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シェルピンスキー・マズルキーウィチのパラドックス

更新日時 2021/03/07

平面内の部分集合 SS で,以下の条件を満たすようなものが存在する。

条件「 SS の分割 {S1,S2}\{S_1,S_2\} が存在して,S1S_1 を平行移動すると SS と一致し,S2S_2 を回転すると SS と一致する」

目次
  • パラドックスのすごさ

  • 集合 SS の構成

  • 複素数平面で考える

  • SS の分割 {S1,S2}\{S_1,S_2\} の構成と定理の証明

パラドックスのすごさ

  • 平行移動も回転も合同変換(任意の2点間の距離を変えない)です。つまり集合 SS は,自分自身と「合同な」もの2つに分割できるというわけです。分身の術です。結果が直感に反するのでパラドックスと呼ばれていますが「定理」です。

  • シェルピンスキー・マズルキーウィチ(Sierpinski-Mazurkiewicz)のパラドックスという名前がすごい(印象的)です。

集合 SS の構成

座標平面において 原点 OO に対して以下の2つの操作を繰り返して得られる点の集合を SS とします。

操作1. xx 座標を +1+1

操作2.原点中心に 11 ラジアン反時計回りに回転

(ただし,1回目の操作で操作2を行っても意味が無いので1回目の操作は操作1とする)

例えば,A(2,0)A(2,0) は「操作1,操作1」で得られるので SS の要素です。また,B(cos1,sin1)B(\cos 1,\sin 1) は「操作1,操作2」で得られるので SS の要素です。 SS は無限集合です。

複素数平面で考える

複素数平面で考えると,操作1は 11 を加えることに対応し,操作2は eie^i をかけることに対応するので,SS の要素は係数が 00 以上の整数である多項式 PP を用いて P(ei)P(e^i) と表せます。

さきほどの例について,AA22 という複素数に対応し,BBeie^i という複素数に対応しています。他にも例えば 4(ei)3+ei+24(e^i)^3+e^i+2 に対応する点も SS の要素です。

逆に「係数が 00 以上の整数である多項式 PP を用いて P(ei)P(e^i) と表せる複素数に対応する点」が SS の要素であることも分かります。

また, SS の1つの要素に2つ以上の多項式が対応することはありません。つまり,操作1と操作2を適当な順番で組み合わせて点 CC が実現できたとき,他の順番では点 CC は実現できません。

証明

2通りの方法で点 CC が実現できたと仮定すると,相異なる整数係数多項式 P1,P2P_1,P_2 が存在して,P1(ei)=P2(ei)P_1(e^i)=P_2(e^i)

これは eie^i が超越数であることに矛盾。

超越数については超越数の意味といくつかの例を参照して下さい。 eie^i が超越数であることの証明は簡単ではありません(リンデマンの定理というものを使えばできます)。

SS の分割 {S1,S2}\{S_1,S_2\} の構成と定理の証明

SS の要素のうち「最後の操作が操作1」であるようなものの集合を S1S_1 「最後の操作が操作2」であるようなものの集合を S2S_2 とします。

パラドックスの証明
  • {S1,S2}\{S_1,S_2\} が確かに SS の分割になっていること SS の各要素について,操作の順番は一通り。よって最後の操作によって場合分けすることができ,分割が定まる。

  • S1S_1 を平行移動すると SS と一致すること S1S_1 の点に操作1の逆(xx 座標を1-1)をすると SS の点になる。これは SSS1S_1 の間の1対1対応を定める。

  • S2S_2 を回転すると SS と一致すること S2S_2 の点に操作2の逆(原点中心に 11 ラジアン時計回りに回転)すると SS の点になる。これは SSS2S_2 の間の1対1対応を定める。

複素数平面で考えると,

S1S_1 →最後に +1+1 →対応する多項式 PP の定数項が 00 でないもの

S2S_2 →最後に ×ei\times e^i →対応する多項式 PP の定数項が 00 であるもの

となります。

パラドックスの証明(多項式による説明)
  • {S1,S2}\{S_1,S_2\} が確かに SS の分割になっていること SS の各要素について,対応する多項式の定数項が 00 でないなら S1S_1 に属し,00 なら S2S_2 に属す。同時に両方に属すことはない。

  • S1S_1 を平行移動すると SS と一致すること 定数項が 00 でない(係数が 00 以上の整数である)多項式全体 について,各々から 11 を引くと (係数が 00 以上の整数である)多項式全体 になる。

  • S2S_2 を回転すると SS と一致すること 定数項が 00 である(係数が 00 以上の整数である)多項式全体 について,各々に eie^{-i} をかけると (係数が 00 以上の整数である)多項式全体 になる。

似たようなパラドックスにバナッハタルスキーのパラドックスというものがありますが,こちらの説明には選択公理が必要です。

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