攻略! ε-N/ε-δ 論法~その2~

イプシロン-エヌ論法

任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して,ある NN が存在して,n>Nn > N なら anα<ε|a_n-\alpha| <\varepsilon を満たすとき,数列 {an}\{ a_n \}α\alpha に収束するといい,limnan=α\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha と書く.

イプシロン-デルタ論法

任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して,ある δ\delta が存在して,xx0>δ|x - x_0| > \delta なら f(x)α<ε|f(x)-\alpha| <\varepsilon を満たすとき,関数 f(x)f(x)x=x0x=x_0α\alpha に収束するといい,limxx0f(x)=α\displaystyle \lim_{x \to x_0} f(x) = \alpha と書く.

この記事ではイプシロンエヌ論法とイプシロンデルタ論法の練習問題とその解法を紹介します.

問題

例題1

極限 limncn=c\displaystyle \lim_{n \to \infty} c_n = c となる数列 {cn}\{c_n\} を取る。

任意の nn に対して cn[a,b]c_n \in [a,b] であるとき,c[a,b]c \in [a,b] であることを示せ。

例題2

数列 {an}\{ a_n \}limnan=α<\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha < \infty を満たす.

このとき limn(anan1)=0\displaystyle \lim_{n \to \infty} (a_n - a_{n-1}) = 0 を示せ.

例題1の解答

例題1は「閉集合は極限操作に閉じる」という意味を持ちます.

解答

c[a,b]c \notin [a,b] と仮定する。c>bc > b を考える(c<ac < a の場合も同様)。

このとき cb>0c - b > 0 となる。ε=cb\varepsilon = c-b とおくと,ε\varepsilon-NN 論法から,ある自然数 NN があって n>Nn > N ならば anc<ε|a_n-c| < \varepsilon となる。

不等式を変形すると cε<cn<c+ε c - \varepsilon < c_n < c + \varepsilon となるため cn>cε>c(cb)=b\begin{aligned} c_n &> c - \varepsilon\\ &> c - (c-b)\\ &= b \end{aligned} となる。よって cn>bc_n > b となって条件 cn[a,b]c_n \in [a,b] に反する。

この命題の応用については 最大値・最小値の定理 をご覧ください.

例題2の解答

コーシー列に関係する問題です。

limn,manam=0 \lim_{n , m \to \infty} |a_n - a_m| = 0 となる数列をコーシー列といいます。

実数列においてコーシー列は必ず収束します。

証明

正数 ε\varepsilon を任意に取る。

ana_nα\alpha に収束するため,ある正の整数 NN があって,n>Nn > N であれば anα<ε2|a_n - \alpha| < \dfrac{\varepsilon}{2} とできる。

さらに n1>Nn-1 > N と取ると, anan1=(anα)(an1α)anα+an1α=ε2+ε2=ε\begin{aligned} &|a_n - a_{n-1}|\\ &= | (a_n - \alpha) - (a_{n-1} - \alpha) |\\ &\leqq |a_n - \alpha| + |a_{n-1} - \alpha|\\ &= \dfrac{\varepsilon}{2} + \dfrac{\varepsilon}{2}\\ &= \varepsilon \end{aligned} となる。

よって示された。

今回は発展的なトピックと関係する問題を扱ってみました。