基底の変換行列~定義と具体例

定義

ベクトル空間 VV の2つの基底 {v1,,vn}\{ v_1 , \dots , v_n \}{v1,,vn}\{ {v_1}', \dots , {v_n}' \} について

(v1vn)=(v1vn)P \begin{pmatrix} {v_1}' & \cdots & {v_n}' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v_1 & \cdots & v_n \end{pmatrix} P

を満たす n×nn\times n 正方行列 PP基底の変換行列という。ただし,

  • (v1vn)\begin{pmatrix} {v_1}' & \cdots & {v_n}' \end{pmatrix} とは,nn 本の縦ベクトル v1,...,vn{v_1}',...,{v_n}' を横に並べた n×nn\times n 行列
  • (v1vn)\begin{pmatrix} {v_1} & \cdots & {v_n} \end{pmatrix} とは,nn 本の縦ベクトル v1,...,vn{v_1},...,{v_n} を横に並べた n×nn\times n 行列

この記事では,基底の変換行列について,例を使いながら説明します。

基底の変換行列は線型代数においてとても大事な概念です。ぜひ理解しましょう。

標準基底からの変換

V=R3V = \mathbb{R}^3 で考えてみましょう。

標準的な基底 e1=(100)e_1 = \begin{pmatrix} 1\\0\\0 \end{pmatrix}e2=(010)e_2 = \begin{pmatrix} 0\\1\\0 \end{pmatrix}e3=(001)e_3 = \begin{pmatrix} 0\\0\\1 \end{pmatrix} から基底 {v1,v2,v3}\{v_1,v_2,v_3\} への基底の変換行列を求めましょう。

基底の変換行列の定義式を書いてみると,

(v1v2v3)=(e1e2e3)P \begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} e_1 & e_2 & e_3 \end{pmatrix} P です。ここで,(e1e2e3)\begin{pmatrix} e_1 & e_2 & e_3 \end{pmatrix} は単位行列と一致するので,結局 P=(v1v2v3)P=\begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} となります。このように,標準的な基底から,基底 {v1,v2,v3}\{v_1 , v_2 , v_3\} への基底の変換行列は,基底を並べた (v1v2v3) \begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} となります。3次元の例で確認しましたが,一般の nn 次元でも同様です。

多項式から成るベクトル空間

VV を3次以下の xx 変数の多項式から成るベクトル空間とします。

基底 {1,x,x2,x3}\{ 1,x,x^2,x^3 \} から基底 {1,1+x,x+x2,x2+x3}\{ 1,1+x,x+x^2,x^2+x^3 \} への変換行列は (1100011000110001) \begin{pmatrix} 1&1&0&0\\ 0&1&1&0\\ 0&0&1&1\\ 0&0&0&1 \end{pmatrix} です。

逆変換

定理

基底 {v1,,vn}\{ v_1 , \cdots , v_n \} から基底 {v1,,vn}\{ {v_1}' , \cdots , {v_n}' \} への変換行列を PP とする。

このとき,基底 {v1,,vn}\{ {v_1}' , \cdots , {v_n}' \} から基底 {v1,,vn}\{ v_1 , \cdots , v_n \} への変換行列は P1P^{-1} となる。

証明

後で証明するように,PP は逆行列を持つので, (v1vn)=(v1vn)P \begin{pmatrix} {v_1}' & \cdots & {v_n}' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v_1 & \cdots & v_n \end{pmatrix} P の両辺に右から P1P^{-1} をかければよい。

以下では,PP が実際に逆行列を持つことを証明する。

PP が逆行列を持たないと仮定すると PP のランクは n1n-1 以下になる。→行列のランク(rank)の8通りの同値な定義・性質

すると (v1vn)\begin{pmatrix} {v_1}' & \cdots & {v_n}' \end{pmatrix} のランクも n1n-1 以下になる。これは {v1,v2,,vn}\{ v_1' , v_2' , \dots , v_n' \} が基底であることと矛盾する。

よって PP は逆行列を持つ。

対角化との関連

対角化とは,「標準基底」から「固有ベクトルたちによる基底」への変換である。

A=(1432)A=\begin{pmatrix} 1&4\\3&2 \end{pmatrix} とおく。

線型写像 f:R2R2f : \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2f(x)=Axf(x) = Ax と定める。

AA を対角化する。

固有方程式は 1t432t=t23t10 \begin{vmatrix} 1-t&4\\3&2-t \end{vmatrix} = t^2 - 3t -10 より固有値は 5,25,-2 である。

それぞれの固有ベクトルは v1=(11)v2=(43) v_1 = \begin{pmatrix} 1\\1 \end{pmatrix}\\ v_2 = \begin{pmatrix} 4\\-3 \end{pmatrix} となる。

v1,v2v_1, v_2R2\mathbb{R}^2 の基底である。

f(v1)=5v1f(v2)=2v2\begin{aligned} f(v_1) &= 5 v_1\\ f(v_2) &= -2 v_2 \end{aligned} より,{v1,v2}\{ v_1,v_2 \} から {Av1,Av2}\{ Av_1, Av_2 \} への基底の変換行列は (5002)\begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} である。

行列の形で表すと (v1v2)(5002)=A(v1v2) \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} となる。

ここで P=(v1v2)P = \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} とすると P1AP=(5002) P^{-1} A P = \begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} と対角化の式が得られる。

対角化の例は覚えておきましょう。ジョルダン標準形というものを考えるときに再登場します。