分母の有理化の方法と問題例6問(中学から高校まで)
のように,分母を有理数にする変形を分母の有理化と言います。
分母の有理化について,簡単な例題から難しい例題まで詳しく解説します。
中学生や基本からおさらいしたいという方は「分母のルートの外し方()」までを主に読むことをおすすめします。
高校生以上の方でより発展的な内容を学びたい方は,主に「分母の有理化(分母が2項の場合)」以降を読むことをおすすめします。
分母の有理化とは
分母の有理化の基本の考え方
分母のルートの外し方(分母が のとき)
分母の有理化(分母が2項の場合)
分母がさらに複雑な分数の有理化(分母が3項以上の場合)
累乗根が入った式の有理化
分母の有理化とは
という分数について考えます。分母 は無理数です。
分母と分子に同じ数()をかけても値は同じなので, と変形できます。新しくできた分数 の分母 は整数(有理数)です。
このように,分母を有理数にする変形を分母の有理化と言います。例えば,「分母に根号を含む数」を「分母に根号を含まない数」に変形することを,分母を有理化すると言います。
分母を有理化する理由については,分母の有理化や実数化についてに記載しています。
分母の有理化の基本の考え方
分母の有理化の計算にあたり,基本は以下のような考えで進めていくことになります。
- 分母のルートの中身を簡単にして約分する
- 分母のルートを外すよう,分母と分子に同じ数をかける
- 分子のルートの中身を簡単にし,約分する
2番をして良い理由は,冒頭でも述べたとおり,分母と分子に同じ数をかけても分数の値は変わらないためです。
以下で,分母の有理化で用いる方法を3つ紹介します。
分母のルートの外し方(分母が のとき)
分母が である分数は,分母と分子に をかけることで有理化できます。(ただし は整数とします)
例えば,さきほどの では,分母と分子に をかけることで有理化できました:
の分母を有理化せよ。
分母が なので,分母と分子に をかければ有理化できます:
最後に約分できるときは約分するのを忘れないようにしましょう。
分母の有理化(分母が2項の場合)
分母が複雑な場合には,乗法公式を意識して,分母の根号を外すことを考えます。乗法公式については乗法公式(式の展開公式)19個まとめでまとめてありますので,こちらもぜひ参考にしてください。
分母が根号を含む2項の場合は,和と差の展開公式を意識して分母の有理化をします。
分母が のかたちのとき
分母が なら,分母と分子に をかけることで有理化できます。(ただし と は整数または とします)
分母の , が2乗のかたちで現れるため,分母を有理化できるというわけです。
の分母を有理化せよ。
分母が なので,分母と分子に をかければ有理化できます:
ただし途中で という展開公式を使いました。
分母が のかたちのとき
には をかけました。逆に, には をかけることで有理化できます。
を有理化せよ。
分母と分子に をかけると, となります。
分母がさらに複雑な分数の有理化(分母が3項以上の場合)
分母の項が3つ以上の場合も同様に, を使って有理化します。根号を含む2つの項を1つの項と考えて有理化を図ることがポイントになります。
の分母を有理化せよ。
分母分子に をかけて計算すると, になる。計算の詳細は →分母に項が3つある場合の有理化の例1
の分母を有理化せよ。
解決には2通りの方針が考えられます。まず,簡単に計算できる方針を述べます。
分母分子に をかけて頑張る。
次に,愚直に計算する方針を紹介します。こちらの方が計算が大変ですが,反面分母の項数が増えても適用可能という利点も持っています。
分母分子に かけて, を消す。
次に,分母を という形に変形した上で,分母分子に をかけて を消す。最後に を消す。
答えは,
(きたなっ!)
ここまで,分母にルートが入った式の有理化の方法を紹介しました。
累乗根が入った式の有理化
分母にルートでなく,累乗根が含まれるような場合でも,有理化できる場合があります。
分母に三乗根が入った式も,有理化したくなる場合があります。 の三乗根 とは,3乗して になる数のことで,高校数学で習います。
分母が という形の場合,分母分子に をかけることで有理化できます。 乗法公式のうち,
という公式を使って三乗を作り出します。
の分母を有理化せよ。
分母分子に をかけると,
となる。
より一般に, 乗根が入った式の有理化には,因数分解公式(n乗の差,和)を使います。
一応 などの分母も有理化できます。