内接円に関する数オリ頻出の図形

定理

bdcf

三角形 ABCABC の内接円と辺 BCBC の接点を DD とおく。DD から辺 BCBC と垂直な直線と内接円の交点を EE とおく。さらに AEAEBCBC の交点を FF とおくと,BD=CFBD=CF

この定理の2通りの証明を紹介します。

応用例として,国際数学オリンピックの過去問も解説します。

定理の証明その1

まずは愚直に計算する方法です。少し大変ですが,ほとんど機械的な計算で証明できます。

方針

三角形 ABCABC の情報で全ての長さを表していきます。BDBD傍心の意味と性質・内心との比較の公式から瞬時に求まります。あとは CFCF の長さを求めればよいのですが,直角三角形の1辺である DFDF の方が計算しやすそうなので頑張って DFDF を計算します。

証明

bdcf2

三角形の3辺の長さを BC=a,CA=b,AB=cBC=a,CA=b,AB=c とおく。

b=cb=c のときは二等辺三角形となり自明なので,対称性より c<bc <b の場合のみ証明すればよい。

内接円の性質より BD=12(ab+c)BD=\dfrac{1}{2}(a-b+c)

DF=xDF=x とおき,xx を求めにいく。

AA から BCBC に引いた垂線の足を HH とおくと,三角形 FEDFEDFAHFAH は相似なので

x×AH=ED×FHx\times AH=ED\times FH

これに,

  • ED=2r=4Sa+b+c=2acsinBa+b+cED=2r=\dfrac{4S}{a+b+c}=\dfrac{2ac\sin B}{a+b+c}
  • AH=csinBAH=c\sin B
  • FH=FBBH=x+12(ab+c)ccosBFH=FB-BH=x+\dfrac{1}{2}(a-b+c)-c\cos B

を代入すると, x(a+b+c)=2ax+a(ab+c)2accosBx(a+b+c)=2ax+a(a-b+c)-2ac\cos B

余弦定理を用いて cosB\cos B を消去する:

x(a+b+c)=a(bc)+(b+c)(bc)x(-a+b+c)=-a(b-c)+(b+c)(b-c)

右辺が因数分解できて x=bcx=b-c が分かる。

よって CF=ax12(ab+c)=12(ab+c)=BDCF=a-x-\dfrac{1}{2}(a-b+c)=\dfrac{1}{2}(a-b+c)=BD

定理の証明その2

相似を用いたおもしろい方法です!

方針

内接円と傍接円の共通外接線の交点が AA なので AA は2つの円の相似の中心です。(直感的に明らかですが,気になる人は2つの円の相似の中心を参考に座標を用いて証明してみてください。)

証明

傍接円と BCBC との接点を FF' とおくと,AA が2つの円の相似の中心で E,FE,F' が対応する点なので A,E,FA,E,F' は同一直線上にある。よって F=FF'=Fつまり FF は傍接円の接点。

よって内心と傍心の性質の性質2’より CF=12(ab+c)=BDCF=\dfrac{1}{2}(a-b+c)=BD

数オリの問題に挑戦

1992年国際数学オリンピックロシア大会の第4問です。

問題

CC の接線 ll 上に点 MM がある。以下の条件を満たす点 PP の存在範囲を求めよ。

ll 上に 22Q,RQ,R が存在して,QM=RMQM=RM かつ CC が三角形 PQRPQR の内接円」

方針

上記の定理を知っていればさきほどの図形が浮かんできます!

解答

bdcf3

D,ED,E はさきほどと同様。 FFMM に関して DD と対称な点とする。

答えは「PP が直線 FEFE 上で EE に関して FF と反対側にあるとき(A)」である。

・条件を満たすなら(A)が成立すること

PEPEll の交点を FF' とおく。さきほどの定理より QD=RFQD=RF'

条件を満たすとき,QM=RMQM=RM なので FM=DMF'M=DM であり,F=FF'=F

つまり PEPEll の交点は MM に関して DD と対称な点。

・(A)が成立するなら条件を満たすこと

さきほどの定理より QD=FRQD=FR よって QM=RMQM=RM となり PP は条件を満たす。

マニアックな形に見えますが結構よく出る構図です。

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