分母の有理化や実数化について
分母の有理化とは
分母の有理化とは
「分母が無理数である分数」に対して,分母と分子に同じ数をかけて「分母が有理数である分数」にすることを「分母の有理化」ということがあります。
の分母を有理化したい。
分母と分子に をかけると,
の分母を有理化したい。
分母と分子に をかけると,
分母の有理化について,私の意見
分母の有理化について,私の意見
分母の有理化について,現時点での私の意見は以下の2つです。
1. 「分母を有理化しろ」と言われたときに,できるようになっておくべき
-
例えば, のように,有理化を使うことで式をシンプルな形にできる場合があります。
-
例えば,( は有理数)という数全体の集合が,商に関して閉じていることを確認するときにも使えます。つまり,分母の有理化を使うと, も という形で表せることが分かります。
2. 数学の試験の答案において,分母の有理化を強制する合理的な理由は無い
-
「採点を楽にするための配慮」として,分母の有理化をすると行儀が良いかもしれません。しかし,それ以上の数学的に合理的な理由はありません(少なくとも私は説明できません)。
-
「分母の有理化をしない方がきれいな場合」もあります(後述)。
分母の有理化をしない方がきれいな場合
分母の有理化をしない方がきれいな場合
以下のような式は「分母を有理化しない方がきれい」と思う人が多いのではないでしょうか。
点と直線の距離公式:
また,極限を計算するときに,分母ではなく「分子を有理化」することもあります。他にも, や などの無理数が分母にある分数は,そもそも有理化できませんね。
分母の実数化
分母の実数化
分母の有理化と似た操作に,分母の実数化があります。 の分母分子に をかけることで分母を実数化できます。
例えば,
のようになります。
分母の実数化を使うと「複素数同士の割り算もまた複素数になる」ことがわかります。
「分母を有理化できる場合はしないといけない」という主張を盲目的に信じていたため,無理のある主張をしておりました。複数の方からご指摘をいただき,2020年1月に改めてじっくり考え直し,大幅に修正いたしました。
Tag:複素数の美しい性質と効果まとめ