8パズル,15パズルの不可能な配置と判定法
8パズル・15パズルにおいて「完成した形から2枚のパネルの場所を交換した状態」からスタートしても,完成させることはできない。
前提知識
前提知識
- 8パズル,15パズルはパネルをスライドさせて目標の形(図の形)を作るゲームです。名前は知らないかもしれませんが,ほとんどの人が一度はやったことがあるゲームだと思います。
- 8パズル,15パズルの解析には置換とそのパリティ(奇置換,偶置換)の知識を使います。知らなくても雰囲気は分かりますが,きちんと理解するためには置換の知識が必須です。→置換の基礎(互換・偶置換・奇置換・符号の意味)
状態に対応するベクトル
状態に対応するベクトル
8パズルも15パズルも同じように扱えるので,8パズルで解説します。
まず,8パズルの状態に対応する9次元ベクトル(9個の数字の並び)を考えます。左上から右下に向かって,どの数字が入っているのか順番に書き並べます(パネルがない「空き」の場所には9を入れます)。
例えば,図1の状態に対応するベクトルは, です。図2の状態に対応するベクトルは, です。
初期状態に対応するベクトルを ,完成した状態に対応するベクトルを と書くことにします。
不可能な配置の判定法と例
不可能な配置の判定法と例
に対応する状態からはじめたとき,
8パズルが完成できる を にする置換のパリティ(偶奇)と「空き」の最短距離の偶奇が等しい。
例えば,上記の図1は「完成不可能な配置」です。実際,
- を にするには と を交換するだけでよい。互換一回で表せるので定理の左辺(置換のパリティ)は奇。
- 「空き」の位置はスタートとゴールで同じ位置なので最短距離は ,すなわち偶。
一方,上記の図2は「完成可能な配置」です。実際,
- を にするには を交換すればよい。互換二回で表せるので置換のパリティは偶。
- 「空き」の位置はスタートとゴールで横に1,縦に1ズレている。最短距離は ,すなわち偶。
また,15パズルでも同じ定理が成立します。より一般に パズル でも同じ定理が成立します。この定理を認めれば,冒頭の主張は直ちに導かれます。冒頭の主張では置換のパリティは奇で空きの最短距離は0だからです。
実際の判定法
実際の判定法
実際に与えられた配置が可能かどうかは,上記の定理を使って簡単に判定できます。
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空きの最短距離はすぐに分かります。数えて下さい。
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初期状態 と完成状態 の置換のパリティを求めるためには,実際に を にする置換を互換たちで表してその偶奇を見ればOKです。これは置換をサイクル分解してもできますし,以下のように1から順番にそろえていってもOKです。
のとき, を にする置換のパリティを求めよ。
を交換
を交換
を交換
を交換
よって互換 回で表せたので置換のパリティは偶。
不可能性の証明
不可能性の証明
定理の を証明します。
なお, については構成的に(偶奇が一致するときに8パズルを完成させるアルゴリズムを与える)証明できたつもりになっていますが,きちんと書くと煩雑なので省略します。
初期状態 の パズルが完成できるとする。このとき,完成までにパネルを移動させた回数 の偶奇を二通りの方法で考える(二枚同時にスライドさせたら二回とカウント)。
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1回のスライドで「空き」スペースは必ず1マス移動するので, の偶奇と「初期状態から終了状態の空きの最短距離」の偶奇は等しい。
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1回のスライドは互換に対応しているので, から への置換は 回の互換で表せることになる。よって, の偶奇と「 から への置換のパリティ」は等しい。
以上により定理の が証明できた。
今年のJJMO予選の最終問題は2×7パズルの問題でした。
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