線型代数の有名事実~部分空間と次元の関係について

定理

有限次元ベクトル空間 VV の部分空間 WW について,次が成り立つ。

  • dimVdimW\dim V \ge \dim W
  • dimV=dimW\dim V = \dim W であれば V=WV = W になる。

この記事では,ベクトル空間の次元に関する重要定理を紹介します。

準備補題

証明の準備のために補題を証明しましょう。

一次独立なベクトルが存在するとき,それらは基底の一部にできます。

補題

有限次元ベクトル空間 VVdimV=n\dim V = n を満たすものとする。m<nm < n とし,v1,v2,,vmv_1, v_2, \cdots , v_mVV の一次独立な元であるとする。

このとき,{v1,v2,,vn}\{ v_1, v_2, \cdots , v_n \} が基底となるように vm+1,,vnVv_{m+1} , \cdots , v_n \in V を取ることができる。

証明

Um=v1,v2,,vmU_m = \langle v_1 , v_2 , \cdots , v_m \rangle とおく。

m<nm < n より UmVU_m \subsetneq V である。よって,vm+1V\Umv_{m+1} \in V \backslash U_m を取ることができる。

このとき,v1,v2,,vm,vm+1v_1, v_2, \cdots , v_m , v_{m+1} は一次独立であるため, Um+1=v1,v2,,vm,vm+1 U_{m+1} = \langle v_1 , v_2 , \cdots , v_m , v_{m+1} \rangle とすると,UmUm+1U_m \subsetneq U_{m+1}dimUm+1=m+1\dim U_{m+1} = m+1 である。

帰納的に繰り返すことで VV の一次独立な元 v1,v2,,vnv_1 , v_2 , \cdots , v_n を得る。dimV=n\dim V = n であるため,これらは基底を成す。

こうして題意が示された。

定理の証明

前半の主張

証明のポイントは基底を取ることにあります。特に有限次元であるため,有限個の元を基底として取れることに注意しましょう。

証明

WW の基底 S={w1,w2,,wn}S = \{ w_1, w_2 , \cdots , w_n \} を取る。このとき,基底の取り方によらず n=dimWn = \dim W で一定となる。

w1,w2,,wnw_1, w_2 , \cdots , w_nVV の元としても一次独立である。

よって,w1,w2,,wnw_1, w_2, \cdots , w_n を含むように VV の基底 TT を取ることができる。

このとき #S#T\# S \le \# T である。次元の定義より dimWdimV\dim W \le \dim V が従う。

後半の主張

証明

dimV=dimW\dim V = \dim W より,前半の証明での SSTT は一致する。

つまり,S={w1,w2,,wn}S = \{ w_1 , w_2 , \cdots , w_n \}VV の基底となる。よって V=WV = W である。

しばしば登場する重要定理ですから覚えておきましょう。