分母の有理化や実数化について

分母の有理化とは

「分母が無理数である分数」に対して,分母と分子に同じ数をかけて「分母が有理数である分数」にすることを「分母の有理化」ということがあります。

例1

12\dfrac{1}{\sqrt{2}} の分母を有理化したい。

分母と分子に 2\sqrt{2} をかけると,

12=1×22×2=22\dfrac{1}{\sqrt{2}}=\dfrac{1\times\sqrt{2}}{\sqrt{2}\times\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}

例2

42+2\dfrac{4}{2+\sqrt{2}} の分母を有理化したい。

分母と分子に 222-\sqrt{2} をかけると,

42+2=4×(22)(2+2)×(22)=422\dfrac{4}{2+\sqrt{2}}=\dfrac{4\times(2-\sqrt{2})}{(2+\sqrt{2})\times(2-\sqrt{2})}=4-2\sqrt{2}

分母の有理化について,私の意見

分母の有理化について,現時点での私の意見は以下の2つです。

1. 「分母を有理化しろ」と言われたときに,できるようになっておくべき

  • 例えば,52+22=522+22=32\dfrac{5}{\sqrt{2}}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}=\dfrac{5}{2}\sqrt{2}+\dfrac{\sqrt{2}}{2}=3\sqrt{2} のように,有理化を使うことで式をシンプルな形にできる場合があります。

  • 例えば,a+b2a+b\sqrt{2}a,ba,b は有理数)という数全体の集合が,商に関して閉じていることを確認するときにも使えます。つまり,分母の有理化を使うと,a1+b12a2+b22\dfrac{a_1+b_1\sqrt{2}}{a_2+b_2\sqrt{2}}a+b2a+b\sqrt{2} という形で表せることが分かります。

2. 数学の試験の答案において,分母の有理化を強制する合理的な理由は無い

  • 「採点を楽にするための配慮」として,分母の有理化をすると行儀が良いかもしれません。しかし,それ以上の数学的に合理的な理由はありません(少なくとも私は説明できません)。

  • 「分母の有理化をしない方がきれいな場合」もあります(後述)。

分母の有理化をしない方がきれいな場合

以下のような式は「分母を有理化しない方がきれい」と思う人が多いのではないでしょうか。

sin45=12\sin 45^{\circ}=\dfrac{1}{\sqrt{2}}

点と直線の距離公式: d=ax0+by0+ca2+b2d=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}

12+3+5\dfrac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}}

(x)=12x(\sqrt{x})'=\dfrac{1}{2\sqrt{x}}

また,極限を計算するときに,分母ではなく「分子を有理化」することもあります。他にも,π\piee などの無理数が分母にある分数は,そもそも有理化できませんね。

分母の実数化

分母の有理化と似た操作に,分母の実数化があります。 c+dia+bi\dfrac{c+di}{a+bi} の分母分子に abia-bi をかけることで分母を実数化できます。

例えば,

11+i=1×(1i)(1+i)×(1i)=1i2\dfrac{1}{1+i}=\dfrac{1\times(1-i)}{(1+i)\times(1-i)}=\dfrac{1-i}{2}

のようになります。

分母の実数化を使うと「複素数同士の割り算もまた複素数になる」ことがわかります。

「分母を有理化できる場合はしないといけない」という主張を盲目的に信じていたため,無理のある主張をしておりました。複数の方からご指摘をいただき,2020年1月に改めてじっくり考え直し,大幅に修正いたしました。

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