Gerretsen の不等式と「重心と内心の距離」

三角形において、外接円の半径 RR,内接円の半径 rr,半周長 s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2} の間には、非常に美しい不等式が成り立ちます。

Gerretsen の不等式

任意の三角形に対して 16Rr5r2s24R2+4Rr+3r2 16Rr-5r^2 \leqq s^2 \leqq 4R^2+4Rr+3r^2 が成立する。

左辺も右辺も RRrr だけで表せるのがおもしろいです。

この記事では左辺の証明を紹介します。

重心と内心の距離

Gerretsen の不等式の左辺を証明するために,唐突ですが重心と内心の距離を考えます。

三角形の重心を GG,内心を II とすると,その間の距離は以下で計算できます:

定理

9GI2=s216Rr+5r2 9GI^2 = s^2 - 16Rr + 5r^2

定理を認めたうえで Gerretsen の左辺を証明

距離の二乗は常に非負なので GI20 GI^2 \geqq 0 より s216Rr+5r20 s^2 - 16Rr + 5r^2 \geqq 0 すなわち s216Rr5r2 s^2 \geqq 16Rr - 5r^2

重心と内心の距離の導出

それでは定理を証明します。

証明

定理の左辺と右辺をそれぞれ辺の長さ a,b,ca,b,c で表して一致することを確認する。

まず右辺を考える。S=abc4RS=\dfrac{abc}{4R} およびヘロンの公式を使うと, s=a+b+c2s=\frac{a+b+c}{2} 16Rr=4abcs=8abca+b+c16Rr=\frac{4abc}{s}=\frac{8abc}{a+b+c} r2=(sa)(sb)(sc)sr^2=\frac{(s-a)(s-b)(s-c)}{s} より s216Rr+5r2=(a+b+c)248abca+b+c+10(sa)(sb)(sc)a+b+c\begin{aligned} &s^2-16Rr+5r^2 \\&= \frac{(a+b+c)^2}{4} -\frac{8abc}{a+b+c} +\frac{10(s-a)(s-b)(s-c)}{a+b+c}\end{aligned} ここで sa=a+b+c2s-a=\frac{-a+b+c}{2} などを使うと, 10(sa)(sb)(sc)=54(a+b+c)(ab+c)(a+bc) 10(s-a)(s-b)(s-c) \\= \frac{5}{4}(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c) さらに,通分すると, s216Rr+5r2=(a+b+c)332abc+5((a+b+c)(ab+c)(a+bc))4(a+b+c) s^2-16Rr+5r^2 \\= \frac{(a+b+c)^3-32abc+5\bigl((-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)\bigr)}{4(a+b+c)} 分子を整理して 2a2b+2a2c+2ab2+2ac2+2b2c+2bc2a3b3c39abca+b+c\frac{ 2a^2b+2a^2c+2ab^2+2ac^2+2b^2c+2bc^2-a^3-b^3-c^3-9abc }{a+b+c}

次に左辺を計算する。まず, 3GI2=IA2+IB2+IC2a2+b2+c23 3GI^2=IA^2+IB^2+IC^2-\frac{a^2+b^2+c^2}{3} である(ベクトルで簡単に証明できる。例えば三角形の頂点からの距離の二乗の和は重心で最小になる参照)。よって, 9GI2=3(IA2+IB2+IC2)(a2+b2+c2) 9GI^2=3(IA^2+IB^2+IC^2)-(a^2+b^2+c^2)

である。ここで頂点から五心までの距離公式より IA2=bc(a+b+c)a+b+cIA^2=\frac{bc(-a+b+c)}{a+b+c} などから IA2+IB2+IC2=bc(a+b+c)+ca(ab+c)+ab(a+bc)a+b+c=a2b+a2c+ab2+ac2+b2c+bc23abca+b+c IA^2+IB^2+IC^2 \\= \frac{ bc(-a+b+c)+ca(a-b+c)+ab(a+b-c) }{a+b+c} \\ =\frac{ a^2b+a^2c+ab^2+ac^2+b^2c+bc^2-3abc }{a+b+c}

よって 9GI29GI^2

3(a2b+a2c+ab2+ac2+b2c+bc23abc)a+b+c(a2+b2+c2)=2a2b+2a2c+2ab2+2ac2+2b2c+2bc2a3b3c39abca+b+c\frac{ 3(a^2b+a^2c+ab^2+ac^2+b^2c+bc^2-3abc) }{a+b+c} -(a^2+b^2+c^2)\\ =\frac{ 2a^2b+2a^2c+2ab^2+2ac^2+2b^2c+2bc^2-a^3-b^3-c^3-9abc }{a+b+c}

となり一致する。

五心間の距離からおもしろい式がいくつもでてきますね。一番有名なのは外心と内心の距離からオイラーの不等式が出てきます。