対称群と交代群の基本的な性質
次の置換全体の集合は,置換の積に関して群を成す。これを対称群(置換群)といって,( は のドイツ文字)と書く
この記事では代数学の基本である対称群(置換群)について解説します。
置換については 置換の基礎(互換・偶置換・奇置換・符号の意味) を参照してください。
置換
置換
置換の合成・巡回置換については,置換の基礎(互換・偶置換・奇置換・符号の意味) を参照してください。
ここでは記法についての軽い復習にとどめます。
記法
個の元を入れ替える操作を 次の置換といいます。
操作前の配列を上に,操作後の配列を下に記入することが多いです。例えば, を に移す置換は と書きます。
の元 について, で の移り先を表します。例えば, の場合,, となります。
この記法において,上の行を と数字順に並べる必要はありません。例えば,先ほどの を と書いてもよいです。
互換
置換の元で,2つの要素だけを入れ替えるものを互換といいます。 と の入れ替える互換は と表します。
例えば は互換になります。これは と書きます。
巡回置換
置換のなかでも巡回的なもの,つまり と表されるものを巡回置換といいます。
このとき簡単のために と書きます。
この記法を用いると と書くことができます。
符号
符号
互換の性質
置換 は互換の積で表される。
を互換の積で分解しましょう。
まず と が入れ替わっているため, が積に現れます。
残りの部分は となります。これは つまり, と分解されます。
よって となります。
符号
互換の積で表すことで符号という概念を定義できます。
が互換 個で表されるとき, と定義する。
となる置換を偶置換, となる置換を奇置換という。
符号は群準同型を与えます。
は準同型 を与える。
交代群
交代群
定義
次対象群の元で,偶置換全体からなる部分群を交代群といい, と書く。
を計算しましょう。
の元は
- 単位元:
- 互換:
- 長さ3の巡回置換:
長さ3の巡回置換は各々 と表されるため,偶置換です。
よって, となります。
は と準同型を定めることで, と同型になります。
準同型定理
は, で (単位元)に移ります。つまり となります。
また, は群として と同型です。
これより 準同型定理 を用いると次の同型が得られます。
位数
位数
それぞれの位数を計算しましょう。
対称群の位数
次の置換は から の並び替えと対応しているため, である。
交代群の位数
を と定める。
このとき,奇置換は偶置換に,偶置換は奇置換に移る。また,これは全単射である。
-
単射 と仮定する。辺々に左から を掛けることで を得る。
-
全射
を任意に取る。 より全射である。
よって,偶置換と奇置換は同数あるため,元の個数は の半分である。
準同型定理 より を得る。
よって である。
対称群は基本的な群で,様々な良い性質を持ちます。