ラッセルのパラドックスの簡単な解説と例

今回は自分自身を含む集合について考えてみます。ラッセルのパラドックスという有名な話題です。

ラッセルのパラドックス

ラッセルのパラドックスでは自分自身を含む集合を考えます。例えば, 全ての物を含む集合 XX というものを考えてみると,それは自分自身も含むべきなので XXX\in X となりそうです。

そのような自分自身を含む集合はよく分からないのでこの記事では「異常な集合」と呼ぶことにします。 X∉XX\not\in X であるような集合を「正常な集合」と呼ぶことにします。

すると,以下のように矛盾が導けます!

正常な集合 XX を全て集めてきた集合を AA とする。

AA が正常なとき

AA は定義より正常な集合を全て集めてきたものなので当然 AA 自身も含む。よって AAA\in A である。しかし,これは異常の定義より AA が異常であることを表しているので矛盾。

AA が異常なとき

AA が異常なので,異常の定義より AAA\in A である。しかし,これは AA の定義(正常な集合を全て集めてきたもの)に矛盾。

この証明のどこに穴があるか考えてみてください!

よくある例

ラッセルのパラドックスは集合論や述語論理の言葉で表現されることが多いですが,ここでは身近に感じられるように簡単な例を紹介しておきます。以下の二つの例はラッセルのパラドックスの例としてしばしば挙げられます。

床屋のパラドックス

以下のような床屋がいる:

  • 自分でひげをそらない人全員のひげをそる。
  • 自分でひげをそる人のひげはそらない。

このとき床屋自身のひげは自分でそるのか?

床屋が自分でひげをそる場合もそらない場合もさきほどの議論と同様に矛盾してしまいます!

蔵書目録

自分自身を引用していないような本全てを一覧にした(引用した)本 XX を作ることを考える。

このとき XXXX を引用するのか?

どちらの場合も矛盾してしまいます!

公理的集合論

ラッセルのパラドックスを解消するために,現代数学では {XX∉X}\{X\mid X\not\in X\} はそもそも集合でない」と考えるのが主流です。

~読者の方のご指摘に基づく追記(2016/1/25)~

ラッセルのパラドックスはパラドックスではなく {XX∉X}\{X\mid X\not\in X\} が集合でないことの証明。目録の例では「そのような目録はそもそも作れない」

生半可な知識で記事を書いてしまったことをお詫び申し上げます。

~追記終わり~

よりきちんと言うと,公理的集合論という枠組で,どのようなものが集合なのかがきちんと定義されます。

ZF公理系というものに選択公理を加えたZFC公理系が広く使われています。興味のある方は調べてみてください。

2016/1/26,記事を少し修正。

いろいろなパラドックスを調べてみると,いかに人間の直感が外れているかが分かります。

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