球面上の三角形の面積と内角の和

球面上の三角形の面積

半径 RR の球面上にあり,内角の大きさが A,B,CA,\:B,\:C である三角形の面積は,

S=R2(A+B+Cπ)S=R^2(A+B+C-\pi)

球面上の三角形について解説します。曲面上で図形を扱うには新しい考え方が必要になります。

球面上の直線とは

「球面上の三角形」を扱うために,まずは球面上の「線分」を考えます。

平面上では,二点間を結ぶ最短の長さの曲線を線分と言いました。同様に,曲面上で二点間を結ぶ最短の長さの曲線を測地線と言います。

球面上に二点を選んだとき,その 二点を結ぶ最短の長さの曲線は大円(円の中心が球の中心と一致するようなもの)の短い方の弧(劣弧)であることが知られています。

球面の測地線が大円であることの厳密な証明は難しいです。糸をピンと張るとたしかに大円の劣弧になりそうですね。

球面上の三角形,角度とは

球面上で線分のようなものが定義できたので,三角形を考えることができます。

球面上の三角形

平面上で三角形とは(同一直線上にない)三点を選んでそれぞれを線分で結んだものでした。同様に球面上の三角形も,(同一大円上にない)三点を選んでそれぞれを大円の劣弧で結んだものとします。

次に角度についてです。大円どうしの交点の角度を その交点におけるそれぞれの接線のなす角度で定義します。

これで,球面上でも三角形の内角の大きさが定義できました。以上で準備は完了です。

三角形の面積公式の証明

二つの大円と面積

冒頭に述べた球面三角形の面積公式 S=R2(A+B+Cπ)S=R^2(A+B+C-\pi) を証明します。

まず二つの大円のなす角が AA である状況を考えます。二つの大円によって球面は4つに分割されます。角 AA が属する領域の面積 SAS_AAA に比例し,A=πA=\pi のとき半球の面積 =2πR2=2\pi R^2 となるので,SA=Aπ×2πR2=2AR2S_A=\dfrac{A}{\pi}\times 2\pi R^2=2AR^2 です。

球面三角形の面積の導出

また,図より SA+SB+SC2SS_A+S_B+S_C-2S の二倍が球面の面積なので(三枚葉の花びらっぽい図形二枚で球面全体を覆う感じ),

(SA+SB+SC2S)×2=4πR2(S_A+S_B+S_C-2S)\times 2=4\pi R^2

これを SS について解くと,

S=12(SA+SB+SC)πR2=R2(A+B+Cπ)S=\dfrac{1}{2}(S_A+S_B+S_C)-\pi R^2\\=R^2(A+B+C-\pi)

を得ます。

球面上の三角形の内角の和

S=R2(A+B+Cπ)S=R^2(A+B+C-\pi)

を証明できました。ここで,任意の三角形に対して面積 S>0S > 0 なので A+B+C>πA+B+C > \pi が成立します!

つまり,球面上の三角形の内角の和は π\pi より大きいことがわかります。

三角形の面積を考えることで内角の和が評価できるのはおもしろいです。

具体例

面積公式をもう少し味わってみましょう。

原点を中心とする半径 RR の球面上に三点 (R,0,0),(0,R,0),(0,0,R)(R,0,0),\:(0,R,0),\:(0,0,R) を取ります。球面上でこれら三点のなす三角形の内角は全て直角です。

また,面積は球の表面積の 18\dfrac{1}{8} 倍なので 12πR2\dfrac{1}{2}\pi R^2 です。

実際,12πR2=R2(π2+π2+π2π)\dfrac{1}{2}\pi R^2=R^2\left(\dfrac{\pi}{2}+\dfrac{\pi}{2}+\dfrac{\pi}{2}-\pi\right) となり三角形の面積公式が成立しています!

ちなみに,この定理を応用するとオイラーの多面体定理が証明できます!→球面上の多角形の面積と美しい応用

この辺の話に興味がある方はぜひとも微分幾何学を勉強してみてください。