三角形における距離の二乗の和の公式

更新日時 2023/08/04

三角形 ABCABC とその重心 GG,および任意の点 XX に対して AG2+BG2+CG2AX2+BX2+CX2 AG^2+BG^2+CG^2\leqq AX^2+BX^2+CX^2 である。

三頂点からの距離の和を最小化する点はフェルマー点でしたが,二乗和を最小化する点は重心になります!

この事実を3通りの方法で証明します!(座標,ベクトル,初等幾何)

座標を用いた証明

距離の和は座標で扱いにくいですが,距離の二乗和は座標の得意分野です。

証明1

A(xA,yA)A(x_A,y_A)B(xB,yB)B(x_B,y_B)C(xC,yC)C(x_C,y_C) とおくと任意の点 X(x,y)X(x, y) に対して,

f(x,y)=XA2+XB2+XC2=(xxA)2+(xxB)2+(xxC)2+(yyA)2+(yyB)2+(yyC)2\begin{aligned} &f(x,y)\\ &=XA^2+XB^2+XC^2\\ &=(x-x_A)^2+(x-x_B)^2+(x-x_C)^2\\ &\quad +(y-y_A)^2+(y-y_B)^2+(y-y_C)^2 \end{aligned}

となるので XX を動かしてこれを最小化する問題を考える。

f(x,y)f(x, y)xx の関数と yy の関数の和になっているのでそれぞれ最小化すればよい。

xx の部分だけ見ると二次関数なので簡単に最小化できる:

3x22(xA+xB+xC)x+xA2+xB2+xC2 3x^2-2(x_A+x_B+x_C)x+x^2_A+x^2_B+x^2_C

これを最小化する xxx=xA+xB+xC3x=\dfrac{x_A+x_B+x_C}{3}

となり重心の xx 座標と一致する。 yy 座標についても同様に証明できる。

ベクトルを用いた証明

次はベクトルです。 GA2+GB2+GC2GA^2+GB^2+GC^2 をどんどん変形していき上から抑えます。

座標による証明よりも発想力が必要ですが,非常におもしろいです。

証明2

GA2+GB2+GC2=GAundefined(GXundefined+XAundefined)+GBundefined(GXundefined+XBundefined)+GCundefined(GXundefined+XCundefined)=GAundefinedXAundefined+GBundefinedXBundefined+GCundefinedXCundefinedGAXA+GBXB+GCXCGA^2+GB^2+GC^2\\ =\overrightarrow{GA}\cdot (\overrightarrow{GX}+\overrightarrow{XA})+\overrightarrow{GB}\cdot(\overrightarrow{GX}+\overrightarrow{XB})+\overrightarrow{GC}\cdot(\overrightarrow{GX}+\overrightarrow{XC})\\ =\overrightarrow{GA}\cdot \overrightarrow{XA}+\overrightarrow{GB}\cdot \overrightarrow{XB}+\overrightarrow{GC}\cdot \overrightarrow{XC}\\ \leqq GA\cdot XA+GB\cdot XB+GC\cdot XC

ただし,二行目から三行目への変形で GAundefined+GBundefined+GCundefined=0undefined\overrightarrow{GA}+\overrightarrow{GB}+\overrightarrow{GC}=\overrightarrow{0} を用いた。最終行への変形はベクトルの内積の定義を用いた。

さらにシュワルツの不等式より,

上式の最右辺の二乗 (GA2+GB2+GC2)(XA2+XB2+XC2)\leqq (GA^2+GB^2+GC^2)(XA^2+XB^2+XC^2)

以上 22 つの不等式を合わせて目標の不等式を得る。

初等幾何による証明

二乗の和を図形的に解釈するのはけっこう難しいです。二乗の和といえば中線定理です。さらに XA2XA^2 を作り出すためにスチュワートの定理を使います。

証明3

中線定理を用いた証明BCBC の中点を MM とおくと中線定理より,

BX2+CX2=2(BM2+MX2)BX^2+CX^2=2(BM^2+MX^2)

一方,スチュワートの定理より,

AX2×GM+MX2×AG=AM(AG×GM+GX2)AX^2\times GM+MX^2\times AG\\=AM(AG\times GM+GX^2)

重心の性質より AG:GM=2:1AG:GM=2:1 なので,

AX2+2MX2=3(AG×GM+GX2)AX^2+2MX^2=3(AG\times GM+GX^2)

よって,AX2+BX2+CX2=3GX2+2BM2+3(AG×GM)AX^2+BX^2+CX^2=3GX^2+2BM^2+3(AG\times GM)

ここで右辺に注目すると 3GX23GX^2 以外は定数(三角形 ABCABC の形状のみで決まる)なので GX=0GX=0 のとき(すなわち XX が重心と一致するとき)二乗和が最小となることが分かる。

※上記の証明により AX2+BX2+CX23GX2AX^2+BX^2+CX^2-3GX^2XX によらない不変量であることが分かります。

応用問題

問題

三角形 ABCABC と任意の点 XX に対して, AX2+BX2+CX243SAX^2+BX^2+CX^2\geqq\dfrac{4}{\sqrt{3}}S を示せ。ただし SS は三角形 ABCABC の面積とする。

Weitzenböckの不等式と似ていておもしろい不等式です。

証明

この記事の結果より,三角形を固定したとき,左辺は XXABCABC の重心 GG と一致するときに最小となる。よって X=GX=G の場合のみ証明すればよい。

ここから,すべてを三角形の辺の長さ a,b,ca,b,c で表す方針で解く。

左辺は 三角形の五心と頂点までの距離 より AG2+BG2+CG2=a2+b2+c23AG^2+BG^2+CG^2=\dfrac{a^2+b^2+c^2}{3}

右辺は ヘロンの公式 の二乗のみで表すバージョンより 132(a2b2+b2c2+c2a2)(a4+b4+c4)\dfrac{1}{\sqrt{3}}\sqrt{2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)-(a^4+b^4+c^4)}

ここで,x=a4+b4+c4x=a^4+b^4+c^4y=a2b2+b2c2+c2a2y=a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2 とおくと、示すべき不等式は

(a2+b2+c2)292yx3\dfrac{(a^2+b^2+c^2)^2}{9}\geqq\dfrac{2y-x}{3}

x+2y92yx3\dfrac{x+2y}{9}\geqq\dfrac{2y-x}{3}

x+2y6y3xx+2y\geqq 6y-3x

xyx\geqq y

これは 有名不等式a^2+b^2+c^2≧ab+bc+ca より成立する。

ちなみに ABCABC が正三角形のとき x=yx=y となり等号成立。

初等幾何もきれいですが,二乗の和だとやはり座標が楽で良いですね。