偽物のコインと天秤の有名問題

天秤を使って偽物(重さの異なる)のコインを見つけ出すという有名問題を紹介します。

9枚のコイン

まずは有名な9枚の場合です。簡単なクイズです。

問題

9枚のコインがある。そのうち偽物が1枚だけある。偽物は本物のコインより軽い。このとき天秤を二回だけ使って偽物を見つけ出せ。

解答を見る前に少しだけ考えてみてください!

解答

一回目は,左の皿に3枚,右の皿に3枚のせる

  • 左が高くなった場合:左の3枚の中に偽物あり
  • 右が高くなった場合:右の3枚の中に偽物あり
  • つりあった場合:残った3枚の中に偽物あり

いずれにせよ偽物の候補を3つに絞れる。

二回目は偽物の候補3枚のうち左の皿に1枚,右の皿に1枚のせる

  • 左が高くなった場合:左に載せたのが偽物
  • 右が高くなった場合:右に載せたのが偽物
  • つりあった場合:残った1枚が偽物

一般化

さきほどの問題を一般化します:

問題

NN 枚のコインがある。そのうち偽物が1枚だけある。偽物は本物のコインより軽い。このとき天秤を kk 回だけ使って偽物を見つけ出せるような最大の NN を,kk を使って表せ。

  • 天秤が一回しか使えない場合,判別できる枚数の限界は明らかに3枚です。
  • さきほどの例より,N=9N=9 のとき二回で偽物が判別できます。
  • N=10N=10 だと二回で判別するのは難しそうです。

以上より,kk 回天秤を使って判別できる限界の枚数は 3k3^k だと予想できます。

解答

1. N=3kN=3^k のとき偽物を特定できる

これはさきほどの k=2k=2 の場合の方法を一般化すればよい。 3k3^k 枚あるときに,左右の皿に 3k13^{k-1} 枚ずつのせることで,偽物の候補を 3k13^{k-1} 枚に絞り込むことができる。この操作を繰り返すことで毎回偽物の候補を 13\dfrac{1}{3} ずつにすることができる。

2. N>3kN > 3^k のときどう頑張っても偽物を特定できない

天秤を一回使ったときに得られる出力(結果)は「左が高くなる」「右が高くなる」「つりあう」の三通り。よって,kk 回天秤を使うことで得られる出力は 3k3^k 通り。よって,3k+13^k+1 通り以上の場合を判別することはできない。

※上記の2の説明は,そんなの当たり前だと感じる人もいれば,ピンと来ない人もいるかと思います。ピンと来ない人は k=1,2k=1,\:2 の状況を考えてみると納得しやすいでしょう。

限界の証明

上記のような,限界値・最大値を求める問題では

  1. 限界ギリギリの値は達成できること

  2. 限界を少しでも超えたら達成できないこと

に分けて考えるとスッキリ説明できることが多いです。

数学オリンピックでは,1と2の両方とも難しく,片方証明すれば部分点がもらえそうな問題もあります。

もちろん,簡単な問題では二つに分けるとまどろっこしくなるので,一気に最大性を述べたほうがよい場合もあります。

偽物が重いか軽いか分からない場合

この場合は一気に問題が難しくなります。有名なのは13枚のコインの問題です:

問題

13枚のコインがある。そのうち偽物が1枚だけある。偽物は本物のコインと重さが違う。このとき天秤を三回だけ使って偽物を見つけ出せ。

解答は長くなるので省略します,考えてみてください!

ちなみに,重いか軽いか分からない場合も一般化できて,天秤が kk 回使えるときに判別できる枚数の限界は 3k2=3k12\left\lfloor\dfrac{3^k}{2}\right\rfloor=\dfrac{3^k-1}{2} 枚です。

9枚のコインの問題は友達に出したくなるクイズですね。

Tag:難しめの数学雑学・ネタまとめ (金貨ということもある)