正規分布の二乗和がカイ二乗分布に従うことの証明
確率変数 が互いに独立に標準正規分布 に従うとき, は自由度 のカイ二乗分布に従う。
注:標準正規分布とは平均 ,分散 の正規分布です。→正規分布の標準化の意味と証明
カイ二乗分布とは
カイ二乗分布とは
- 自由度
のカイ二乗分布とは,以下の確率密度関数で表される分布です:
ただし, はガンマ関数です。→ガンマ関数(階乗の一般化)の定義と性質
自由度2のカイ二乗分布の確率密度関数は より
- 一見複雑ですが,カイ二乗分布の形を決める重要な部分は のみです。 はただの正規化定数です(確率密度関数なので全区間で積分して1になる必要がある)。
- 確率密度関数なので当然ですが, です。
- 自由度 のカイ二乗分布の平均は ,分散は です。
- カイ二乗分布は適合度の検定,独立性の検定などにも登場する非常に重要な分布です。
自由度1の場合
自由度1の場合
以下では冒頭の定理:「独立な標準正規分布の二乗和はカイ二乗分布に従う」を証明します。数理統計をやるなら1度はやっておきたい計算です。
帰納法で証明するために,まずは の場合を計算します。
が標準正規分布に従うとき, は自由度1のカイ二乗分布に従う
方法1. 累積分布関数を用いた証明
標準正規分布の確率密度関数を,
とする。また, の原始関数の1つを と書く。
が従う分布の確率密度関数 は,累積分布関数の微分であり,
となる。 であり,これは自由度1のカイ二乗分布をと一致する。
方法2. 確率密度関数を用いた説明
が従う分布の確率密度関数 について考える。 が十分小さいとき,
左辺を変形すると,
よって,
となる。
なお,方法2の途中で1次近似を使いました:一次近似の意味とよく使う近似公式一覧
一般の自由度の場合
一般の自由度の場合
帰納法を用います。畳み込みの計算をするだけです!
が自由度 のカイ二乗分布に従い, が自由度1のカイ二乗分布に従うとき, が自由度 のカイ二乗分布に従うことを示せばよい。
つまり,以下を証明すればよい:
右辺を書き下してみると,指数関数部分が積分の外に出せる:
ここで と変数変換すると が積分の外に出せる:
積分の部分はベータ関数の積分公式より
よって, が約分されて自由度 のカイ二乗分布の確率密度関数と一致する。
最後約分される瞬間がたまりませんね。