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一般相対論のための派生

更新日時 2021/03/28

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一般相対性理論に本格的に入る前に,いくつか定義を確認しておきたいものがあります。分野としては,力学や特殊相対論に割り振られるものですが,一般相対性理論の構築に直結する重要な話ですので,ここに入れることにしました。

目次
  • エネルギー・運動量テンソル

  • Newtonの重力場方程式

エネルギー・運動量テンソル

→相対論的力学の議論により,質点に対し, E=cp2+(mc)2 E = c\sqrt{p^2 + (mc)^2} ここで,p=mγv\boldsymbol{p} = m\gamma \boldsymbol{v} であるから, E=c(mγv)2+(mc)2=mc(γv)2+c2=mγc2\begin{aligned} E &= c\sqrt{(m\gamma v)^2 + (mc)^2}\\ &= mc\sqrt{(\gamma v)^2 + c^2}\\ &= m\gamma c^2 \end{aligned} このことから,静止しているとき E=mc2E = mc^2 に見えていたエネルギーは,速度 vv で動くと E=mγc2E = m\gamma c^2 になって見えると言えます。

これは質点以外にも言えるはずです。連続的に質量が分布する空間において,静止している密度に対し,エネルギー密度ε=ρc2\varepsilon = \rho c^2 に見えていたとき,その密度が速度 vv で動くと,ε=ργc2\varepsilon = \rho \gamma c^2 に見えるはずです。

ただ,ローレンツ収縮により,進行方向 1γ\dfrac{1}{\gamma} 倍に縮むので,体積は γ\gamma 倍増えます。よって,エネルギー密度は ε=ργ2c2(1) \varepsilon = \rho\gamma^2 c^2 \tag{1} に見えるはずです。

運動量密度についても同じことが言えます。π=ρv\pi = \rho v は速度 vv で動いている時, π=ργ2v(2) \pi = \rho \gamma^2 v \tag{2} に見えるはずです。

(1),(2)(1),(2) について,これらは4元速度を利用すると簡単な形で表せます。 ε=ρu0u0πx=ρu0u1×1cπy=ρu0u2×1cπz=ρu0u3×1c\begin{aligned} \varepsilon &= \rho u^0 u^0\\ \pi_x &= \rho u^0 u^1 \times \dfrac{1}{c}\\ \pi_y &= \rho u^0 u^2 \times \dfrac{1}{c}\\ \pi_z &= \rho u^0 u^3 \times \dfrac{1}{c} \end{aligned} ここで,π\pi についている 1c\dfrac{1}{c} はエネルギーと運動量の次元合わせのためにつけられているものです。特に意味はないと考えて良いでしょう。

このことから,新たなテンソルを定義します。

ある連続な物理系の4元速度 uμu^\mu,その対象が静止している系で観察した密度が ρ0\rho_0 とするとき,エネルギー・運動量テンソル とよばれる量を以下に定義します(節の前半の推論は完全な議論に基づくわけではないです。単にエネルギー・運動量テンソルがどのように考え出されたのかの一例を示しただけであり,定義だけを認めれば良いです。ただ,Einsteinの重力場方程式にも登場するような本質的なテンソルであるので,定義だけを認めれば良い,というのはあまりにも味気ないと思い推論的な考察を載せました)。 Tμν=ρ0uμuν T^{\mu\nu} = \rho_0 u^\mu u^\nu この量は定義から明らかに(2,0)テンソルです。これを成分ごとに計算すると, Tμν=(εcπxcπycπzcπxcπycπz) T^{\mu\nu} = \left(\begin{array}{cccc} \varepsilon & c\pi_x & c\pi_y & c\pi_z\\ c\pi_x & * & * & *\\ c\pi_y & * & * & *\\ c\pi_z & * & * & *\\ \end{array}\right) ちなみに,* の部分は古典物理的には応力テンソルを表します。ここからの議論には関係ないので省略しますが,気になる方は流体力学の教科書等を参照してください。

Newtonの重力場方程式

位置 y\boldsymbol{y} にある質量 MM の質点が位置 x\boldsymbol{x} につくる重力ポテンシャルは,古典力学では, ϕ(x)=GMxy \phi(\boldsymbol{x}) = - \dfrac{GM}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|} と表せました。では質点が複数になり,yi\boldsymbol{y_i} には質量 Mi  (i=1,2,,N)M_i ~~(i = 1,2,\cdots, N) の質点があるとします。このとき,x\boldsymbol{x} における重力ポテンシャルは ϕ(x)=i=1N(GMixy) \phi(\boldsymbol{x}) = \sum_{i = 1}^{N} \left(-\dfrac{GM_i}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|}\right) で表せます。質量分布が連続的になった場合は,以下のようになります。 ϕ(x)=Gρ(y)xydV(1) \phi(\boldsymbol{x}) = - \int \dfrac{G\rho(\boldsymbol{y})}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|}dV \tag{1} ここで dVdVy\boldsymbol{y} によって位置が指定される微小体積です。ここで一般に,ベクトル解析の定理として以下のようなものがあります:

定理

R3\mathbb{R}^3 の領域 VV と,その外で0になる関数 f(x)f(\boldsymbol{x}) に対して, g(x)=14πVf(y)xy g(\boldsymbol{x}) = \dfrac{1}{4\pi}\int_V \dfrac{f(\boldsymbol{y})}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|} Poisson方程式2g(x)=f(x) \nabla^2 g(\boldsymbol{x}) = -f(\boldsymbol{x}) の特殊解である。

このことを利用すると, 2ϕ(x)=4πG×2{14πVρ(y)xy}=4πG×(ρ(x))=4πGρ(x)\begin{aligned} \nabla^2 \phi(\boldsymbol{x}) &= -4\pi G \times \nabla^2 \left\{\dfrac{1}{4\pi}\int_V \dfrac{\rho(\boldsymbol{y})}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|}\right\}\\ &= -4\pi G \times (-\rho(\boldsymbol{x}))\\ &= 4\pi G \rho(\boldsymbol{x}) \end{aligned} よって, 2ϕ(x)=4πGρ(x) \nabla^2 \phi(\boldsymbol{x}) = 4\pi G \rho(\boldsymbol{x}) が成立します。

この式を,Newtonの重力場方程式といいます。ちなみに,この方程式を,無限遠で ϕ0\phi \to 0 となるという境界条件を入れて解けば, 解は式 (1)(1) に限られることが数学的に知られています。

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