有限体(ガロア体)の基本的な話
位数(要素数)が の有限体が存在する ある素数 と正の整数 が存在して
有限体とは
有限体とは
位数が有限である体を有限体(またはガロア体)と言います。大雑把に言うと,四則演算ができる有限集合のことです。
位数が である有限体(実は,同型を除いて一通りに定まる)を , などと表記します。
具体例として,位数が の有限体について考えてみます。
という,要素数が の有限集合を考えます。そして,四則演算を「整数の世界で四則演算をして,それを で割った余り」と定義します。例えば, , , という感じです。
この定義は四則演算が満たすべき性質(体の公理)を満たしているので,有限体になっています!
位数が素数である場合
位数が素数である場合
より一般に,位数が素数 である有限体は,
-
という集合,
-
「整数の世界で足し算(引き算,かけ算)をして,それを で割った余り」という足し算(引き算,かけ算),
-
を満たす を とするような割り算
を考えることで構成できます。
そして,位数が である体は同型を除いて一つであることが知られています。つまり,位数が である体は本質的に上で構成したものしかないということです。
位数が素数でない場合
位数が素数でない場合
では,さきほどと同様に,位数が の有限体を構成できないか,考えてみます。 という集合を考えます。
実は,残念ながら例えば が定義できません。 を満たす が存在しないからです。
なお,位数が素数 の場合には,
任意の に対して, を満たす整数 がただ一つ存在する
という性質がある(高校数学で簡単に証明できる)ため,このような問題は起こりません。
冒頭の定理について
冒頭の定理について
上の方法では位数 の体は構成できませんでしたが,別の方法で構成できます。より一般に,位数が素数のべき乗である有限体は,既約多項式というものを用いて構成できます。
また,位数が素数のべき乗でないような有限体は存在しません。
「ガロア体」と言う方が,「有限体」と言うよりも難しく聞こえる気がします。