ニュートンの定理とその証明

ニュートンの定理

ニュートンの定理

中心が OO である円に外接する四角形 ABCDABCD において対角線 ACACBDBD の中点をそれぞれ M,NM,\:N とおくと,M,N,OM,\:N,\:O は同一直線上にある。この直線をニュートン線と呼ぶ。

初等幾何におけるニュートンの定理はいくつかあるようですが,今回は上記の定理について解説します。

以下ではニュートンの定理の2通りの証明を解説します。どちらもなかなか美しいです。

  1. 三角形の面積に注目する方法
  2. 複素数平面で計算する方法

ニュートンの定理の証明1(初等幾何+軌跡)

ニュートンの定理を証明するための準備として,三角形の面積に関する補題を証明しておきます。

三角形 ABCABC の面積を ABC|ABC| と表記します。

補題

ABP+CDP=BCP+DAP|ABP|+|CDP|=|BCP|+|DAP| を満たす四角形の内部の点 PP の軌跡は線分である。

証明

ニュートンの定理の証明

P(X,Y)P(X,Y) とおく。

まず ABP|ABP| について考える。 ABAB を底辺とみると,ABP|ABP|12\dfrac{1}{2} と「ABAB の長さ」と「高さ」の積である。そして,

  • 高さは,点と直線の距離公式より,aX+bY+ca2+b2\dfrac{|aX+bY+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} という形で表せる
  • ABAB の長さは X,YX,Y によらない

であるので,ABP|ABP|XX および YY の一次関数となる(PP が四角形内部のもとで考えているので絶対値が外せる)。つまり,ABP=αX+βY+γ|ABP|=\alpha X+\beta Y+\gamma と書ける 同様に,CDP,BCP,DAP|CDP|,\:|BCP|,\:|DAP| たちも XX および YY の一次関数。

つまり,条件式 ABP+CDP=BCP+DAP|ABP|+|CDP|=|BCP|+|DAP|XXYY の一次式 =0=0 という形になるので,この等式を満たす軌跡は線分(直線と四角形の内部の共通部分)である。

ちなみに,ACAC の中点 MMBDBD の中点 NN は条件を満たす(なぜなら,ABM=BCM|ABM|=|BCM| かつ CDM=DAM|CDM|=|DAM| なので MM は条件を満たす。NN も同様)ので軌跡は空集合ではありません。

この補題を用いればニュートンの定理の証明は簡単です。点 M,NM,\:N は軌跡上にあるので OO も軌跡上にあること,すなわち ABO+CDO=BCO+DAO|ABO|+|CDO|=|BCO|+|DAO| を言えば,M,N,OM,\:N,\:O が同一直線上にあることが言えます。

ニュートンの定理の証明

円に外接する四角形の性質より,AB+CD=BC+DAAB+CD=BC+DA 。また,高さは共通なので,ABO+CDO=BCO+DAO|ABO|+|CDO|=|BCO|+|DAO| が成立する。

ニュートンの定理の証明2(複素数平面)

複素数平面を使えば,ただひたすら計算するだけでニュートンの定理を証明できます。

複素数平面の計算に慣れるために,ぜひ自分でも手を動かしてみてください。細かい計算で不明な部分は複素数平面の基本的な公式集を参照して下さい。

証明

OO を原点とする複素数平面で考える。AB,BC,CD,DAAB,\:BC,\:CD,\:DA と内接円の接点をそれぞれ P(α),Q(β),R(γ),S(δ)P(\alpha),\:Q(\beta),\:R(\gamma),\:S(\delta) とおく。内接円の半径を 11 としても一般性を失わない。

まず,直線 ABAB の方程式を求めると,

αz+αz=2\overline{\alpha} z+\alpha\overline{z}=2

同様に,直線 DADA の方程式は,

δz+δz=2\overline{\delta} z+\delta\overline{z}=2

これらを連立して zz について解くことにより AA の座標は

2(δα)αδαδ=2αδα+δ\dfrac{2(\delta-\alpha)}{\overline{\alpha}\delta-\alpha\overline{\delta}}=\dfrac{2\alpha\delta}{\alpha+\delta}

となる。同様に B,C,DB,\:C,\:D も求まり,

MM の座標は m=αδα+δ+βγβ+γm=\dfrac{\alpha\delta}{\alpha+\delta}+\dfrac{\beta\gamma}{\beta+\gamma}

NN の座標は n=αβα+β+γδγ+δn=\dfrac{\alpha\beta}{\alpha+\beta}+\dfrac{\gamma\delta}{\gamma+\delta}

あとは,mn\dfrac{m}{n} が実数であることを示せばよい(n=0n=0 のときは NNOO が重なり自明なので n0n\neq 0 で考える)。

実際,αα=1\alpha\overline{\alpha}=1 などに注意して計算すると mn=(α+β)(γ+δ)(α+δ)(β+γ)=(α+β)(γ+δ)(α+δ)(β+γ)=mn\dfrac{m}{n}=\dfrac{(\alpha+\beta)(\gamma+\delta)}{(\alpha+\delta)(\beta+\gamma)}=\dfrac{(\overline{\alpha}+\overline{\beta})(\overline{\gamma}+\overline{\delta})}{(\overline{\alpha}+\overline{\delta})(\overline{\beta}+\overline{\gamma})}=\dfrac{\overline{m}}{\overline{n}}

となり,M,N,OM,\:N,\:O が同一直線上にあることが証明された。

複素数平面はやっぱり強いです。