【解答・解説】東大文系数学2023

※以下の解答と解説は東京大学が公表したものではなく,当サイトオリジナルのものです。問題は東京大学第2次試験問題からの引用です。

この記事では,東京大学の2023年度入学試験の文系数学について解説します。

理系数学に問題・解答・解説はこちらからご覧ください。→【解答・解説】東大理系数学2023

大問分析

問題番号 分野 難易度
1 最大値・最小値 標準
2 微分・積分 標準
3 確率 標準
4 空間図形 標準

例年よりも簡単だったのではないでしょうか。作問された教授陣が理系で力尽きてしまった可能性が高いです。

しかしなめてかかると計算ミスで泣くことになるのでしっかり丁寧と解きましょう。

第一問 [最大値・最小値]

第一問

kk を正の実数とし,2次方程式 x2+xk=0x^2 + x - k = 0 の2つの実数解を α,β\alpha , \beta とする。kkk>2k > 2 の範囲を動くとき,α31β+β31α\dfrac{\alpha^3}{1-\beta} + \dfrac{\beta^3}{1-\alpha} の最小値を求めよ。

解と係数の関係から αn+βn\alpha^n + \beta^n を計算し,α31β+β31α\dfrac{\alpha^3}{1-\beta} + \dfrac{\beta^3}{1-\alpha}kk で表しましょう。

第一問

解と係数の関係より α+β=1\alpha + \beta = -1αβ=k\alpha \beta = -k である。

α2+β2=(α+β)22αβ=1+2kα3+β3=(α+β)33αβ(α+β)=13(k)(1)=13kα4+β4=(α2+β2)22α2β2=(1+2k)22k2=1+4k+2k2\begin{aligned} \alpha^2 + \beta^2 &= (\alpha + \beta)^2 - 2\alpha \beta\\ &= 1+2k\\ \alpha^3 + \beta^3 &= (\alpha + \beta)^3 - 3 \alpha \beta (\alpha + \beta)\\ &= -1 - 3 (-k) (-1)\\ &= -1-3k\\ \alpha^4 + \beta^4 &= (\alpha^2 + \beta^2)^2 - 2\alpha^2 \beta^2\\ &= (1+2k)^2 - 2k^2\\ &= 1 + 4k + 2k^2 \end{aligned} であるため, α31β+β31α=α3(1α)+β3(1β)(1α)(1β)=α3+β3α4β41(α+β)+αβ=13k(1+4k+2k2)1(1)k=2+7k+2k2k2=15+2(k2)+24k2\begin{aligned} \dfrac{\alpha^3}{1-\beta} + \dfrac{\beta^3}{1-\alpha} &= \dfrac{\alpha^3 (1-\alpha) + \beta^3 (1-\beta)}{(1-\alpha)(1-\beta)}\\ &= \dfrac{\alpha^3 + \beta^3 - \alpha^4 - \beta^4}{1 - (\alpha + \beta) + \alpha \beta}\\ &= \dfrac{-1-3k - (1+4k+2k^2)}{1 - (-1) - k}\\ &= \dfrac{2+7k+2k^2}{k-2}\\ &= 15 + 2(k-2) + \dfrac{24}{k-2} \end{aligned} と計算される。

相加・相乗平均の不等式を用いると α31β+β31α15+22(k2)24k2=15+83\begin{aligned} \dfrac{\alpha^3}{1-\beta} + \dfrac{\beta^3}{1-\alpha} &\geqq 15 + 2 \sqrt{2(k-2) \cdot \dfrac{24}{k-2}}\\ &= 15 + 8\sqrt{3} \end{aligned} となる。等号が成立する kk が正の数であることを確認する。

等号は 2(k2)=24k22(k-2) = \dfrac{24}{k-2} のとき成立する。これを整理すると (k2)2=12(k-2)^2 = 12,これを解くと k=2±23k = 2 \pm 2\sqrt{3} である。k=2+23>0k = 2+2\sqrt{3} > 0 であるため,等号を満たす kk は存在する。

以上より最小値は 15+83\mathbf{15+8\sqrt{3}} である。

第二問 [微分・積分]

第二問

座標平面上の放物線 y=3x24xy = 3x^2 - 4xCC とおき,直線 y=2xy = 2xll とおく。実数 tt に対し,CC 上の点 P(t,3t24t)\mathrm{P} (t, 3t^2 - 4t)ll の距離を f(t)f(t) とする。

  1. 1a2-1 \leqq a \leqq 2 の範囲の実数 aa に対し,定積分 g(a)=1af(t)dt g(a) = \int_{-1}^a f(t) dt を求めよ。
  2. aa0a20 \leqq a \leqq 2 の範囲を動くとき,g(a)f(a)g(a) - f(a) の最大値および最小値を求めよ。

点と直線の距離の公式を用いて計算しましょう。絶対値を含む関数が現れるため,場合分けをします。

第二問 (1)

点と直線の距離の公式から f(t)=2t(3t24t)22+12=6t3t25=352tt2\begin{aligned} f(t) &= \dfrac{|2t - (3t^2-4t)|}{\sqrt{2^2 + 1^2}}\\ &= \dfrac{|6t-3t^2|}{\sqrt{5}}\\ &= \dfrac{3}{\sqrt{5}} |2t-t^2| \end{aligned} である。絶対値を外すと f(t)={35(t22t)(1a0)35(2tt2)(0a2) f(t) = \begin{cases} \dfrac{3}{\sqrt{5}} (t^2 - 2t) &(-1 \leqq a \leqq 0)\\ \dfrac{3}{\sqrt{5}} (2t-t^2) &(0 \leqq a \leqq 2) \end{cases} となる。

1a0-1 \leqq a \leqq 0 のとき g(a)=1a35(t22t)dt=35[13t3t2]1a=15(a33a2+4)\begin{aligned} g(a) &= \int_{-1}^a \dfrac{3}{\sqrt{5}} (t^2 - 2t) dt\\ &= \dfrac{3}{\sqrt{5}} \Big[ \dfrac{1}{3} t^3 - t^2 \Big]_{-1}^{a}\\ &= \mathbf{\dfrac{1}{\sqrt{5}} (a^3 - 3a^2 + 4)} \end{aligned}

0a20 \leqq a \leqq 2 のとき g(a)=1035(t22t)dt+0a35(t2+2t)dt=[13t3t2]10+[13t3+t2]0a=15(a33a24)\begin{aligned} &g(a)\\ &= \int_{-1}^0 \dfrac{3}{\sqrt{5}} (t^2 - 2t) dt + \int_{0}^a \dfrac{3}{\sqrt{5}} (- t^2 + 2t) dt\\ &= \Big[ \dfrac{1}{3} t^3 - t^2 \Big]_{-1}^{0} + \Big[ -\dfrac{1}{3} t^3 + t^2 \Big]_{0}^{a}\\ &= \mathbf{- \dfrac{1}{\sqrt{5}} (a^3 - 3a^2 - 4)} \end{aligned}

微分をするだけです。極大・極小の計算をするときは,h(x)h(x)h(x)h'(x) で割り算して計算すると簡単になります。

第二問 (2)

h(a)=g(a)f(a)h(a) = g(a) - f(a) とおく。 h(a)=15(a33a24)35(2tt2)=15(a36a2+6a4)\begin{aligned} &h(a)\\ &= - \dfrac{1}{\sqrt{5}} (a^3 - 3a^2 - 4) - \dfrac{3}{\sqrt{5}} (2t-t^2)\\ &= - \dfrac{1}{\sqrt{5}} (a^3 - 6a^2 + 6a - 4) \end{aligned} である。

h(a)=15(3a212a+6)=35(a24a+2)\begin{aligned} h'(a) &= - \dfrac{1}{\sqrt{5}} (3a^2 - 12 a + 6)\\ &= - \dfrac{3}{\sqrt{5}} (a^2 - 4a+ 2) \end{aligned} であるため。h(a)=0h'(a) = 0 を解くと a=2±2a = 2\pm \sqrt{2} となる。

0a20\leqq a \leqq 2 の範囲で増減表を書くと a0222h(a)0+h(a) \begin{array}{c|ccccc} a & 0 & \cdots & 2-\sqrt{2} & \cdots & 2\\ \hline h'(a) && - & 0 & + &\\ \hline h(a) && \searrow & & \nearrow& \end{array} となる。

h(0)=45h(2)=15(824+124)=85\begin{aligned} h(0) &= \dfrac{4}{\sqrt{5}}\\ h(2) &= - \dfrac{1}{\sqrt{5}} (8-24+12-4)\\ &= \dfrac{8}{\sqrt{5}} \end{aligned} である。

a36a2+6a4=(a2)(a24a+2)4a\begin{aligned} &a^3 -6a^2 + 6a - 4\\ &= (a - 2)(a^2 - 4a + 2) -4a \end{aligned} より h(22)=25h(22)+45(22)=42\begin{aligned} &h(2-\sqrt{2})\\ &= -\dfrac{\sqrt{2}}{\sqrt{5}} h'(2-\sqrt{2}) + \dfrac{4}{\sqrt{5}} (2-\sqrt{2})\\ &= 4\sqrt{2} \end{aligned}

以上より h(a)h(a)a=2a = 2 で最大値 85\mathbf{\dfrac{8}{\sqrt{5}}}a=22a= 2-\sqrt{2} で最小値 45(22)\mathbf{\dfrac{4}{\sqrt{5}} (2-\sqrt{2})} をとる。

第三問 [確率]

第三問

黒玉3個,赤玉4個,白玉5個が入っている袋から玉を1個ずつ取り出し,取り出した玉を順に横一列に12個すべて並べる。ただし,袋から個々の玉が取り出される確率は等しいものとする。

  1. どの赤玉も隣り合わない確率 pp を求めよ。
  2. どの赤玉も隣り合わないとき,どの黒玉も隣り合わない条件付き確率 を求めよ。

理系との共通問題です。

共通問題ですが,理系第五問(多項式の問題)にしても良かったように思えます。しかし,文系の場合は積の微分法をやらないため,採用されなかったのかもしれません。

第三問 (1)

12個の玉を並べる順列は 12!3!4!5!=27720\dfrac{12!}{3! 4! 5!} = 27720 通りである。

黒玉と白玉を並べる順列は 8!3!5!=56\dfrac{8!}{3! 5!} = 56 通りである。

黒玉・白玉合わせて8個の玉の両端かその間に,赤玉4個を入れる組み合わせは 9C4=126{}_9 \mathrm{C}_4 = 126 通りである。

よって求める確率は 5612627720=1455 \dfrac{56 \cdot 126}{27720} = \mathbf{\dfrac{14}{55}} となる。

第三問 (2)

黒玉も赤玉も隣り合わない確率を求めればよい。

(1) と同様に,まず黒玉と白玉を並べて,その後赤玉を並べることで組み合わせを計算する。

  1. 黒玉と白玉を並べた時点で,黒玉は隣り合わないとき : \text{例}: {}^{\vee} 白^{\vee} 黒^{\vee} 白^{\vee} 黒^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 黒^{\vee} 白玉5個の両端かその間に,黒玉3個を隣り合わないように入れる組み合わせは 6C3=20{}_6 \mathrm{C}_3 = 20 通りである。
    その上で赤玉を入れる組み合わせは,(1) 同様 126126 通りである。
    よって組み合わせは 2012620 \cdot 126 通りである。

  2. 黒玉と白玉を並べた時点で,黒玉ちょうど2個が隣り合っているとき : \text{例}: {}^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 黒^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 黒黒^{\vee} 白^{\vee} 白玉5個の両端かその間に,黒玉1個と黒玉2個を隣り合わないように入れる組み合わせは 65=306 \cdot 5 = 30 通りである。
    その上で赤玉を入れる。1個は必ず黒玉2個の間に入れる。それ以外の4個は,8か所に入れることができるため,入れ方は 8C3=56{}_8 \mathrm{C}_3 = 56 通りである。
    よって組み合わせは 305630 \cdot 56 通りである。

  3. 黒玉と白玉を並べた時点で,黒玉3個が隣り合っているとき :黒黒 \text{例}: {}^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 白^{\vee} 黒黒黒^{\vee} 白^{\vee} 白玉5個の両端かその間に,黒玉3個を入れる組み合わせは 66 通りである。
    その上で赤玉を入れる。2個は必ず黒玉3個の間に入れる。それ以外の2個は,7か所に入れることができるため,入れ方は 7C2=21{}_7 \mathrm{C}_2 = 21 通りである。
    よって組み合わせは 6216 \cdot 21 通りである

以上をまとめると,組み合わせは 20126+3056+621=4326 20 \cdot 126 + 30 \cdot 56 + 6 \cdot 21 = 4326 通りである。

よって黒玉も赤玉も隣り合わない確率は 432627720\dfrac{4326}{27720} であるため,求めるべき条件付き確率は 432627720÷5612627720=432656126=103168\begin{aligned} \dfrac{4326}{27720} \div \dfrac{56 \cdot 126}{27720} &= \dfrac{4326}{56 \cdot 126}\\ &= \mathbf{\dfrac{103}{168}} \end{aligned} である。

第四問 [空間図形]

第四問

半径 11 の球面上の相異なる4点 A\mathrm{A}B\mathrm{B}C\mathrm{C}D\mathrm{D}AB=1,AC=BC,AD=BD,cosACB=cosADB=45 \mathrm{AB} = 1 , \mathrm{AC} = \mathrm{BC} , \mathrm{AD} = \mathrm{BD} ,\\ \cos \angle \mathrm{ACB} = \cos \angle \mathrm{ADB} = \dfrac{4}{5} を満たしているとする。

  1. 三角形 ABC\mathrm{ABC} の面積を求めよ。
  2. 四面体 ABCD\mathrm{ABCD} の体積を求めよ。

四面体の問題です。対称性に着目して解きたいところです。

第四問 (1)

pic01

C\mathrm{C} から辺 AB\mathrm{AB} に下した垂線の足を H\mathrm{H} とおく。

AHCH=tan12ACB \dfrac{\mathrm{AH}}{\mathrm{CH}} = \tan \dfrac{1}{2} \angle \mathrm{ACB} である。

tan12ACB=1cosACB1+cosACB=1451+45=13\begin{aligned} \tan \dfrac{1}{2} \angle \mathrm{ACB} &= \sqrt{\dfrac{1 - \cos \angle \mathrm{ACB}}{1 + \cos \angle \mathrm{ACB}}}\\ &= \sqrt{\dfrac{1-\frac{4}{5}}{1+\frac{4}{5}}}\\ &= \dfrac{1}{3} \end{aligned} である。こうして CH=32\mathrm{CH} = \dfrac{3}{2} である。

よって面積は 12ABCH=34 \dfrac{1}{2} \mathrm{AB} \cdot \mathrm{CH} = \mathbf{\dfrac{3}{4}}

第四問 (2)

問題文中の半径 11 の球の中心を O\mathrm{O} とおく。D\mathrm{D} から ABC\triangle \mathrm{ABC} に下した垂線の足を I\mathrm{I} とおく。

条件より ABC\triangle \mathrm{ABC}ABD\triangle \mathrm{ABD} は合同である。ゆえに CH=DH=32\mathrm{CH} = \mathrm{DH} = \dfrac{3}{2} である。

また,条件より四面体 ABCD\mathrm{ABCD} は平面 CDH\mathrm{CDH} に関して面対称な図形である。ゆえに O\mathrm{O}I\mathrm{I} は平面 CDH\mathrm{CDH} 上にある。

pic02

A\mathrm{A}B\mathrm{B} は球面上の点であるから OA=OB=1\mathrm{OA} = \mathrm{OB} = 1 である。条件から AB=1\mathrm{AB} = 1 であったので,OAB\triangle \mathrm{OAB} は正三角形である。H\mathrm{H} は辺 AB\mathrm{AB} の中点であったため,OH=32\mathrm{OH} = \dfrac{\sqrt{3}}{2} である。

OCH\triangle \mathrm{OCH} について OH=32\mathrm{OH} = \dfrac{\sqrt{3}}{2}CH=32\mathrm{CH} = \dfrac{3}{2}OC=1\mathrm{OC} = 1 であるため,余弦定理から cosOHC=OH2+CH2OC22OHCH=34+94123232=433\begin{aligned} \cos \angle \mathrm{OHC} &= \dfrac{\mathrm{OH}^2 + \mathrm{CH}^2 - \mathrm{OC}^2}{2 \mathrm{OH} \cdot \mathrm{CH}}\\ &= \dfrac{\dfrac{3}{4} + \dfrac{9}{4} - 1}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2} \cdot \dfrac{3}{2}}\\ &= \dfrac{4}{3\sqrt{3}} \end{aligned} である。また sinOHC=1(433)2=1133 \sin \angle \mathrm{OHC} = \sqrt{1 - \left( \dfrac{4}{3\sqrt{3}}\right)^2} = \dfrac{\sqrt{11}}{3\sqrt{3}}

よって sinCHD=2sinOHCcosOHC=21133433=81127\begin{aligned} \sin \angle \mathrm{CHD} &= 2 \sin \angle \mathrm{OHC} \cos \angle \mathrm{OHC}\\ &= 2 \dfrac{\sqrt{11}}{3\sqrt{3}} \cdot \dfrac{4}{3\sqrt{3}}\\ &= \dfrac{8\sqrt{11}}{27} \end{aligned} である。

こうして DI=DHsinCHD=3281127=4119\begin{aligned} \mathrm{DI} &= \mathrm{DH} \sin \angle \mathrm{CHD}\\ &= \dfrac{3}{2} \dfrac{8\sqrt{11}}{27}\\ &= \dfrac{4\sqrt{11}}{9} \end{aligned} となるため,体積は V=13344119=119 V = \dfrac{1}{3} \cdot \dfrac{3}{4} \cdot \dfrac{4\sqrt{11}}{9} = \mathbf{\dfrac{\sqrt{11}}{9}} である。

数学が得意な人は満点近く取れてしまうかもしれません。