行列のカーネル(核)の性質と求め方
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行列 に対して, を満たすベクトル の集合を のカーネル(または核)と言い, と書くことが多い。
線形代数における重要な概念「カーネル」について解説します。
カーネルとは
カーネルとは
この記事では, は 行列, は 次元の縦ベクトルとします。また, は全ての要素が である 次元縦ベクトルです。
線形代数におけるカーネルとは, をかけると になるベクトルの集合です。図のように理解すると,確かに「核」っぽいです。
カーネルの性質
カーネルの性質
カーネルは線形空間をなす
つまり, なら,その線形結合 もカーネルの要素であるというわけです。これは, なら であることから分かります。
(次元定理)
次元定理の意味,具体例,証明で詳しく解説しています。カーネルの大きさとイメージの大きさ()の間に成り立つ関係です。
( が正方行列のとき) が正則 の要素は のみ
は簡単です。 が正則なら逆行列 が存在するので, なら(両辺に左から をかけて) となります。
は次元定理を認めればすぐです。カーネルの次元が のとき, であり, が正則であることが分かります。
さらに詳しく→行列が正則であることの意味と5つの条件
カーネルの求め方
カーネルの求め方
具体例で説明します。カーネルを求めるには,連立方程式 を解けばよいです。これは頑張れば高校生にもできますが,ここでは行列の基本変形を用いて説明します。(前提知識:行列の基本変形の意味と応用(rank・行列式の計算))
のカーネルを計算せよ。また,基底を一組求めよ。
を行基本変形していくと,
となる。つまり, が のカーネルの要素となる必要十分条件は, かつ
ここで, と を一つ決めればこの条件を満たす がただ一つ決まる。つまり,カーネルの要素は
(ただし は任意の実数)とかける。さらに と の部分を分けると,
となる。つまり, のカーネルの次元は であり,基底(の一例)は
と
ちなみに WolframlAlpha でカーネルの計算もできます(今回の例だと ker{{1,1,1,2},{1,-1,-1,1},{1,3,3,3},{3,1,1,5}}と入力)。