高校数学の新課程について

  1. 2010年代の新課程:
    「2012年度入学の高校生、2015年度大学入試」から新課程の内容が適用されます。
  2. 2020年代の新課程:
    「2022年度入学の高校生、2025年度大学入試」から新課程の内容が適用されます。

この記事では,2010年代の新課程(上記1)について紹介します。新学習指導要領と教科書(東京書籍)を参考にしています。

高校数学の新課程の内容

教科書(東京書籍)の各章のタイトルです。赤が新しく追加された内容,紫は移動したものです。

数1:数と式, 集合と論理,二次関数,図形と計量, データの分析

数A:場合の数と確率, 整数の性質,図形の性質

数2:方程式・式と証明,図形と方程式,三角関数,指数関数・対数関数,微分と積分

数B:数列,ベクトル,(確率分布と統計的な推測)

数3:平面上の曲線複素数平面,関数と極限,微分,微分の応用,積分とその応用

数C:削除

  • 数Cが削除されました。行列は消滅,式と曲線は数3に移動しました。
  • 数Aは三つの単元から二つ選択です。センター試験もその形式です。しかし,三つとも重要な単元なので難関大学では普通に出題されると思います(整数は旧課程では教科書に載っていないが今までも出題されていた)。

整数,複素数平面,統計が増えて行列が消えた

・整数の性質が増えた

ユークリッドの互除法とか一次不定方程式とか習います。整数が採用されて嬉しい!

・データの分析が増えた

新課程では統計の比重が大きくなりました。平均,分散,相関係数などを習います。

・複素数平面が増えた

複素数平面は使いこなせるようになるといろいろな図形問題を計算で解くことができます。数オリでも本選以降で活躍する重要な道具です。

・行列が消滅

悲しいですが分量を考えると仕方ありません。旧課程では2×2行列のみでしたが,行列を扱うことで大学の線形代数の準備になっていました。行列は大学に入ってからのお楽しみということで。

・総括

文系の人にとってはデータの分析と整数が増えたのが,理系の人にとってはそれに加えて複素数平面が増えたというのが一番のポイントです。旧課程よりも新課程の方が内容が増えました。ただ,理系の難関大受験者にとっては,本格的に対策しないといけないものに限れば実質 「行列が消えて複素数平面が増えた」ということになります。

細かい変更点

旧課程から新課程への細かい変更点です。

  • 数3の積分で「曲線の長さ」をきちんと扱うようになりました(今までも難関大の入試にはときどき出題されていた)。
  • 集合と論理が数Aから数1に移動しました。二項定理が数Aから数2へ移動しました。二項定理は「場合の数,二項係数」の文脈ではなく「式の展開」の文脈で扱われるようになりました。
  • 新課程では条件付き確率が数学Aで扱われるようになりました(旧課程では数Cの確率)。逆に,数Aで扱われていた期待値は数Bに移動しました。
  • 数学Aの「図形の性質」では新たに作図と空間図形の節が追加されています。

行列か複素数平面かどちらか選べと言われると悩ましいですね。