平方根の長さを作図する2通りの方法

任意の正の有理数 qq に対して,長さ 11 の線分が与えられれば長さ q\sqrt{q} の線分を定規とコンパスで作図できる。

長さ q\sqrt{q} の線分を作図できるということは,面積 qq の正方形を作図できるということでもあります!

三平方の定理を繰り返し用いる方法

まずは qq が正の整数である場合に使える方法です。長さ 11 の線分 ABAB が与えられたときに長さ 2,3,4,5,\sqrt{2},\sqrt{3},\sqrt{4},\sqrt{5},\cdots の線分を順番に作図していきます。

作図方法

平方根の作図

まず,BB を通り ABAB と垂直で長さが 11 の線分 AB2AB_{2} を作図する。

すると,三平方の定理により AB2=2AB_{2}=\sqrt{2} である。

次に,B2B_2 を通り AB2AB_2 と垂直で長さが 11 の線分 B2B3B_2B_3 を作図する。

三平方の定理より AB3=3AB_{3}=\sqrt{3} である。

以下同様に 4,5,\sqrt{4},\sqrt{5},\cdots の長さの線分を作図することができる。

この方法は順番に作図していくので,数字が大きくなると大変です。実際に 10\sqrt{10} を作図することさえだいぶめんどうです。

有名な構図を用いる方法

次は長さ 11 の線分と長さ rr の線分が与えられたときに長さ r\sqrt{r} の線分を作図する有名な方法です。 rr は有理数でなくても構いません。

作図方法

平方根の作図2

まず AB=1,BC=rAB=1,BC=r となるように直線上に三点 A,B,CA,B,C をこの順番で並べる。

次に ACAC を直径とする円 Γ\Gamma を書く。 BB を通り ACAC と垂直な直線と Γ\Gamma の交点の一つを DD とする。このとき BD=rBD=\sqrt{r} である!(→補足)

補足:円の中心を OO とすると,OD=1+r2OD=\dfrac{1+r}{2}OB=1r2OB=\dfrac{|1-r|}{2} である。三角形 OBDOBD に三平方の定理を用いると,

BD2=(1+r)2(1r)24=rBD^2=\dfrac{(1+r)^2-(1-r)^2}{4}=r が分かる。

追記: BD2=rBD^2=r の証明は方べきの定理を使えば一瞬です(読者の方に教えていただきました)。

相加相乗平均の不等式の証明にも使われる有名な構図です。

冒頭の主張の説明

以下の二点により冒頭の主張が証明されます:

  • 任意の有理数 q=nmq=\dfrac{n}{m} に対して,長さ 11 の線分が与えられたときに長さ qq の線分は作図できる(mm 等分の作図と nn 倍の作図は簡単にできることから分かる)

  • 長さ 11 の線分と長さ rr の線分が与えられたときに長さ r\sqrt{r} の線分は作図できる(説明済)

作図は数学Aで習います。平方根の作図も教科書範囲内です。

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