ゼータ関数は
ζ(z)=n=1∑∞nz1
と定義されたのでした。右辺の級数は Re(z)>1 で収束し,ゼータ関数は正則関数となります。
→ コーシーの積分公式とその応用~グルサの定理・モレラの定理
ゼータ関数とガンマ関数の積
ゼータ関数の解析接続は,ガンマ関数の解析接続から計算されます。
関係式
Re (z)>1 で
ζ(z)Γ(z)=∫0∞ez−1tz−1dt
となる。
ガンマ関数に n−z を掛けると
n−zΓ(z)=∫0∞e−sn−zsz−1ds=∫0∞e−nttz−1dt(s=nt)
となります。これを n=1,2,⋯ で和を取ると
ζ(z)Γ(z)=n=1∑∞∫0∞e−nttz−1dt
この積分と無限和は交換することができます。(証明略)
結果,
ζ(z)Γ(z)=∫0∞n=1∑∞e−nttz−1dt=∫0∞et−1tz−1dt
を得ます。
正則関数「化」
関係式の右辺
∫0∞et−1tz−1dt
は z に関する複素関数と見なせます。
しかし,これは正則関数(有理関数)になっているのでしょうか。確認する必要があります。
定理
δ を正の実数とする。
積分路 C を次の C1,C2,C3 の合併と定める。
- C1 は,実軸を正の無限大の方向から δ まで進む路
- C2 は,δ から中心 0 半径 δ の円周を一周する路
- C3 は,実軸を δ から正の無限大まで進む路
I(z)=∫Cet−1tz−1dt
と定めると,I(z) は複素平面全体で正則関数になる。
さらに Re (z)>1 で
I(z)=(e2πiz−1)∫0∞et−1tz−1dt
となる。
証明は省きます。
こうして
ζ(z)=(e2πiz−1)Γ(z)I(z)
と解析接続されます。
ゼータ関数の極と留数
極
Re (z)>1 においては ζ は正則です。そのため,Re (z)≦1 で留数を探せばよいです。
I(z) は正則なので極に関係しません。
e2πiz−1 は z∈Z で1位の零点を持ちます。一方 Γ(z) は z が非正整数で1位の極を持ちます。
よって,非正整数においては極と零点が打ち消し合い,ζ(z) は,非正整数で正則になります。
こうして ζ(z) は z=1 で1位の極を持ちます。
留数
Res (ζ,1)=z→1lime2πiz−1z−1Γ(z)I(z)=Γ(1)1z→1lim2πi1ez−1z−1I(z)=2πi1z→1limI(z)
となります。
z→1limI(z) を計算してみましょう。
z=1 で被積分関数は et−11 になります。このとき C1 と C3 での積分は打ち消し合います。よって C2 でのみ考えればOKです。
z→1limI(z)=∮C2et−1dt=Res (et−11,0)=2πit→0limet−1t=2πi
よって
Res (ζ,1)=1
と計算されます。