方程式を解く数学オリンピックの問題
JMOの予選をはじめ,数学オリンピックでは(連立)方程式を解く問題がたまに出題されます。
このページで紹介する問題は,普通の連立方程式と違い機械的に解くことはできません。いずれも係数の特殊性を利用して解くので,問題の構造を見出す必要があります。
方程式を解く問題のコツ
方程式を解く問題のコツ
連立方程式を解く問題では一文字ずつ消去していくのが定番ですが。数学オリンピックレベルの問題はそれだけではうまくいかないことが多いです。
なぜなら,方程式が線形でない(次数が2以上の項がある)場合が多く,簡単に文字を消去できないからです。
そして,このようなタイプの問題は,以下の考え方で突破できることが多いです。
なら は全て
より一般的には,「方程式 を解きたいときに絶対不等式 を示すことができればその等号成立条件から を求めることができる」というテクニックです。
これだけではピンとこないと思います。いろいろな例を紹介しますので,上記の考え方をマスターしてください。
方程式
を解きたいが,絶対不等式
が成立し,等号成立するのは のみなのでこれが唯一の解。
実はさっきの方程式を変形(平方完成)すると,
となるので, を解けば良い。
解は
この例で分かるように,二乗の和に変形する段階(絶対不等式が使える形にする段階)が一番難しい部分です。
では,数オリの過去問を3問ほど紹介します。
2006年日本数学オリンピック予選第5問
2006年日本数学オリンピック予選第5問
次の連立方程式を解け:
二次式なので1文字ずつ消去するのは厳しそうです。 つの式をうまく組み合わせて二乗の和 の形を作れないか考えてみてください。
つの式を辺々加える:
これを平方完成するとなんとうまくいく!
よって, が必要条件。
実際これは問題の つの式を満たしているので唯一の解である。
国際数学オリンピックの問題
国際数学オリンピックの問題
1979年国際数学オリンピックイギリス大会の第5問です。
から に関する次の連立方程式が非負の解を持つような実数 の値を全て求めよ。
これも二乗の和に持っていくことを目標にできれば比較的簡単な問題です。
第一式の 倍,第二式の 倍,第三式を足し合わせると,右辺は となり,左辺は,
となり二乗の和っぽくなる。
あとは簡単。これが に等しい条件は
「 のとき 以外が となる。
のとき 以外が となる。
以下同様に のとき 以外が となる。
上記のいずれでもないとき から まで全て となる」
上記の パターンが必要条件。
実際 のとき でそれ以外を とすればもとの方程式の解となる。
また,最後のパターンは のときの解である,
以上から答えは, の 通り。
シュワルツの不等式を用いた別解
シュワルツの不等式を用いた別解
上記の問題のエレガントな別解を紹介します。絶対不等式を用いるという根本的な考え方は上記の解答と同じですが,こちらはシュワルツの不等式を用います。
シュワルツの不等式より,
ところが問題の方程式が解を持つとき,左辺も右辺も となるので上記の不等式で等号が成立する。あとはシュワルツの不等式の等号成立条件を丁寧に考えると解が得られる。
JMO2001予選第8問
JMO2001予選第8問
平方の和 を利用して解く方程式ではありませんが,方程式を解く数オリの問題ということで紹介します。
2つの方程式:
をともに満たす実数 を全て求めよ。
残念ながら は解ではないので因数定理は使えません。ここでは多項式の割り算を用います!
一つ目の方程式の左辺を ,二つ目の方程式の左辺を とおく。
を で割ると,
となる。 のとき が必要。これを満たす実数は のみである。実際,代入して確認してみると となる。
数学オリンピックの問題を解くにはテクニックも発想力もどちらも必要になります。
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