ジュルゴンヌ点とナーゲル点の存在証明

ジュルゴンヌ点(Gergonne point)

ジュルゴンヌ点

三角形 ABCABC において内接円と各辺の接点を D,E,FD,E,F とおくとき,AD,BE,CFAD,BE,CF は一点で交わる。この点をジュルゴンヌ点という。

ジュルゴンヌ点とナーゲル点の知識が直接役立つことはまずありませんが,チェバの定理の逆を用いた証明は美しいので覚えておく価値があります。

ジュルゴンヌ点の存在証明

チェバの定理の逆と接線の長さが等しいことを使ったおもしろい証明です。→チェバの定理:例題と3通りの証明

証明

チェバの定理の逆より,AFFBBDDCCEEA=1\dfrac{AF}{FB}\dfrac{BD}{DC}\dfrac{CE}{EA}=1 を証明すればよい。

定点から一つの円に引いた二本の接線の長さは等しいので,

AF=AE,BF=BD,CD=CEAF=AE,\:BF=BD,\:CD=CE

となるので上式は確かに成立する。

ナーゲル点

内心,内接円に関して成立する性質は傍心,傍接円に関しても成立する!という定石に基づくと,ジュルゴンヌ点に対応する傍接円バージョンもありそうだと予想できます。

それがナーゲル点です。

ナーゲル点(Nagel point)

ナーゲル点

三角形 ABCABC において三つの傍接円と各辺の接点を D,E,FD,E,F とおくとき,AD,BE,CFAD,BE,CF は一点で交わる。この点をナーゲル点という。

ナーゲル点の存在証明

ナーゲル点の存在証明はジュルゴンヌ点の存在証明とほぼ同様にできますが,チェバの定理の逆だけではなくて,接線の長さを求める必要があります。

三角形の頂点から傍接円の接点までの距離は重要な公式です。知らない方は傍心の意味と性質・内心との比較を参照してください。

証明

チェバの定理の逆より,AFFBBDDCCEEA=1\dfrac{AF}{FB}\dfrac{BD}{DC}\dfrac{CE}{EA}=1 を証明すればよい。

傍接円までの接点の距離公式より,s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2} とおくと

AF=sb=CDBD=sc=AEBF=sa=CEAF=s-b=CD\\ BD=s-c=AE\\ BF=s-a=CE

となるので上式は確かに成立する。

教訓

  • 三角形の各頂点から対辺上にある点を結んだ三つの線分が一点で交わることの証明にはチェバの定理の逆がすこぶる使えます。例えば,等角共役点とその証明垂心の存在の3通りの証明など。
  • 三角形の各頂点から内接円(または傍接円)の接点までの距離は三角形の三辺の長さを使って綺麗に表せます。
  • 「内心,内接円で何か成立する→傍心,傍接円でも何か成立する」

傍心は内心よりも一見難しそうですが,図形的に扱うにせよ座標で扱うにせよ内心と同じ程度の難しさです。傍心にビビる必要はありません。

「ジュルゴンヌ点」はいかにも強そうな名前ですね。「ジェルゴンヌ点」と表記する場合もあるようです(むしろその方が多そう)。

Tag:三角形の五心に関する定理まとめ