レルヒの公式

レルヒの公式

exp(sζ(s,x) s=0)=Γ(x)2π \exp \left( \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} \right) =\frac{\Gamma (x)}{\sqrt{2\pi}}

ただし,ζ(s,x)\zeta (s,x) はフルヴィッツのゼータ関数 ζ(s,x)=n=01(n+x)s \zeta (s,x) =\sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{1}{(n+x)^s} である。(s>1,x>0)(s>1 , x> 0)

ゼータ関数とガンマ関数が交じり合う美しい公式「レルヒの公式」を証明します。

証明

ステップ1:xx で2回微分する

ステップ1

f(x)=sζ(s,x) s=0logΓ(x)f(x)= \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} - \log \Gamma (x) とおく。

今この式を2回微分すると, f(x)=2x2sζ(s,x)s=0d2dx2logΓ(x) f''(x) = \left. \dfrac{\partial^2}{\partial x^2} \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s,x) \right|_{s=0} - \dfrac{d^2}{dx^2} \log \Gamma (x) である。

ここでそれぞれの式を計算していく。

1項目

ζ(s,x)\zeta (s,x)CC^{\infty} 級であるため,xx から微分してよい。(→ ゼータ関数は正則関数となるため,無限回微分可能になる。)

xζ(s,x)=sn=0(n+x)s1=sζ(s+1,x)2x2ζ(s,x)=s(s+1)n=0(n+x)s2=s(s+1)ζ(s+2,x)\begin{aligned} \dfrac{\partial}{\partial x} \zeta (s,x) &= -s \sum_{n=0}^{\infty} (n+x)^{-s-1} \\ &= -s \zeta (s+1,x)\\ \dfrac{\partial^2}{\partial x^2} \zeta (s,x) &= s(s+1) \sum_{n=0}^{\infty} (n+x)^{-s-2}\\ &=s(s+1) \zeta (s+2,x) \end{aligned}

これの式を ss で微分して 2x2sζ(s,x)s=0=(2s+1)ζ(s+2,x)+s(s+1)sζ(s+2,x)s=0=ζ(2,x)=n=0(n+x)2\begin{aligned} &\left. \dfrac{\partial^2}{\partial x^2} \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s,x) \right|_{s=0} \\ &= (2s+1) \zeta (s+2,x)\\ &\qquad + s(s+1) \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s+2,x) \right|_{s=0}\\ &= \zeta (2,x)\\ &= \sum_{n=0}^{\infty} (n+x)^{-2} \end{aligned} となる。

2項目

ディガンマ関数 Ψ(x)=ddxlogΓ(x)\Psi (x) = \dfrac{d}{dx} \log \Gamma (x) の級数表示 Ψ(x)=limn(lognk=0n1x+k) \Psi (x) = \lim_{n \to \infty} \left( \log n - \sum_{k=0}^n \dfrac{1}{x+k} \right) を用いると d2dx2logΓ(x)=ddxΨ(x)=ddxn=01(x+n)=n=01(x+n)2\begin{aligned} \dfrac{d^2}{dx^2} \log \Gamma (x) &= \dfrac{d}{dx} \Psi (x)\\ &= - \dfrac{d}{dx} \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{1}{(x+n)}\\ &= \sum_{n=0}^{\infty} \dfrac{1}{(x+n)^2} \end{aligned} となる。

こうして f(x)=0f''(x)=0 とわかる。

ステップ2:微分方程式を解いて係数を決定する

ステップ2

微分方程式を解くと f(x)=ax+bf(x)=ax+b と表されることがわかる。

  1. a=0\mathbf{a=0} を示す

f(x+1)=f(x)f(x+1)=f(x)を示す。

これが示されたら,a=0a=0が従う。

ζ(s,x+1)=n=0(n+x+1)s=n=1(n+x)s=ζ(s,x)xs\begin{aligned} \zeta (s,x+1) &=\sum_{n=0}^{\infty} (n+x+1)^{-s}\\ &=\sum_{n=1}^{\infty} (n+x)^{-s}\\ &= \zeta (s,x) -x^{-s} \end{aligned}

であるため,

f(x+1)=sζ(s,x+1) s=0logΓ(x+1)=s(ζ(s,x)xs)s=0logxΓ(x)=sζ(s,x)s=0+xslogxs=0logΓ(x)logx=sζ(s,x)s=0logΓ(x)=f(x)\begin{aligned} &f(x+1) \\ &= \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x+1) \ \right|_{s=0} - \log \Gamma (x+1) \\ &= \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \left( \zeta (s,x) -x^{-s} \right) \right|_{s=0} - \log x \Gamma (x)\\ &= \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s,x) \right|_{s=0} + x^s \log x \mid_{s=0} - \log \Gamma (x) - \log x\\ &=\left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s,x) \right|_{s=0} - \log \Gamma (x)\\ &= f(x) \end{aligned}

  1. b=12log(2π)\mathbf{b= -\frac{1}{2} \log ( 2\pi )} を示す

x=12x = \dfrac{1}{2} を代入して定数を確定させる。

ζ(s,12)=n=0(n+12)s=2sn=0(2n+1)s=2s{n=1nsn=1(2n)s}=2s(12s)ζ(s)=(2s1)ζ(s)\begin{aligned} \zeta \left( s,\dfrac{1}{2} \right) &= \sum_{n=0}^{\infty} \left( n+\dfrac{1}{2} \right)^{-s}\\ &=2^s \sum_{n=0}^{\infty} (2n+1)^{-s}\\ &= 2^s \left\{ \sum_{n=1}^{\infty} n^{-s} - \sum_{n=1}^{\infty} (2n)^{-s} \right\}\\ &= 2^s (1-2^{-s}) \zeta (s)\\ &= (2^s-1) \zeta (s) \end{aligned} であるため, sζ(s,x) s=0=s(2s1)ζ(s)s=0=2slog2ζ(s)+(2s1)sζ(s)s=0=log2ζ(0)=12log2\begin{aligned} &\left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} \\ &= \left. \dfrac{\partial}{\partial s} (2^s-1) \zeta (s) \right|_{s=0} \\ &= \left. 2^s \log 2 \zeta (s) + (2^s-1) \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta (s) \right|_{s=0}\\ &= \log 2 \zeta (0)\\ &= -\frac{1}{2} \log 2 \end{aligned} となる。

ここで ζ(0)=12\zeta (0) = -\dfrac{1}{2} という式を用いた。

ガンマ関数については既に計算した通り,Γ(12)=π\Gamma \left( \dfrac{1}{2} \right) = \sqrt{\pi}である。

こうして, f(12)=12log212logπ=12log(2π)\begin{aligned} f \left( \dfrac{1}{2} \right) &= -\dfrac{1}{2} \log 2 -\dfrac{1}{2} \log \pi \\ &= -\dfrac{1}{2} \log (2\pi ) \end{aligned} が成立し, sζ(s,x) s=0logΓ(x)=12log(2π) \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} - \log \Gamma (x) = -\frac{1}{2} \log ( 2\pi ) となる。

すなわち, exp(sζ(s,x) s=0)=Γ(x)2π \exp \left( \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} \right) =\frac{\Gamma (x)}{\sqrt{2\pi}} が示された。

正規化積

レルヒの公式を使うことで不思議な公式が得られます。

定理

1×2×3×=2π 1 \times 2 \times 3 \times \cdots = \sqrt{2\pi}

証明

s(x+n)s=log(x+n)(x+n)s \dfrac{\partial}{\partial s} (x+n)^{-s} = -\dfrac{\log (x+n)}{(x+n)^{s}} であるため exp(sζ(s,x) s=0)=exp(n=1log(x+n))=n=11x+n\begin{aligned} &\exp \left( \left. \dfrac{\partial}{\partial s} \zeta(s,x) \ \right|_{s=0} \right) \\ &= \exp \left( - \sum_{n=1}^{\infty} \log (x+n) \right)\\ &= \prod_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{x+n} \end{aligned} となる。

レルヒの公式に x=1x=1 を代入して逆数を取ると 1×2×3×=2π 1 \times 2 \times 3 \times \cdots = \sqrt{2\pi} を得る。

本来は発散する無限級数や無限積に対して,ゼータ関数を通して有限値を対応させる方法をゼータ正規化ということがあります。詳しくここでは触れませんので,興味がある人は調べてみてください。

レルヒの公式をもとに「多重ゼータ関数」というものが定義されます。