一般相対性理論における主原理

←前の記事 後の記事→

一般相対性理論における軸となる,「等価原理」「一般相対性原理」「Einsteinの重力場方程式」という3つの原理について解説します。

一般相対性理論における原理


一般相対性理論は以下の3つの原理を軸に構成していきます。

等価原理

任意の点において局所慣性系が存在して,そこで成立する特殊相対論的な物理法則を,一般座標に座標変換したものは,成立する。

一般相対性原理

全ての物理法則は,いかなる座標系を基準にとっても,全く同じ形式で表現される。そのために,微分 xμ\dfrac{\partial{}}{\partial{x^\mu}} は共変微分 μ\nabla_\mu で置き換えられるものとする。

Einsteinの重力場方程式

Rμν12gμνR=8πGc4TμνR_{\mu\nu} - \dfrac{1}{2}g_{\mu\nu}R = \dfrac{8\pi G}{c^4} T_{\mu\nu} が成立する。

昔から,運動方程式に登場する慣性質量 mmm_mと,重力の大きさの比例係数である重力質量 mgm_g は,比が一定である,つまり単位をうまくあわせれば, mm=mgm_m = m_g であることが実験的に知られていました。 例えば,エレベーターがあって,エレベーターの中の観測者が,ボールを静かに離すことを考えます。観測者は,ボールが下向きに自由落下 することを観測しました。このことから観測者は,エレベーターは静止していてボールが重力をうけて自由落下したのだ,と考えることもできるし, 重力は存在しなくてエレベーターが上向きに加速度 gg で運動しているため下向きの慣性力を受けてボールは落下したのだと考えることもできます。 エレベーターの中の人からしたら,これらは区別しようがありません。 このように理論上,重力と慣性力とは区別して議論できても,慣性質量と重力質量がどうやら等しいために,実験では互いに互いを区別することができませんでした。

Einsteinはこれを基本原理として扱うことにしてみました。つまり,Einsteinは理論上慣性力と重力は同じものとして扱うことにしたのです。

そしてEinsteinはさらに議論を進めます。あらゆる点において重力は様々な方向に働いていますが,その点の近傍で見れば,重力は一定として扱えるはずです。 では,重力と慣性力の和が0になるように系をとれば,他に力がないとき,「静止している物体は静止し続け,運動している物体は等速度運動を 持続する」ような座標系になるはずです。これを特殊相対論では慣性系と呼びました。

特殊相対論においては,慣性系しか扱っていませんでした。 注意深い読者の中には,「特殊相対論では慣性系同士には面白い関係があることはわかったが,本当に慣性系なんてものはこの世に存在するのだろうか」と考えた方が いたかもしれません。Einsteinはこの疑問にこう答えました。

「慣性系はあらゆる点に存在している!」

慣性系はどこにあるのだろう,と探すのではなく,自分で作ってしまう,というのが天才の発想です。 重力と慣性力が打ち消し合うようにとられた系を局所慣性系とよびます。局所慣性系は慣性系ですから,特殊相対論で論じた法則は全て成立します。 等価原理(ここでは一般に「強い等価原理」と呼ばれるものを採用しています)により,この法則たちを座標変換すれば, その座標変換後の慣性系でない系でも法則が成立している,ということを教えてくれています。等価原理は,今まで特殊相対論で議論したことを無駄にしなくて良い, 特殊相対論から一般相対論に素直に拡張して良いということを主張しています。

では,慣性系と非慣性系の座標変換とは何でしょうか。

あるテンソルについて,座標変換することを考えます。uμuμu^\mu \to u^{\mu'} という座標変換を考えます。 uμ,uμu^\mu, u^{\mu'} は曲がった空間であっても全く構いません。このとき,テンソルの座標変換は,定義から Tμν=xμxμxνxνTμν T^{\mu'\nu'} = \dfrac{\partial x^{\mu'}}{\partial x^{\mu}}\dfrac{\partial x^{\nu'}}{\partial x^{\nu}} T^{\mu\nu} というように表されるはずです。これは簡単です。

では,スカラーの微分について,座標変換することを考えます。これも簡単で, Txμ=Txμxμxμ \dfrac{\partial{T}}{\partial{x^\mu}} = \dfrac{\partial{T}}{\partial{x^{\mu'}}}\dfrac{\partial x^{\mu'}}{\partial x^{\mu}} が成立します。よってスカラーの微分は一般の座標変換に対してテンソルです。

問題になるのは,ベクトルの微分です。一般に Aμuσ=uσuσuμuμAμuσ \dfrac{\partial{A^\mu}}{\partial{u^\sigma}} = \dfrac{\partial{u^{\sigma'}}}{\partial{u^\sigma}}\dfrac{\partial{u^\mu}}{\partial{u^{\mu'}}}\dfrac{\partial{A^{\mu'}}}{\partial{u^{\sigma'}}} は成立しません。でも,相対論ではどんな座標でも同じ形の法則を目指して議論を進めてきました。それが一般相対性原理の主張の前半にはあらわれています。 このままでは,ベクトルの微分が法則に出てきたとたん,座標変換により形が変わらないという要請を守ることができません。

ここで,「共変微分」の存在を思い出してください。共変微分はテンソルであり,しかも特殊相対論的な設定,つまり計量テンソルが定数であるような平な空間においては, 曲率テンソルは0になるので,共変微分は普通の微分と等しくなるのでした。このことから,微分は共変微分に置き換えることにすればよいのではないでしょうか。 これは特殊相対論の議論に矛盾を生じさせることなく,一般の座標系に拡張できる,とても自然な拡張と言えるでしょう(テンソル的な性質をもっており, 特殊相対論の議論に矛盾を生じさせないような 微分の定義が他にないことは証明していません。ただ,とても自然でしかもわかりやすく便利な万人受けする前提だと考えるため,これを原理として採用しています。 「置き換え仮定」などと呼ばれることがあるようです)。

最後の原理については,Einsteinがいきなり思いついた訳ではなく,古典力学的な極限をとったときのことを考えて導出しています。 これについてはEinsteinの重力場方程式の節で議論します。

とにかく一般相対性理論ではこの3つを認めれば,議論を進めることができます。

←前の記事 後の記事→