完全数の一覧と性質

完全数とは「約数の総和が自分の2倍になる」ような正の整数のことです。

この記事では,完全数の意味や,完全数とメルセンヌ素数の関係について解説します。

完全数の例

  • 66 は完全数です。
    実際,66 の約数は 1,2,3,61,\:2,\:3,\:6 で,全て足すと 1+2+3+6=121+2+3+6=12 となり,66 の2倍になっています。

  • 496496 も完全数です。
    約数は 1,2,4,8,16,31,62,124,248,4961,\:2,\:4,\:8,\:16,\:31,\:62,\:124,\:248,\:496 で全て足すと 992992 となり,496496 の2倍になっています。

なお,約数の総和がもとの数の2倍より小さい数を不足数,2倍より大きい数を過剰数と言います。

素数は完全数ではない

全ての素数は完全数ではありません。

実際,素数 pp の約数は 11pp だけですが,

1+p=2p1+p=2p

となるような素数 pp は存在しません。

偶数の完全数

定理1

2N12^{N}-1 が素数であるような正の整数 NN に対して,n=2N1(2N1)n=2^{N-1}(2^{N}-1) は完全数である。

定理2

逆に,偶数の完全数は,2N12^{N}-1 が素数であるような正の整数 NN を用いて n=2N1(2N1)n=2^{N-1}(2^{N}-1) という形で表される。

証明はこの記事の最後にします(定理1は簡単,定理2は少し大変)。

2N12^{N}-1 という形の数をメルセンヌ数といい,素数のメルセンヌ数をメルセンヌ素数といいます。上記の定理により「メルセンヌ素数」と「偶数の完全数」が一対一に対応していることが分かります。

例えば N=2N=2 のとき,2N1=32^{N}-1=3 はメルセンヌ素数なので n=23=6n=2\cdot 3=6 が完全数となります。

ちなみに奇数の完全数は存在するかどうかすら分かっていません。

完全数一覧

1000桁以下の完全数を一覧にしてみました。全部で 1515 個あります。

上記の議論により,偶数の完全数は NN で表すことができます。桁数が大きくなると表記が大変なので大きい部分は NN のみ示します。また,1500桁以下の奇数の完全数は存在しないことが確認されているそうです。

NN,対応する完全数

2,62,6

3,283,28

5,4965,496

7,81287,8128

13,3355033613,33550336

17,858986905617,8589869056

19,13743869132819,137438691328

以下 NN のみ示す。

31,61,89,107,127,521,607,127931,\:61,\:89,\:107,\:127,\:521,\:607,\:1279

List of perfect numbersを参照しました。

偶数の完全数についての定理の証明

おまたせしました,整数問題として面白い部分です。

まずは簡単な定理1から証明します。

1:メルセンヌ素数→完全数の証明

2N12^{N}-1 が素数のとき,n=2N1(2N1)n=2^{N-1}(2^N-1) の約数の総和は,

S(n)=(1+2++2N1){1+(2N1)}S(n)=(1+2+\cdots +2^{N-1})\{1+(2^{N}-1)\}

である(※1)。一つ目のカッコは等比数列の公式(※2)から 2N12^{N}-1 である。

よって,S(n)=(2N1)2N=2nS(n)=(2^{N}-1)\cdot 2^N=2n となるので nn は完全数。

※1:約数の総和を求める二つの公式と証明

※2:等比数列の和の公式(例題・証明・応用)

定理2の証明も非常に面白いです。最初に証明したのはオイラーです。

2:完全数→メルセンヌ素数の証明

偶数の完全数 nn22(m1)(m-1) 回割り切れるとする(ただし mm22 以上の整数)。つまり,n=2m1An=2^{m-1}A\:\: (AA は奇数)と表す。約数の和は,

S(n)=(1+2++2m1)S(A)=(2m1)S(A)S(n)=(1+2+\cdots +2^{m-1})S(A)\\ =(2^{m}-1)S(A)

ここで,nn が完全数であるので,

2mA=2n=S(n)=(2m1)S(A)2^{m}A=2n=S(n)=(2^{m}-1)S(A)

これを S(A)S(A) について解くと,

S(A)=A+A2m1S(A)=A+\dfrac{A}{2^m-1}

となる。S(A),AS(A),\:A は整数なので A2m1\dfrac{A}{2^m-1} も整数。よって,

AAA2m1\dfrac{A}{2^m-1}AA の約数。また,m2m\geq 2 より A>A2m1A > \dfrac{A}{2^m-1}

S(A)S(A)AA の異なる約数2つの和で表されているので,AA は素数であり,A2m1=1\dfrac{A}{2^m-1}=1

以上より,偶数の完全数 nn は,2m12^{m}-1 が素数であるような正の整数 mm を用いて n=2m1(2m1)n=2^{m-1}(2^{m}-1) という形で表される。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT139では,完全数に関する問題と3通りの解答を紹介しています。

奇数の完全数を発見した方はご一報ください!