モーメント母関数(積率母関数)の意味と具体例
モーメント母関数とは,確率分布(確率変数)から定まる関数です。
確率変数 に対して, についての関数 のことをモーメント母関数(または積率母関数)と呼ぶ。
が従う確率分布によってはモーメント母関数は存在しないこともありますが,以下ではモーメント母関数が存在するような場合について考えます。
モーメント母関数の例
モーメント母関数の例
とは, の期待値のことです。具体的な計算例を見れば意味がわかりやすいです。
例として,二項分布のモーメント母関数を計算してみます。
ただし,(パラメタが であるような)二項分布とは, となる確率が であるような分布です。
二項分布のモーメント母関数は,
モーメント母関数と期待値,分散
モーメント母関数と期待値,分散
モーメント母関数を使うと,期待値と分散を楽に計算できる場合があります。
以下では,モーメント母関数 のことを と書く場合があります。
モーメント母関数 を で 回微分して を代入すると となる。
モーメント母関数の重要な性質です。導出にはマクローリン展開の知識が必要です。
特に,期待値 は ,分散 は です。 つまり,モーメント母関数から期待値や分散を計算できます。
期待値と分散の計算例
二項分布のモーメント母関数は, でした。これと上記の定理をもとに,二項分布の期待値と分散が計算できます:
-
を で微分すると となります。 を代入すると二項分布の期待値 が得られます。(→二項分布の平均と分散の二通りの証明)
-
同様に の二階導関数も計算することで二項分布の分散 も得られます。
指数分布のモーメント母関数
指数分布のモーメント母関数
二項分布は離散型確率分布の場合の例でした。
次は,連続型確率分布の場合の例として,指数分布のモーメント母関数を計算してみます。(パラメタが であるような)指数分布とは,確率密度関数が であるような分布です。
指数分布のモーメント母関数は,
ただし,定義域は
この定積分は のとき発散し, のとき となる。
なお, を で微分すると となります。 を代入すると指数分布の期待値 が得られます。→指数分布の意味と具体例
同様に の二階導関数も計算することで指数分布の分散 も得られます。
似たような関数として特性関数,キュムラント母関数というものもあります。