limsup、liminfの意味(数列・集合の上極限・下極限)
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, などの記号で表される数列の上極限・下極限について紹介します。集合列の上極限・下極限の意味や,数列版との関係も説明します。
数列の上極限
数列の上極限
数列 の上極限とは, のこと。
数列 の上極限を または と書く。
上極限の定義 をもう少し説明すると,
- とは, という集合の上限(≒最大)です。→sup(上限)とmax(最大)の違い
- つまり,大雑把に言うと上極限は「 番目以降の中での最大」が を増やしたときにどうなるか?を表す値です。
- 「数列を図示したときの上側の極限」とも言えます。
数列 に対して上極限 を求めよ。
の最初の方の項は, となる。
数列を図示すると以下のようになる。 赤い点が「上側」を表す。この赤い点の 座標は に収束するので上極限は
もう少し正確に書くと,
- が偶数のとき, 番目以降の中での上限は, 番目そのもの:
- が奇数のとき, 番目以降の中での上限は, 番目:
よって, で は に収束する。つまり上極限は
数列の下極限
数列の下極限
下極限も同様に定義されます。「数列を図示したときの下側の極限」です。
数列 の下極限とは, のこと。
数列 の下極限を または と書く。
さきほどの例: に対して下極限は となります。
上極限と下極限の記号について
上極限と下極限の記号について
- 上極限の定義は の なので, という記号は定義がわかりやすいです。
- 一方「数列を図示したときの上側の極限」というイメージは という記号の方がわかりやすいです。
集合列の上極限と下極限
集合列の上極限と下極限
集合の列 に対して,
- を上極限集合と言い, などと書く。
- を下極限集合と言い, などと書く。
上極限集合・下極限集合の意味を言葉で表すと,
(1)
は無限に多くの に属す
(2)
が属さない は有限個
とは,集合 の和集合。つまり「 以降のどこか1つには属すもの」を集めた集合。
さらに, は, たちの共通部分。つまり,すべての に属す要素を集めた集合。
よって,上極限集合は「すべての に対して, 以降のどこか1つには属す」を満たす要素を集めた集合。これは「無限に多くの に属す」を満たす要素の集合と言える。
とは,集合 の共通部分。つまり「 以降のすべてに属すもの」を集めた集合。
さらに, は, たちの和集合。
よって,下極限集合は「ある に対して, 以降のすべてに属す」を満たす要素を集めた集合。これは「属さない が有限個」を満たす要素の集合と言える。
上極限集合と下極限集合の間には, という包含関係が成立します。
「属さないのが有限個」なら「無限個に属す」だからです。
数列版と集合列版の関係
数列版と集合列版の関係
集合列に対する上極限 と,数列に対する上極限 の関係を紹介します。
集合の列 と固定した要素 に対して,
- なら
- なら
という数列 を考える。このとき
- なら
- なら
である。また,
- なら
- なら
つまり,集合列と数列の上極限は,指示関数(属すなら ,属さないなら を返す関数)を通じてつながっています。
無限に多くの に対して
無限に多くの に対して
ある 以降は
ある 以降は
という記号を見てすぐに意味を理解できる人はすごいです。私は理解するまでにかなり時間がかかりました。