1. 高校数学の美しい物語
  2. 確率空間の定義と具体例(サイコロ,コイン)

確率空間の定義と具体例(サイコロ,コイン)

更新日時 2021/03/07

確率を厳密に扱うためには「測度論的確率論」を学ぶ必要があります。この記事では測度論的確率論の超入門として,確率を考える舞台となる「確率空間」の定義,意味,具体例について解説します。

目次
  • 確率空間とは

  • 標本空間 Ω\Omega

  • 事象の集合 F\mathscr{F}

  • 確率測度P

確率空間とは

確率空間とは (Ω,F,P)(\Omega,\mathscr{F},P) の三つ組のことを言います。

ただし,

  • Ω\Omega は集合
  • F\mathscr{F}Ω\Omega の部分集合族(σ\sigma -加法族)
  • PPF\mathscr{F} から実数への非負関数(確率測度)

これだけだとよく分からないと思うので,以下で一つずつ解説していきます。

とりあえず 「測度論的確率論では,確率を議論するときには確率空間というものの上で考える。そして,確率空間は3つの物のセットのことを表す」と覚えておいて下さい。

標本空間 Ω\Omega

まずは標本空間 Ω\Omega についてです。確率を考える土台となる集合です。

例1

普通のサイコロ

Ω={1,2,3,4,5,6}\Omega=\{1,2,3,4,5,6\}

本当は Ω\Omega の各要素を「 11 の目」「 22 の目」などと書くべきですが「の目」は省略しています。

例2

二回コインを投げる

Ω={\Omega=\{ 表表,表裏,裏表,裏裏 }\}

例3

[0,1][0,1] 上の一様分布(ランダムに 00 から 11 の間の実数を返すモデル)

Ω={\Omega=\{

00 以上 11 以下の実数全体 }\}

  • Ω\Omega のことを標本空間と言います。
  • Ω\Omega の各要素は根元事象と呼ばれます。 ω\omega と書くことが多いです。

事象の集合 F\mathscr{F}

3つの中でこれが一番難しいです。 F\mathscr{F} は標本空間 Ω\Omega の部分集合の中で確率が測れる集合を集めたものという意味を持ちます。

σ\sigma -加法族についての説明は後回しにして,とりあえず具体例です。

例1,2のように Ω\Omega が有限集合のときは Ω\Omega の全ての部分集合の確率が測れるとしても問題がありません。

例1

普通のサイコロ

F=2Ω\mathscr{F}=2^{\Omega} ,つまり Ω\Omega の部分集合全体。これは,要素数 26=642^6=64 個の集合を含む集合族。

例2

二回コインを投げる

F=2Ω\mathscr{F}=2^{\Omega} ,つまり Ω\Omega の部分集合全体。これは,要素数 24=162^4=16 の集合を含む集合族。

しかし,Ω\Omega が無限集合(しかも非可算)のときには全ての集合の確率が測れるとは限りません。イメージはわきませんが, とりあえずやばい部分集合を考えると確率がうまく定義できないことを意識しておきましょう。

例3

[0,1][0,1] 上の一様分布(ランダムに 00 から 11 の間の実数を返すモデル)

F={[0,1]\mathscr{F}=\{[0,1] 区間上のボレル集合 }\}

実数の部分集合でヤバくないものを集めたものをボレル集合と言います(厳密には,任意の開集合を含む最小の σ\sigma -加法族のことを言う)。

  • F\mathscr{F} の各要素を事象と言います。
  • F\mathscr{F} は「確率が測れる集合を集めたもの」なので以下の3つを満たすことが要請されます:

1: F\emptyset\in \mathscr{F}

2: AFA\in \mathscr{F} なら AF\overline{A}\in\mathscr{F}

3: AiF(i=1,2,)A_i\in\mathscr{F}\:(i=1,2,\cdots) なら i=1AiF\cup_{i=1}^{\infty}A_i\in\mathscr{F}

これらを満たす集合族を σ\sigma -加法族(完全加法族)と言います。

意味は,

1:空集合の確率は測れるべき

2: AA の確率が測れるなら AA でない確率も測れるべき

3:任意の ii に対して AiA_i の確率が測れるなら,AiA_i の少なくとも一つが起きる確率も測れるべき

Ω\OmegaF\mathscr{F} の組(集合と σ\sigma -加法族の組)を 可測空間と言います。

確率測度P

確率を考える対象(可測空間)が定まったのでいよいよ確率が定義できます。

確率測度とは F\mathscr{F} の元(測れる集合,事象)を入れたら 00 以上 11 以下の値を返してくれる関数」(で以下の1,2を満たすもの)のことです。

確率という意味から以下の二つを満たすことを要請します。

1: P(Ω)=1P(\Omega)=1

2(可算加法性): AiFA_i\in\mathscr{F} で各 AiA_i たちが共通部分を持たないなら,P(i=1Ai)=i=1P(Ai)P(\cup_{i=1}^{\infty}A_i)=\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}P(A_i)

意味は,

1:全事象の確率は 11

2:互いに排反なら「どれか一つでも起きる確率」は各々の確率の和

例1

普通のサイコロ(公平なサイコロの場合)

P({1})=P({2})==16,P({1,3,5})=12P(\{1\})=P(\{2\})=\cdots =\dfrac{1}{6},\:P(\{1,3,5\})=\dfrac{1}{2}

などと定義される。

例2

二回コインを投げる(表と裏が同じ確率の場合)

例えば P({P(\{ 表表 })=14,P({\})=\dfrac{1}{4},\:P(\{ 表表,表裏,裏表 })=34\})=\dfrac{3}{4} などと定義される。

例3

[0,1][0,1] 上の一様分布

P([0.5,0.7])=0.2P([0.5,0.7])=0.2 などと定義される。

測度論的確率論では,確率空間(三つ組 (Ω,F,P)(\Omega,\mathscr{F},P) )を舞台に,確率変数や期待値などいろいろな概念を考えていくことになります。

  1. 高校数学の美しい物語
  2. 確率空間の定義と具体例(サイコロ,コイン)