行列倍する写像(一次変換)
行列 A を
A=⎝⎛a11a21⋮am1a12a22⋮am2⋯⋯⋱⋯a1na2n⋮amn⎠⎞
とおきます。
f:Rn→Rm を v∈Rn に対して
f(v)=Av
と定義します。(ただの行列倍写像)
この写像の {e1(n),⋯,en(n)} と {e1(m),⋯,em(m)} による表現行列を求めましょう。
※ ただし ei(j) は i 番目だけが 1 でその他が 0 の j 次元ベクトルとします。
計算
例えば
f(e1(n))=A⎝⎛10⋮0⎠⎞=⎝⎛a11a21⋮am1⎠⎞=a11⎝⎛10⋮0⎠⎞+⋯+am1⎝⎛0⋮01⎠⎞=a11e1(m)+⋯+am1em(m)
となる。同じように計算すると
⎩⎨⎧f(e1(n))=a11e1(m)+⋯+am1em(m)f(e2(n))=a12e1(m)+⋯+am2em(m)⋮f(en(n))=a1ne1(m)+⋯+amnem(m)
である。
よって表現行列は
A=⎝⎛a11a21⋮am1a12a22⋮am2⋯⋯⋱⋯a1na2n⋮amn⎠⎞
であり,元の行列 A と一致する。
多項式から成るベクトル空間
V を2次以下の X の多項式からなるベクトル空間とします。
f:V→V を ϕ↦dXdϕ と定義します。
この線型写像の表現行列をいくつかのパターンで計算してみましょう。
パターン1
基底 {1,X,X2} から {1,X,X2} の場合
f(1)f(X)f(X2)===012X=0⋅1+0⋅X+0⋅X2=1⋅1+0⋅X+0⋅X2=0⋅1+2⋅X+0⋅X2
より表現行列は
⎝⎛000100020⎠⎞
となります。
パターン2
基底 {1,1+X,1+X+X2} から {1,X,X2} の場合
f(1)f(1+X)f(1+X+X2)===011+2X=0⋅1+0⋅X+0⋅X2=1⋅1+0⋅X+0⋅X2=1⋅1+2⋅X+0⋅X2
より表現行列は
⎝⎛000100120⎠⎞
となります。
例題
ここまでの例を踏まえて問題を解いてみましょう。
例題
V を3次以下の実数係数 x 変数多項式からなるベクトル空間とする。
ϕ:V→Vを
ϕ(f)=f′(x)+x3f(0)
と定める。
{1,x,x2,x3} から {1,x,x2,x3} による ϕ の表現行列を求めよ。
解答
ϕ(1)ϕ(x)ϕ(x2)ϕ(x3)=0+x3=x3=1+0=1=2x+0=2x=3x2+0=3x2
より表現行列は
⎝⎛0001100002000030⎠⎞
※ 余談ですが,対角化をうまく用いると表現行列が対角行列になる基底を求めることができます。