基底の変換行列~定義と具体例
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ベクトル空間 の2つの基底 , について
を満たす 正方行列 を基底の変換行列という。ただし,
- とは, 本の縦ベクトル を横に並べた 行列
- とは, 本の縦ベクトル を横に並べた 行列
この記事では,基底の変換行列について,例を使いながら説明します。
基底の変換行列は線型代数においてとても大事な概念です。ぜひ理解しましょう。
例
例
標準基底からの変換
で考えてみましょう。
標準的な基底 ,, から基底 への基底の変換行列を求めましょう。
基底の変換行列の定義式を書いてみると,
です。ここで, は単位行列と一致するので,結局 となります。このように,標準的な基底から,基底 への基底の変換行列は,基底を並べた となります。3次元の例で確認しましたが,一般の 次元でも同様です。
多項式から成るベクトル空間
を3次以下の 変数の多項式から成るベクトル空間とします。
基底 から基底 への変換行列は です。
逆変換
逆変換
基底 から基底 への変換行列を とする。
このとき,基底 から基底 への変換行列は となる。
後で証明するように, は逆行列を持つので, の両辺に右から をかければよい。
以下では, が実際に逆行列を持つことを証明する。
が逆行列を持たないと仮定すると のランクは 以下になる。→行列のランク(rank)の8通りの同値な定義・性質
すると のランクも 以下になる。これは が基底であることと矛盾する。
よって は逆行列を持つ。
対角化との関連
対角化との関連
対角化とは,「標準基底」から「固有ベクトルたちによる基底」への変換である。
とおく。
線型写像 を と定める。
を対角化する。
固有方程式は より固有値は である。
それぞれの固有ベクトルは となる。
は の基底である。
より, から への基底の変換行列は である。
行列の形で表すと となる。
ここで とすると と対角化の式が得られる。
対角化の例は覚えておきましょう。ジョルダン標準形というものを考えるときに再登場します。