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デルタ関数でポアソン方程式の特殊解・境界条件下の解の一意性を導出

更新日時 2021/05/15
ポアソン方程式

R3\mathbb{R}^3 の領域 VV と,既知の関数 f(x)f(\boldsymbol{x}) に対して, 2g(x)=f(x) \nabla^2 g(\boldsymbol{x}) = -f(\boldsymbol{x}) ポアソン方程式(英:Poisson Equation)と呼ぶ。

ポアソン方程式(ポアッソン方程式と呼ばれることもあります)は,物理学において頻出する微分方程式です。まずは,ポアソン方程式の解の一つを求めます。その後,「境界条件」と呼ばれる条件が仮定されているもとでは,ポアソン方程式の解は一意に定まることを確認します。

議論の際には「デルタ関数」という道具を使います。これは量子力学の体系づけでも大いに使われる便利な道具です。これについても説明します。

目次
  • ディラックのデルタ関数の定義

  • ディラックのデルタ関数の性質

  • ポアソン方程式の特殊解を導出する

  • 境界条件のもとでポアソン方程式の解は一意

  • ラプラス方程式

ディラックのデルタ関数の定義

デルタ関数は以下のように定義される関数です。

ディラックのデルタ関数(一次元)

実数 xx に対して, {δ(x)={0(x0)(x=0)δ(x)dx=1 \begin{cases} \delta (x) = \begin{cases} 0 & (x \neq 0)\\ \infty & (x = 0) \end{cases}\\ \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \delta(x) dx = 1 \end{cases} という性質をもつ関数 δ(x)\delta (x) をデルタ関数という。

デルタ関数はとても「尖った」関数です。例えば以下のような関数を想像するといいでしょう。

デルタ関数のイメージ

上図において,ε0\varepsilon \to 0 の状況をとったものがデルタ関数です。

ちなみに,デルタ「関数」と呼んでいますが,実は数学的には「超関数」と呼ばれ,関数とは別のものとして分類されています。数学上では関数として定義することができないようです(まあ,\infty という値をもつ,なんていい加減なことは数学者はやらなそうです)。

上記のデルタ関数は一次元でのものでしたが,同様に三次元のデルタ関数も作ることができます。

ディラックのデルタ関数(三次元)

三次元ベクトル r\boldsymbol{r}R3\mathbb{R}^3 の全空間 VallV_{\text{all}} に対して, {δ(r)={0(r0)(r=0)Vallδ(r)dV=1 \begin{cases} \delta (\boldsymbol{r}) = \begin{cases} 0 & (\boldsymbol{r} \neq 0)\\ \infty & (\boldsymbol{r} = 0) \end{cases}\\ \displaystyle \int_{V_{\text{all}}} \delta(\boldsymbol{r}) dV = 1 \end{cases} という性質をもつ関数 δ(x)\delta (x) をデルタ関数という。

ディラックのデルタ関数の性質

デルタ関数には多くの面白い性質がありますが,ここでは必要になる性質だけを紹介します。

性質1

2(1r)=4πδ(r) \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) = -4\pi \delta (\boldsymbol{r})

これは証明が少し大変です。頑張って計算していきましょう。

x(1r)=x(1x2+y2+z2)=xr3\begin{aligned} \dfrac{\partial{}}{\partial{x}}\left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) &= \dfrac{\partial{}}{\partial{x}}\left(\dfrac{1}{\sqrt{x^2 + y^2 + z^2}}\right)\\ &= -\dfrac{x}{\|\boldsymbol{r}\|^3} \end{aligned} より, 2x2(1r)=3x2r51r3\begin{aligned} \dfrac{\partial^2}{\partial x^2} \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) &= 3\dfrac{x^2}{\|\boldsymbol{r}\|^5} - \dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^3} \end{aligned} が成立する。これより, 2(1r)=3x2r51r3+3y2r51r3+3z2r51r3=0\begin{aligned} \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) &= 3\dfrac{x^2}{\|\boldsymbol{r}\|^5} - \dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^3} + 3\dfrac{y^2}{\|\boldsymbol{r}\|^5} - \dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^3} + 3\dfrac{z^2}{\|\boldsymbol{r}\|^5} - \dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^3}\\ &= 0 \end{aligned}

ただし,これは r0\boldsymbol{r} \neq 0 のときにのみ成立するものであるから,0\boldsymbol{0} であるときのことを別に考える必要がある。

2(1r)\nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) を全空間で体積積分すると, Vall2(1r)dV=Vall(1r)dV\begin{aligned} \int_{V_{\text{all}}} \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) dV &= \int_{V_{\text{all}}} \nabla \cdot \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) dV \end{aligned} ここで,ガウスの発散定理を利用すると, Vall(1r)dV=Sall(1r)ndS \int_{V_{\text{all}}} \nabla \cdot \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) dV = \int_{S_{\text{all}}} \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) \cdot \boldsymbol{n} dS ただし,SallS_{\text{all}}VallV_{\text{all}} の表面を表す閉曲面である。ここで,Sother,SoriginS_{\text{other}}, S_{\text{origin}} を定義する。SSSother,SoriginS_{\text{other}}, S_{\text{origin}} に分割することを考える。以下の画像を見よ。

性質1の証明

OO を含む部分を SoriginS_{\text{origin}}OO を含まない部分を SotherS_{\text{other}} としている。SotherS_{\text{other}} はとても微小な丸型フラスコのような形をしている。ただ,筒状になっている部分は,微小な球状のところよりもさらに細く,球状の部分の面積に対して筒状の部分がさらに微小であるような場所である。

(1r)=rr3 \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) = \dfrac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^3} より, Sall(1r)ndS=Sother(1r)ndSSorigin(1r)ndS=Sotherを境界に持つ領域2(1r)dVSoriginrr3ndS=Sotherを境界に持つ領域0dV1r2×4πr2=4π\begin{aligned} \int_{S_{\text{all}}} \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) \cdot \boldsymbol{n} dS &= \int_{S_{\text{other}}} \nabla \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) \cdot \boldsymbol{n} dS - \int_{S_{\text{origin}}} \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) \cdot \boldsymbol{n} dS\\ &= \int_{S_{\text{other}} \text{を境界に持つ領域}} \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) dV - \int_{S_{\text{origin}}} \dfrac{\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^3} \cdot \boldsymbol{n} dS\\ &= \int_{S_{\text{other}} \text{を境界に持つ領域}} 0 \quad dV - \dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|^2} \times 4\pi \|\boldsymbol{r}\|^2 = -4\pi \end{aligned} Vall2(1r)dV=4π(1) \therefore \int_{V_{\text{all}}} \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) dV = -4\pi \tag{1} ここで,デルタ関数の定義より, Vall(4π)δ(r)dV=4π \int_{V_{\text{all}}} (-4\pi) \delta(\boldsymbol{r}) dV = -4\pi であるから,式 (1)(1) における被積分関数はデルタ関数と見なすことができ, 2(1r)=4πδ(r) \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r}\|}\right) = -4\pi\delta(\boldsymbol{r})

r\boldsymbol{r} をずらせば,

2(1rr)=4πδ(rr) \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{r'} - \boldsymbol{r}\|}\right) = -4\pi\delta(\|\boldsymbol{r'} - \boldsymbol{r}\|)

が成立します。この式がよく使われます。

性質2

f(x)δ(xa)dx=f(a) \int_{-\infty}^{\infty} f(x) \delta(x-a) dx = f(a)

感覚的には成立しておいて欲しい性質です。これが正しいことが証明されます。証明には,一番最初に紹介した ε\varepsilon を使った表現を利用します。

f(x)f(x) の原始関数を F(x)F(x) として, f(x)δ(xa)dx=limε0aε2a+ε2f(x)εdx=limε0F(a+ε2)F(aε2)ε=f(a)\begin{aligned} \int_{-\infty}^{\infty} f(x) \delta(x-a) dx &= \lim_{\varepsilon \to 0} \int_{a - \frac{\varepsilon}{2}}^{a + \frac{\varepsilon}{2}} \dfrac{f(x)}{\varepsilon} dx\\ &= \lim_{\varepsilon \to 0} \dfrac{F\left(a + \frac{\varepsilon}{2}\right) - F\left(a - \frac{\varepsilon}{2}\right)}{\varepsilon}\\ &= f(a) \end{aligned}

以下で実際に,この性質の三次元版:

f(r)δ(rr)d3r=f(r) \int_{-\infty}^{\infty} f(\boldsymbol{r}) \delta(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r'}) d^3 \boldsymbol{r} = f(\boldsymbol{r'})

を利用します。ここで,d3rd^3\boldsymbol{r}dVdV と同じ意味を表します。r\boldsymbol{r'} という変数も登場しているため,どの変数で積分すればよいかわからなくなることを避ける目的で利用しています。

この三次元の式自体は証明していません。単なる拡張としての紹介です。三次元版のちゃんとした証明はやや面倒なので,機会があれば別の記事で紹介しようと思います。

ポアソン方程式の特殊解を導出する

ポアソン方程式の特殊解

R3\mathbb{R}^3 の全領域 VallV_{\text{all}} と,既知の関数 f(x)f(\boldsymbol{x}) に対して, 2ϕ(x)=14πVallf(y)xyd3y \nabla^2 \phi(\boldsymbol{x}) = -\dfrac{1}{4\pi}\int_{V_{\text{all}}}\dfrac{f(\boldsymbol{y})}{\|\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}\|} d^3\boldsymbol{y} はポアソン方程式を満たす解となる。

前節までにみた式を利用して証明してみましょう。

2G(x)=δ(x) \nabla^2 G(\boldsymbol{x}) = \delta(\boldsymbol{x}) を満たす関数 G(r)G(\boldsymbol{r}) を考える。実際には, 2(1yx)=4πδ(yx) \nabla^2 \left(\dfrac{1}{\|\boldsymbol{y} - \boldsymbol{x}\|}\right) = -4\pi\delta(\|\boldsymbol{y} - \boldsymbol{x}\|) が成立するので,G(x)G(\boldsymbol{x}) の候補として G(x)=14π1yx G(\boldsymbol{x}) = -\dfrac{1}{4\pi}\dfrac{1}{\|\boldsymbol{y} - \boldsymbol{x}\|} を取ることができる。

G(x)G(\boldsymbol{x}) に対して, 2G(yx)=δ(yx) \nabla^2 G(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x}) = \delta(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x}) が成立する。両辺に f(y)f(\boldsymbol{y}) をかけ,y\boldsymbol{y} で体積積分すれば, Vallf(y)2G(yx)d3y=Vallf(y)δ(yx)d3y\begin{aligned} \int_{V_{\text{all}}} f(\boldsymbol{y}) \nabla^2 G(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x}) d^3 \boldsymbol{y} &= \int_{V_{\text{all}}} f(\boldsymbol{y})\delta(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x})d^3 \boldsymbol{y} \end{aligned} となる。ここでデルタ関数の性質を用いれば, 2Vallf(y)G(yx)d3y=f(x) \nabla^2\int_{V_{\text{all}}} f(\boldsymbol{y}) G(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x}) d^3 \boldsymbol{y} = f(\boldsymbol{x}) よって, Vallf(y)G(yx)d3y \int_{V_{\text{all}}} f(\boldsymbol{y}) G(\boldsymbol{y}-\boldsymbol{x}) d^3 \boldsymbol{y} はポアソン方程式の解であり,G(x)G(\boldsymbol{x}) の候補を代入すれば, ϕ(x)=14πVallf(y)yxd3y \phi(\boldsymbol{x}) = -\dfrac{1}{4\pi}\int_{V_{\text{all}}} \dfrac{f(\boldsymbol{y}) }{\|\boldsymbol{y} - \boldsymbol{x}\|} d^3 \boldsymbol{y} が解であることがわかる。

境界条件のもとでポアソン方程式の解は一意

領域 VV の境界 SS 上で,

ϕ1(x)=ϕ2(x)(xS) \phi_1(\boldsymbol{x}) = \phi_2(\boldsymbol{x}) \quad\quad (x \in S) が成立し,ϕ1(x),ϕ2(x)\phi_1(\boldsymbol{x}),\phi_2(\boldsymbol{x}) はポアソン方程式の解であるとします。

ここで, U(x)=ϕ1(x)ϕ2(x)(xV) U(\boldsymbol{x}) = \phi_1(\boldsymbol{x}) - \phi_2(\boldsymbol{x}) \quad\quad (x \in V) を定義します。このとき, {2ϕ1(x)=f(x)(xV)2ϕ2(x)=f(x)(xV) \begin{cases} \nabla^2 \phi_1(\boldsymbol{x}) = -f(\boldsymbol{x}) & (x \in V)\\ \nabla^2 \phi_2(\boldsymbol{x}) = -f(\boldsymbol{x}) & (x \in V) \end{cases} より, 2U(x)=2ϕ1(x)2ϕ2(x)=0(xV)\begin{aligned} \nabla^2 U(\boldsymbol{x}) &= \nabla^2 \phi_1(\boldsymbol{x}) - \nabla^2 \phi_2(\boldsymbol{x})\\ &= 0 \quad\quad (x \in V) \end{aligned} が成立します。

ガウスの発散定理より, V(UU)dV=S(UU)ndS \int_V \nabla \cdot (U \nabla U) dV = \int_S (U\nabla U) \cdot \boldsymbol{n}dS UU の定義から xSx \in S のとき, U=0U = 0 であるから, V(UU)dV=S(UU)ndS=0 \int_V \nabla \cdot (U \nabla U) dV =\int_S (U\nabla U) \cdot \boldsymbol{n}dS = 0 となります。この式の最左辺について, V(UU)dV=V((U)2+U2U)dV=V(U)2dV+U2UdV=V(U)2dV\begin{aligned} \int_V \nabla \cdot (U \nabla U) dV &= \int_V \left((\nabla U)^2 + U\nabla^2 U\right) dV\\ &= \int_V (\nabla U)^2 dV + \int U\nabla^2 U dV\\ &= \int_V (\nabla U)^2 dV \end{aligned} と変形できるので, V(U)2dV=0 \int_V (\nabla U)^2 dV = 0 とできます。積分後の値が 00 となるためには, U=0(xV) \nabla U = \boldsymbol{0} \quad\quad (x \in V) この式より,UUxVx \in V の中で UU は一定であることがわかります。

境界条件より,U=0(xS)U = \boldsymbol{0} \quad (x \in S) であるから,xVx \in V においても U=0U = 0 が成立します。

つまり,xVx \in V において, ϕ1(x)=ϕ2(x) \phi_1(\boldsymbol{x}) = \phi_2(\boldsymbol{x}) が成立することがわかりました。

ラプラス方程式

ポアソン方程式の右辺の関数が常に 00 であるような方程式のことをとくにラプラス方程式と呼びます。 これもポアソン方程式同様,面白い議論がいろいろあります。

特殊解を求めるのは大変ですが,人生で一度は紙に書いて計算しましょう!

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