写像・単射・全射
写像の意味と,それにまつわる概念である全射・単射について紹介します。
写像のことを学習する際は,集合の記号について押さえておく必要があります。 集合の記号については,集合の記号の意味まとめ もぜひご覧ください。
写像
単射と全射,全単射
写像
写像は,中学数学で習う関数と基本的には同じ意味です。まずは,写像をきちんと定義しましょう。
集合 がある。任意の に対して, の要素を1つ返すような対応 を から への 写像 という。またこのとき と書くことがある。
- に対する出力(返り値,結果,対応先)を と書きます。
- を始域(定義域)と言います。入力として許される範囲です。
- を終域と言います。
を整数全体の集合とする。 に対して と定めると, は写像になる。
像(値域)と逆像の定義
次に,像(値域)と逆像についての定義を説明します。
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に対して, の像 を以下で定義する:
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に対して, の逆像 を以下で定義する:
を と定義すると, は2の倍数全体の集合になる。
集合 を考えます。, という写像があるとき, の合成 が にて定義されます。つまり, は,任意の に対して を返す写像です。
単射と全射,全単射
単射・全射(上からの写像)の定義
写像 について考える。
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とする。 であるとき, は 単射 であるという。
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任意の に対して,ある があって となるとき, は 全射 であるという。
図による単射・全射のイメージは下図のようになります。
単射と全射のイメージは 関数方程式の解き方のコツ〜全射と単射〜 に詳しく書いてあります。
全射では,始域の像が終域の部分集合になります。このことから,全射のことを「上への写像」と呼ぶこともあります。
全単射(上への写像)の定義
単射・全射に引き続き,全単射の定義も重要です。
- 写像 が単射かつ全射であるとき, を 全単射 であるという。このとき, と は 1対1に対応する という。
図による全単射のイメージは下図のようになります。
が全単射なら, の元 を1つ取ったら により がただ1つ定まり, の元 を取ったら, なる の元 がただ1つ定まります。まさに1対1です。
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を とすると,これは単射である。
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を とおくと,これは全射である。なお実数 に対して は を越えない最小の整数を意味する。
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を とすると,これは全単射である。
恒等写像と逆写像の定義
最後に,恒等写像と逆写像についてです。
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写像 が,任意の に対して を満たすとき, を 恒等写像 という。このとき と書くことがある。
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写像 に対して,写像 で なるものが存在するとき, を の 逆写像 という。このとき と書く。
ちなみに,写像 が逆写像を持つことと が全単射であることは同値です。
写像は数学をする上で避けては通れません。様々な例と共に身につけましょう。