定数分離の考え方と例題3問
方程式において,文字定数を片側に集める変形を定数分離と言うことがあります。
定数分離の例. という についての方程式を と変形する。
入試数学の基本的なテクニック「定数分離」について,例題を通じて解説します。
定数分離の応用例1(二次関数・解の条件)
定数分離の応用例1(二次関数・解の条件)
まずは,例題を通じて定数分離とは何か説明します。
についての二次方程式 が 以上の異なる実数解を二つ持つための の条件を求めよ。
より, と のグラフが なる範囲で二つの交点を持つ条件を求めればよい。
図より,求める の範囲は
別解(定数分離を用いない方法):二次方程式の解は解の公式より よって,求める条件は かつ
これを解くと
定数分離の考え方
定数分離の考え方
例題をふまえ、定数分離の考え方を整理します。
文字定数 を含む についての方程式 を考えます。 の値によって方程式の解は変化します。
このとき,方程式を (右辺は でなくても など の簡単な関数ならよい)という式に変形できれば のグラフと のグラフの交点を見ることで解の様子が分かります。
このように「定数分離」することで見通しが良くなることがあります。
定数分離の応用例2(三次関数・解の個数)
定数分離の応用例2(三次関数・解の個数)
についての三次方程式 の異なる実数解の個数を求めよ。
より, と のグラフの交点の数を求めればよい。
のグラフは,
であることに注意すると図のようになる( で極小値 , で極大値 を取る)。
よって,異なる実数解の個数は,
のとき三個
のとき二個
のとき一個
一般に三次方程式を解くのは非常に大変(→カルダノの公式と例題【三次方程式の解の公式】)なので例題1の別解のような方法は通用しません。定数分離の威力が発揮されています。
定数分離の応用例3(不等式)
定数分離の応用例3(不等式)
定数分離の考え方が使えるのは方程式だけではありません。
以上の任意の実数 に対して不等式 が成立するような の範囲を求めよ。
( という条件のもと)与えられた不等式を変形すると,
(*)
よって, の範囲で の最大値を求めればよい。
に注意すると, のとき最大値 を取ることが分かる。
よって,答えは,
別解(逆数を取ると計算がやや楽になる):
をもとの不等式に代入すると が必要であることが分かる。
での条件は(*)の逆数を取ると
この右辺について相加相乗平均の不等式より,
であり,実際 で等号成立。
つまり,求める条件は かつ となり上記の解答と同じ答えを得る。
注:途中で相加相乗平均の不等式の応用〜関数の最小値を求める〜に載っている考え方を使っています。
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT79では,このような問題で計算ミスを減らすためのコツも紹介しています。
例題3は我ながら気に入っています。