商ベクトル空間
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この記事では,商ベクトル空間について紹介します。
をベクトル空間, を の部分ベクトル空間とする。
上の二項関係 を で定義すると, は同値関係を成す。 をこの同値関係で割った商集合はベクトル空間の構造を持つ。
これを商ベクトル空間といい, と書く。
実際にベクトル空間であること
実際にベクトル空間であること
商ベクトル空間が,本当にベクトル空間であることを証明します。
商ベクトル空間 について
- ()
- (,)
によって和とスカラー倍を定義すると,ベクトル空間の構造が入る。
※ 上では実ベクトル空間で考えているが,一般の体上のベクトル空間でも同じようにできる。
演算が well-defined であること,つまり代表元の取り方に寄らずに和が定まることを確認する。
を と で同値な元, を と で同値な元とする。
より である。
よって である。
スカラー倍も同様にできる。
また,ベクトル空間の公理を満たすことも確認できる。
well-defined とは?
の元はある によって と表されます。しかし となる を取れば です。
このように の元を と表す方法は複数通りあります。どの表し方でも和・スカラー倍がOKであることを「well-defined」と呼んでいます。
例
例
, とすると, である。
一般に の場合において となる。
と定める。
となる。
次元定理
次元定理
は有限次元ベクトル空間, は の部分ベクトル空間とする。このとき
, とする。( である。)
の基底を とおく。特に は の基底となるように取る。
このとき が の基底になることを示す。
- 線型独立であること
実数 は を満たすとする。
このとき より である。
今 の基底は であるため である。 は線型独立であるため であるため は線型独立である。
- を貼ること
の元を任意に取る。これが により と表されたとする。
と表されるとする。
であることに注意すると となるため, を貼ることが示された。
以上より の基底として を取ることができる。ゆえに である。
直和との相性もよいです。これについてはまた今度……。