ミレニアム懸賞問題の概要と大雑把な説明

ミレニアム懸賞問題の概要,一覧,そしてそのうちのいくつかについての大雑把な説明です。

ミレニアム懸賞問題とは

  • ミレニアム懸賞問題とは,100万ドルの懸賞金がかけられている数学の重要な7つの難問です。私はトリビアの泉という番組で知りました。
  • ミレニアム懸賞問題は,アメリカマサチューセッツ州にあるクレイ数学研究所という非営利組織によって2000年に発表されました。
  • 為替レートにもよりますが,日本円でだいたい1億円なので「1億円問題」と呼ばれることもあります。
  • 一問解決すれば100万ドルです。「7問とも解いたら一億円」という記述をどこかで見ましたが,大きな間違いです。ただし,賞金を受け取るには自分で解いたと主張するだけではダメで,解決したことが数学界に受け入れられなくてはいけません。
  • 2021年現在,ポアンカレ予想のみ解決済みです。

比較的簡単なもの

比較的簡単といっても「主張の雰囲気をつかむだけなら他のよりはマシ」というレベルです。 問題の主張を表面的に理解する難易度と実際に解く難易度は比例しません。

・リーマン予想

ゼータ関数の零点の分布に関する主張です。主張を理解するだけなら(複素数平面を知っていれば)簡単です。→リーマン予想の意味,素数分布との関係

ただし,ゼータ関数が複素数の範囲でどう定義されるかをきちんと理解するには解析接続(大学2〜3年レベル)を知る必要があります。

・P \neqNP予想

計算量理論の問題です。「P」とか「NP」は問題のクラス(集合)です。雰囲気を理解するのは難しくありません。→P≠NP予想の主張の解説

ただし「P」や「NP」の定義を厳密に理解するにはオーダー記号を用いた計算量理論(大学2〜3年レベル)を学ぶ必要があります。

なんとか理解できるかもしれない

・ポアンカレ予想

位相幾何学の問題です。「単連結な三次元閉多様体は三次元球面 S3S^3 に同相である」という主張です。主張自体は大学の数学科レベルで理解できます。

「単連結な三次元閉多様体」は(非常に大雑把ですが)とある条件を満たす三次元の立体というイメージです。

S3S^3」 というのは4次元空間において原点から距離が 11 であるような集合です。4次元空間が登場するので頭の中ではイメージできません!

「同相」というのはだいたい同じ形という意味です。数学的には位相同型写像が存在することを表します。

ロシアの数学者であるグリゴリー・ペレルマンによって解決されました。 →ポアンカレ予想の主張の解説

・ナビエ–ストークス方程式

流体力学の基本方程式であるナビエ–ストークス方程式という複雑な微分方程式が「それなりに性質のよい解」を持つかどうか判定せよという問題です。ナビエ–ストークス方程式をきちんと理解するのは難しいですが,雰囲気だけなら!

ちなみに,実際の流体力学でナビエ–ストークス方程式を使うときには方程式を単純化してからシミュレーションを行うことが多いです。 →ナビエ-ストークス方程式の導出

・バーチ・スウィンナートン–ダイアー予想(BSD予想)

数論の問題らしいです。→BSD予想の主張の解説

無理なもの

残り2つは私には雰囲気すら理解できません。

・ホッジ予想

代数幾何学の問題らしいです。代数幾何学と言うと,数学の天才たちがひしめき合うすごい世界というイメージがあります。

・ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題

量子色力学の問題らしいです。そもそも量子色力学ってなんだ?

ペレルマンは1982年の国際数学オリンピックで満点を取っています!