三角形の重心座標とその応用

重心座標とは,三角形 ABCABC に対して点 XX がどのあたりにいるのかを表す便利な座標系です!

重心座標の定義

XXxundefined=paundefined+qbundefined+rcundefinedp+q+r\overrightarrow{x}=\dfrac{p\overrightarrow{a}+q\overrightarrow{b}+r\overrightarrow{c}}{p+q+r} を満たすとき,XX の重心座標を,[p,q,r][p,q,r] とする。

直交座標と重心座標

普段用いる直交座標(デカルト座標)は原点を基準に2つの数字 (x,y)(x,y) によって点の位置を指定します。

重心座標では 33ABCABC を基準に 33 つの数字 [p,q,r][p,q,r] によって点の位置を指定します。

例1

重心座標が [1,0,0][1,0,0] で表される点は xundefined=aundefined\overrightarrow{x}=\overrightarrow{a} を満たす点,つまり点 AA です。

例2

重心座標が [1,1,1][1,1,1] で表される点は xundefined=aundefined+bundefined+cundefined3\overrightarrow{x}=\dfrac{\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c}}{3} を満たす点,つまり三角形 ABCABC の重心です。

重心座標では数字を 33 つ使って点の位置を表すので,デカルト座標より冗長な気がします。

しかし,重心座標は各成分を定数倍しても同じ点を表すことが分かるので, 本質的に重要なのは 33 つの数字の比だけです。

(例えば [1,1,1][1,1,1][2,2,2][2,2,2][13,13,13][\tfrac{1}{3},\tfrac{1}{3},\tfrac{1}{3}] も全て重心を表す。)

三角形の五心の重心座標

重心座標のメリット1:五心のデカルト座標は複雑で覚えたくありませんが, 重心座標は美しくて覚えやすい&扱いやすいです。そのため五心が絡んだ問題を座標計算で解くときに威力を発揮します。

→ 三角形の五心の覚えておくべき性質を整理

五心の重心座標

重心: [1,1,1][1,1,1]

内心: [a,b,c][a,b,c]

傍心: [a,b,c],[a,b,c],[a,b,c][-a,b,c],[a,-b,c],[a,b,-c]

垂心: [tanA,tanB,tanC][\tan A,\tan B,\tan C]

外心: [sin2A,sin2B,sin2C]=[a2(a2+b2+c2),b2(a2b2+c2),c2(a2+b2c2)][\sin 2A,\sin 2B,\sin 2C]\\=[a^2(-a^2+b^2+c^2),b^2(a^2-b^2+c^2),c^2(a^2+b^2-c^2)]

a,b,ca,b,c は三角形 ABCABC の各辺の長さ,A,B,CA,B,C は角度を表しています。

重心はよく知られた式ですが,それ以外も全て覚えておくとよいでしょう。

五心の重心座標が上のように表されることは→ベクトルの定番問題の公式(面積比)を用いて簡単に証明できます。

つまり XX の重心座標が [p,q,r][p,q,r] であることと,面積比が XBC:XCA:XAB=p:q:r \triangle XBC : \triangle XCA : \triangle XAB = p:q:r であることは同値なので, 面積比が分かれば重心座標が求まります。

例えば外心を OO とすると OBC:OCA:OAB=R2sin2A:R2sin2B:R2sin2C\begin{aligned} &\triangle OBC : \triangle OCA : \triangle OAB\\ &= R^2\sin 2A:R^2\sin 2B:R^2\sin 2C \end{aligned} が成立することから重心座標が導けます。

内心,垂心,傍心も簡単に導出できるので一度やってみてください!

なお,重心座標の成分のいずれかがマイナスになるときも上記の公式たちは崩れません。その場合,三角形の外側に点があることになります。例えば,AA が鈍角の場合,垂心や外心の第一成分はマイナスになります。これは垂心や外心が三角形の外側に存在することを表しています。

重心座標と外接円の方程式

重心座標のメリット2:重心座標特有の美しい定理が使える。

重心座標 [p,q,r][p,q,r] で表される点が三角形 ABCABC の外接円上にある必要十分条件は, a2qr+b2rp+c2pq=0 a^2qr+b^2rp+c^2pq=0 である。

非常に美しい式です。2014年国際数学オリンピック第4問に使える公式です。→2014年IMO第4問の解説

導出の概略

位置ベクトルの基準として外心 OO を取る。

P[p,q,r]P[p,q,r] の位置ベクトルは paundefined+qbundefined+rcundefinedp+q+r\dfrac{p\overrightarrow{a}+q\overrightarrow{b}+r\overrightarrow{c}}{p+q+r} なので, PP が外接円上にあることは (paundefined+qbundefined+rcundefined)(paundefined+qbundefined+rcundefined)=R2(p+q+r)2 (p\overrightarrow{a}+q\overrightarrow{b}+r\overrightarrow{c})\cdot(p\overrightarrow{a}+q\overrightarrow{b}+r\overrightarrow{c})=R^2(p+q+r)^2 同値である。

これを,

aundefinedaundefined=R2aundefinedbundefined=R2cos2C=R2c22\begin{aligned} \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{a} &= R^2\\ \overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}&= R^2\cos 2C\\ &= R^2-\dfrac{c^2}{2} \end{aligned}

を使って変形すると

a2qr+b2rp+c2pq=0 a^2qr+b^2rp+c^2pq=0

となる。

2016/12/2:外接円の方程式の導出の概略を追記しました。