三角形における距離の二乗の和の公式
三角形 とその重心 ,および任意の点 に対して である。
三頂点からの距離の和を最小化する点はフェルマー点でしたが,二乗和を最小化する点は重心になります!
この事実を3通りの方法で証明します!(座標,ベクトル,初等幾何)
座標を用いた証明
座標を用いた証明
距離の和は座標で扱いにくいですが,距離の二乗和は座標の得意分野です。
,, とおくと任意の点 に対して,
となるので を動かしてこれを最小化する問題を考える。
は の関数と の関数の和になっているのでそれぞれ最小化すればよい。
の部分だけ見ると二次関数なので簡単に最小化できる:
これを最小化する は
となり重心の 座標と一致する。 座標についても同様に証明できる。
ベクトルを用いた証明
ベクトルを用いた証明
次はベクトルです。 をどんどん変形していき上から抑えます。
座標による証明よりも発想力が必要ですが,非常におもしろいです。
ただし,二行目から三行目への変形で を用いた。最終行への変形はベクトルの内積の定義を用いた。
さらにシュワルツの不等式より,
上式の最右辺の二乗
以上 つの不等式を合わせて目標の不等式を得る。
初等幾何による証明
初等幾何による証明
応用問題
応用問題
三角形 と任意の点 に対して, を示せ。ただし は三角形 の面積とする。
※Weitzenböckの不等式と似ていておもしろい不等式です。
この記事の結果より,三角形を固定したとき,左辺は が の重心 と一致するときに最小となる。よって の場合のみ証明すればよい。
ここから,すべてを三角形の辺の長さ で表す方針で解く。
左辺は 三角形の五心と頂点までの距離 より
右辺は ヘロンの公式 の二乗のみで表すバージョンより
ここで,, とおくと、示すべき不等式は
これは 有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+ca より成立する。
ちなみに が正三角形のとき となり等号成立。
初等幾何もきれいですが,二乗の和だとやはり座標が楽で良いですね。