写像・単射・全射

更新日時 2022/04/30

写像の意味と,それにまつわる概念である全射・単射について紹介します。

写像のことを学習する際は,集合の記号について押さえておく必要があります。 集合の記号については,集合の記号の意味まとめ もぜひご覧ください。

目次
  • 写像

  • 単射と全射,全単射

写像

写像は,中学数学で習う関数と基本的には同じ意味です。まずは,写像をきちんと定義しましょう。

写像の定義

集合 A,BA,B がある。任意の aAa \in A に対して,BB の要素を1つ返すような対応 ffAA から BB への 写像 という。またこのとき f:AB f : A \rightarrow B と書くことがある。

写像

  • aAa\in A に対する出力(返り値,結果,対応先)を f(a)f(a) と書きます。
  • AA を始域(定義域)と言います。入力として許される範囲です。
  • BB を終域と言います。

Z\mathbb{Z} を整数全体の集合とする。nZn \in \mathbb{Z} に対して f(n)=2nf(n) = 2n と定めると,ff は写像になる。

像(値域)と逆像の定義

次に,像(値域)逆像についての定義を説明します。

像・逆像の定義
  • XAX\subset A に対して,XX f(X)f(X) を以下で定義する:
    f(X):={f(x)BxX}f(X) := \{ f(x) \in B \mid x \in X\}

  • YBY\subset B に対して,YY逆像 f1(Y)f^{-1}(Y) を以下で定義する:
    f1(Y):={xAf(x)Y}f^{-1} (Y):= \{ x \in A \mid f(x) \in Y\}

f:ZZf : \mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}f(n)=2nf(n) = 2n と定義すると,f(Z)f(\mathbb{Z}) は2の倍数全体の集合になる。

集合 A,B,CA,B,C を考えます。f:ABf:A\rightarrow Bg:BCg : B \rightarrow C という写像があるとき,f,gf,g の合成 gfg \circ fgf(a)=g(f(a)) g \circ f (a) = g (f(a)) にて定義されます。つまり,gfg\circ f は,任意の aAa\in A に対して g(f(a))Cg(f(a))\in C を返す写像です。

単射と全射,全単射

単射・全射(上からの写像)の定義

定義(単射・単射)

写像 f:ABf:A \rightarrow B について考える。

  • x,yAx,y \in A とする。f(x)=f(y)x=yf(x) = f(y) \Rightarrow x=y であるとき,ff単射 であるという。

  • 任意の yBy \in B に対して,ある xAx \in A があって f(x)=yf(x) = y となるとき,ff全射 であるという。

図による単射・全射のイメージは下図のようになります。 単射と全射

単射と全射のイメージは 関数方程式の解き方のコツ〜全射と単射〜 に詳しく書いてあります。

全射では,始域の像が終域の部分集合になります。このことから,全射のことを「上への写像」と呼ぶこともあります。

全単射(上への写像)の定義

単射・全射に引き続き,全単射の定義も重要です。

定義(全単射)
  • 写像 ff が単射かつ全射であるとき,ff全単射 であるという。このとき,AABB1対1に対応する という。

図による全単射のイメージは下図のようになります。

全単射

ff が全単射なら,AA の元 aa を1つ取ったら f(a)f(a) により BB がただ1つ定まり,BB の元 bb を取ったら,b=f(a)b=f(a) なる AA の元 aa がただ1つ定まります。まさに1対1です。

  • f:ZZf : \mathbb{Z} \rightarrow \mathbb{Z}f(n)=2nf(n) = 2n とすると,これは単射である。

  • f:RZf : \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{Z}f(r)=rf(r) = \lfloor r \rfloor とおくと,これは全射である。なお実数 rr に対して r\lfloor r \rfloorrr を越えない最小の整数を意味する。

  • f:RRf : \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}f(x)=2xf(x) = 2x とすると,これは全単射である。

恒等写像と逆写像の定義

最後に,恒等写像と逆写像についてです。

定義(恒等写像・逆写像)
  1. 写像 f:AAf: A \rightarrow A が,任意の aAa \in A に対して f(a)=af(a) = a を満たすとき,ff恒等写像 という。このとき f=idAf = \mathbb{id}_A と書くことがある。

  2. 写像 f:ABf:A\rightarrow B に対して,写像 g:BAg :B \rightarrow Agf=idA,fg=idBg \circ f = \mathbb{id}_A , f \circ g = \mathbb{id}_B なるものが存在するとき,ggff逆写像 という。このとき g=f1g = f^{-1} と書く。

ちなみに,写像 ff が逆写像を持つことと ff が全単射であることは同値です。

写像は数学をする上で避けては通れません。様々な例と共に身につけましょう。