主値を考えることができます。
iのi乗
iのi乗
これにて の 乗を計算することができます。なんと の 乗(の主値)は実数です!
の 乗の主値を求める。
まず,定義より
また,さきほどの例から の主値は である。
以上から, の主値は
これは実数( くらい)!
の 乗が0.2くらいだなんてイメージわかないですよねえ。