算術幾何平均とレムニスケートの長さ
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と の算術幾何平均 は,単位円周の長さ とレムニスケートの長さ の比に等しい:
「算術幾何平均」や「レムニスケートの長さ」については後述します。非常に美しい定理です。
算術幾何平均
算術幾何平均
算術幾何平均 とは,2つの正の実数 から定まる1つの数です。
具体的には,正の実数 が与えられたとき, を初期値として,以下の漸化式で数列 を定めます:
それぞれ相加平均(算術平均)と相乗平均(幾何平均)です。
このとき,2つの数列 と は で同じ値に収束します(*)。この値を と の 算術幾何平均と呼びます。この記事では と の算術幾何平均を と書くことにします。
の場合を考える( の場合も同様)。
相加相乗平均の不等式と帰納法を使うと,
が分かる。
単調で有界な数列は収束するので,2つの数列は収束する。その収束先を とすると,漸化式より となり, が分かる。
ちなみに,同様に算術調和平均や調和幾何平均も考えることができます(→調和平均について)。
レムニスケートの長さ
レムニスケートの長さ
という式で表される曲線をレムニスケートと言います(より一般には )。
この曲線の長さを とすると,
が成立します。
冒頭の定理の証明(の概略)
冒頭の定理の証明(の概略)
実は,
が算術幾何平均 と一致することが知られている(→補足)。
のとき定積分は,
となるが, とおくと, なので上式は,
となる。
これはさきほど証明したように, なので,
補足:全然自明じゃないです(発見した Gauss すごい)。詳細は例えばArithmetic-Geometric Mean of Gaussの Gauss’ Second Proof を参照してください。
@nagomi_osaka さんのツイートに inspire されて書いた記事です。楽しかったです!