四面体の重心の存在証明と応用例
四面体において,頂点と対面の重心を結ぶ四本の線分は一点で交わる。これを四面体の重心という。
四面体に重心が存在することの証明と応用例を解説します。
重心の存在
重心の存在
空間内の四本の線分が一点で交わるというのは非自明な定理です。
どんな四面体にも重心が存在することをベクトルを用いて証明します。
四面体 において,各頂点の位置ベクトルを などとする。
このとき, で表される点 が重心であることを証明する。
三角形 の重心を とし, の位置ベクトルを とする。まず,線分 上に が存在することを示す。
実際,簡単な計算により, が分かるので, は線分 を に内分する。
対称性より, は他の三本の線分上にもあることが分かる。つまり,四本の線分は1点 で交わる。
三角形の重心と比較
三角形の重心と比較
上記の証明から以下のことも分かります。
性質1:四面体の重心の位置ベクトルは,四頂点の位置ベクトルの平均で表される。
性質2:四面体の重心は,頂点と対面の重心を結ぶ線分を に内分する。
これらは三角形の重心の性質を三次元へ拡張したものになっています!(性質1は二次元でも成立し,性質2は二次元の場合,内分比が でした)
応用
応用
四面体の重心について知っていると速攻で解ける例題です!
一辺の長さが の正四面体 の外接球の半径を求めよ。
正四面体 の重心を とする。対称性より,外接球の中心は であるので, の長さを求めればよい。
ベクトルの始点を に選ぶと, より,
ここで,, などを用いて右辺を計算すると, となる。
よって,外接球の半径は,
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT37では,本問の3通りの解法と計算ミスを減らすコツも紹介しています。
四面体の五心
四面体の五心
四面体において
- 外心:外接球の中心です。
- 内心:内接球の中心です。→内接球の半径を求める公式と例題・証明
- 重心:この記事で紹介しました。
- 傍心:傍接球(四面体の各面を含む4枚の平面に接する球のうち内接球と異なるもの)の中心です。4つ存在します。
- 垂心:存在する場合と存在しない場合があります。→直辺四面体(垂心四面体)と24点球の定理
もっと一般の図形で重心を定義することもできます。