積分方程式~京大特色2026第4問

京都大学理学部特色入試 2026 第4問

a,ba,b を正の実数とし,a>1a > 1 とする。定義域を x0x \geqq 0 とする連続関数 f(x)f(x)g(x)g(x)h(x)h(x) が次の3つの等式を満たしているとする。 f(x)=aexp(h(x))g(x)=bexp(0x(f(y)1)dy)h(x)=0xg(y)dy.\begin{aligned} f(x) &= a \exp (-h(x))\\ g(x) &= b\exp \left( \int_0^x (f(y)-1) dy \right)\\ h(x) &= \int_0^x g(y) dy. \end{aligned} ただし,exp(x)=ex\exp (x) = e^x とする。このとき,g(x)g(x) の最大値を求めよ。

この記事では京大特色入試 2026 の第4問を解説します。

解説

ステップ1

まずは与えられた式を整理して見通しをよくします。

ステップ1

g(x)g(x) は連続関数であるため,h(x)h(x) は微分可能である。これより f(x)f(x) の微分可能性も従い,g(x)g(x) の微分可能性も従う。

まずは条件式を辺々 xx で微分する。

f(x)=ah(x)exp(h(x))=f(x)h(x)g(x)=ddx(0x(f(y)1)dy)×bexp(0x(f(y)1)dy)=(f(x)1)g(x)h(x)=g(x)\begin{aligned} f'(x) &= -ah'(x) \exp(-h(x))\\ &= -f(x) h'(x)\\ g'(x) &= \dfrac{d}{dx}\left( \int_0^x (f(y)-1) dy \right)\\ &\qquad \times b\exp \left( \int_0^x (f(y)-1) dy \right)\\ &= (f(x)-1) g(x)\\ h'(x) &= g(x) \end{aligned}

よって {f(x)=f(x)h(x)g(x)=f(x)g(x)g(x)h(x)=g(x)() \begin{cases} f'(x) = -f(x)h'(x)\\ g'(x) = f(x)g(x)-g(x)\\ h'(x) = g(x) \end{cases} \quad \cdots (\ast) を得る。

g(x)g(x) が最大値を取る場合,g(x)=0g'(x) = 0 のみであるため,このような xx の条件を求める。g(x)=(f(x)1)g(x)g'(x) = (f(x)-1) g(x) であるため,以下 f(x)=1f(x) =1 となる xx を求める。

()(\ast) の辺々を足すと f(x)+g(x)+h(x)=f(x)h(x)+f(x)g(x)g(x)+g(x)=f(x)g(x)+f(x)g(x)=0\begin{aligned} &f'(x)+g'(x)+h'(x) \\ &= -f(x)h(x)+f(x)g(x)-g(x)+g(x)\\ &= -f(x) g(x) + f(x) g(x)\\ &= 0 \end{aligned} であるため,f(x)+g(x)+h(x)f(x)+g(x)+h(x) は恒等関数である。

特に f(x)+g(x)+h(x)=f(0)+g(0)+h(0)=a+b f(x)+g(x)+h(x) = f(0)+g(0)+h(0) = a+b である。

ステップ2

次に f(x)=1f(x) = 1 の解が存在することを確認します。

ステップ2

また b>0b > 0 であることと,任意の実数 xx について ex>0e^x > 0 であることを合わせると g(x)>0g(x) > 0 を得る。

h(x)=g(x)>0h'(x) = g(x) > 0 より h(x)h(x) は実数全体で(狭義)単調増加であることが分かる。これと f(x)f(x) の定義から f(x)f(x) は単調減少であることが分かる。

f(0)=a>1f(0) = a > 1 であるため,ある x0x_0f(x0)1f(x_0) \leqq 1 であることを示せば,中間値の定理より f(x)=1f(x)=1 の解が存在する。また f(x)f(x) は単調減少関数であるため,解はただ1つ存在することが分かる。

任意の xxf(x)>1f(x) > 1 であることを仮定する。

このとき,g(x)=(f(x)1)g(x)>0g'(x) = (f(x)-1) g(x) > 0 であるため,g(x)g(x) は単調増加である。ゆえに g(x)g(0)=bg(x) \geqq g(0) = b である。このとき h(x)=0xg(y)dy0xb dy=bx h(x) = \int_0^x g(y) dy \geqq \int_0^x b\ dy = bx より limxh(x)=\displaystyle \lim_{x \to \infty} h(x) = \infty となる。

f(x)+g(x)+h(x)=a+bf(x) + g(x) + h(x) = a+b であることと,g(x)>0g(x) \geqq > 0 であることから limxf(x)=\displaystyle \lim_{x \to \infty} f(x) = -\infty となる。これは f(x)=aexp(h(x))>0 f(x) = a \exp (-h(x)) > 0 と反する。

以上より,ある x0x_0 が存在し f(x0)=1f(x_0) = 1 となることが分かる。また,このような x0x_0 は1つしか存在しない。

ステップ3

ラストスパート,計算です。

ステップ3

以上の議論から gg の増減表は x0x0g(x)+0g(x)b \begin{array}{c|cccc} x & 0 & \cdots & x_0 & \cdots\\ \hline g'(x) & & + & 0 & -\\ g(x) & b & \nearrow & & \searrow \end{array} である。ゆえに g(x)g(x) の最大値は g(x0)g(x_0) である。

f(x0)=1f(x_0) = 1 である一方, f(x)=aexp(h(x)) f(x) = a \exp (-h(x)) x=x0x = x_0 を代入して対数を取ると h(x0)=loga h(x_0) = \log a が従う。

f(x)+g(x)+h(x)=a+bf(x)+g(x)+h(x) =a+b であったため, h(x0)=a+bf(x0)h(x0)=aloga+b1\begin{aligned} h(x_0) &= a+b - f(x_0) - h(x_0)\\ &= a-\log a + b - 1 \end{aligned} である。

ポイント

積分系だと扱いにくいため,微分系に直すことはマストです。実際,微分の形だと増減も分かりやすいです。

微分系の辺々を足すことで f(x)+g(x)+h(x)f(x)+g(x)+h(x) が定数であることに気付けるかどうかが第2の関門となります。それ以降は g(x)=0g'(x) = 0 の解をうまく見つけて計算するだけです。

なかなか見ないタイプの問題でおもしろかったです。